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認知症を巡るほとんどは『人災』 レビー小体型認知症 樋口直美さん ルポ 希望の人びと ここまできた認知症の当事者発信 えにしの会 [レビー小体型認知症]

「医師は、精神科に体験入院して」 当事者が提案
 「認知症を巡るほとんどは『人災』」/本人著作が受賞

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 認知症の当事者の発言はいろいろな場面で注目されてきた。15年の日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞を2人の認知症の本人が受賞した。6、7章で書いた佐藤雅彦さんと、もう1人が樋口直美さんだ(62年生まれ)。
 30代から幻視を見た樋口さんは、13年、50歳でレビー小体型認知症と診断されるまで、41歳でうつ病と誤診されて重い薬物治療の副作用に約6年間苦しんだ、という。その体験と復活を『私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活』に綴った。
 樋口さんは医師から「レビー小体型認知症」と告げられ、「進行を遅らせるためにできることは?」と尋ねると「ないんですよ」と言われた。本には「急激に進行し余命8年」。一時は真剣に自殺も考えた。その後、信頼できる医師や同世代の仲間と出会い、適切な治療と努力、数々の出会いのたまもので、進行を食い止められている。だが嗅覚や時間の感覚をほぼ失い、自律神経障害などのつらさも抱えている(発言は樋口さんの公式サイトやディペックス・ジャパンのサイトなどでも見られる)。
 「認知症を巡る問題のほとんどは、人災」だと語る。病気そのものの症状ではなく「人災」。
 …(中略)…
樋口直美さん-えにしの会.jpg
 東京のプレスセンターで開かれた受賞記念のシンポジウムでは、自分でつくったスライドを映し出した。思わず見入った。

最大の問題は医療
・認知症権威による「認知症」の説明が偏見をつくってきた
医師が書く医療情報で、診断された本人と家族が絶望
誤診の多さ 知識のなさ 診断を変えない 減薬しない
診断後の精神的・社会的サポートのなさ
・薬の副作用による悪化(薬剤性せん妄)
・精神科病院への入院は、誰のために必要なのか?

 どれも厳しい。樋口さんの身も心もえぐられるような体験から生まれた言葉だ。医療への願いであり、私たちへの問いかけでもある。なかでも、「入院は、誰のために必要なのか?」の問いは、まったく同感だ。そして、「医療情報で、診断された本人と家族が絶望」は、情報を伝える身として胸に突き刺さる。
 【生井久美子:ルポ・希望の人びと. 朝日新聞出版, 東京, 2017, pp223-226】

私の感想
 このスライドに書かれた文章を読んで、「そうじゃない」と反論したいと考える医師も多いかも知れませんね。
 私なりにこの部分について思いを述べてみたいと思います。

認知症権威による「認知症」の説明が偏見をつくってきた

 病気に関して調べる際には、何度も言ってきましたようにメルクマニュアルがとっても有益です。
 http://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム
 ではそのメルクマニュアルには「アルツハイマー病の進行」についてどう記述されているのでしょうか。
 http://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/09-脳、脊髄、神経の病気/せん妄と認知症/認知症
 アルツハイマー病の予後.JPG
 =「アルツハイマー病の症状は、他の認知症の症状と同様です( 認知症 : 症状を参照)。具体的には、記憶の喪失、人格の変化、言語の使用や日常的な作業の障害、見当識障害、破壊的な行動などが挙げられます。症状は徐々に進行するため、多くの患者は、しばらくの間、発症前に楽しんでいたことの大半を変わらず楽しめます。
 …(中略)…
 最終的には、歩行や身の周りのことも一人ではできなくなります。失禁するようになったり、飲み込む、食べる、しゃべるなどの行為ができなくなったりします。こうした変化により、低栄養、肺炎および床ずれのリスクが高くなります。記憶は完全に失われます。最後には、(多くの場合、感染症により)昏睡と死に至ります。
 進行の予測は不可能です。診断後の平均的な生存期間は7年間ですが、アルツハイマー病があり、歩けなくなくなると、ほとんどの場合は6カ月以内に死に至ります。しかし、生存期間には大きな個人差があります。」

 「歩けなくなくなると、ほとんどの場合は6カ月以内に死に至ります」と記載してありますが、経腸栄養を実施すれば私が紹介しているアルツハイマー病の事例(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/587799344723082)のようにもうすぐ7年を迎えるという事例もありますからね。

医師が書く医療情報で、診断された本人と家族が絶望

 これは、主としてレビー小体型認知症の進行に関する指摘なんでしょうね。
 先程のメルクマニュアルには、レビー小体型認知症の予後についてどう記載されているのか見てみましょう。
 http://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/09-脳、脊髄、神経の病気/せん妄と認知症/認知症#v737838_ja
 レビー小体型認知症の予後.JPG
 =「症状が現れてからの平均的な生存期間は約6~12年間です。
 …(中略)…
 治療では、すべての認知症の場合と同様に、安全と支援を提供するための一般的な対策が講じられます(認知症 : 治療を参照)。レビー小体型認知症に対する具体的な治療法はありませんが、アルツハイマー病の治療薬(特にリバスチグミン)が有用な場合があります。パーキンソン病の治療薬は、パーキンソン病の症状を軽減しますが、錯乱、幻覚、妄想などを悪化させることがあります。抗精神病薬はできるだけ使用しません。」

 進行しない事例があることには触れられておりませんね。
 アリセプトのDLBに対する保険適用は日本以外ではほとんどない状況ですので、「アルツハイマー病の治療薬(特にリバスチグミン)が有用な場合があります。」という記載になっておりますね。

 樋口直美さんが伝えて欲しいと指摘する数字は、私が「『早期発見 → 告知が早期絶望とならないように!』 Ver.2(2017.2.10)」(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/718869288282753)で紹介している以下の数字でしょうね。

 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24212390
 278例のaMCIのうち認知症(AD&DLB)に進展したのは、63.0%(57.2%+5.8%)となり、37%は認知症には至らないということになる。
 49例のnon-aMCIのうち認知症(AD&DLB)に進展したのは、73.4%(6.1%+67.3%)となり、26.6%は認知症には至らないということになる。

誤診の多さ 知識のなさ 診断を変えない 減薬しない

 私自身も、レビー小体型認知症(DLB)なのにアルツハイマー病(AD)と誤診していた事例(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/719022474934101)をごく最近ご紹介しましたね。
 医師のプライドが、診断名を変えないことの主因なんでしょうね。
 樋口直美さんのレビー小体型認知症に関する知識、認知症専門医とほぼ同じレベルだと思っています。患者さんって、徹底して自分自身の病気のことを調べますのでそのレベルまで到達される方は居るんですよね。
 そのためには、確かな医学情報を流しているサイトなどからの知識の吸収が手っ取り早いと思います。私も少しでもそうしたことで寄与できればと考えております。

 減薬の問題は、アリセプトによるパーキンソニズムなどで何度かご紹介してきましたね。
 「DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア」
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/665994963570186
 =Hoehn &Yahr 重症度0~Ⅱ度におけるドネペジル3mgでのパーキンソン症状発現率:3/23=13.0%(プラセボ群では、0/43=0%)

診断後の精神的・社会的サポートのなさ

 徐々にサポートを拡げていくことが大切ですね。
 以下のサイト、素晴らしい内容が記載してありますのでご一読くださいね。
 「当事者・家族と医療・ケアを提供する側の双方がDLB当事者を支援するネットワークが大分で発足」
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/654368751399474

 私も「『早期発見 → 告知が早期絶望とならないように!』 Ver.3(2017.2.12)」を更にバージョンアップしていきたいと考えております。
 https://drive.google.com/file/d/0B-gBQ1xrZ5fhSXhrVERqSjBWUnM/view
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/719886698181012 

薬の副作用による悪化(薬剤性せん妄)

 レビー小体型認知症(DLB)の診断基準の示唆的特徴の一つとして抗精神病薬に対する薬剤過敏性があげられておりますね。何と、53.3%
 抗精神病薬以外にも、「抗コリン薬および抗コリン作用を有する薬剤に対してもたいへん過敏であり、それらの投与は避けるべき」(森 悦郎:レビー小体型認知症の臨床―レビー小体型認知症の薬物療法. 精神科 Vol.29 32-37 2016)と指摘されております。
 具体例を挙げれば、DLBの53.3%においてAP(Antipsychotics:抗精神病薬)に対する薬剤過敏(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/666955796807436)があるのでしたね。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15889951
RESULTS:
 Severe NSR(Severe neuroleptic sensitivity reaction) only occurred in patients with Lewy body disease: DLB (8 [53%]), PDD (14 [39%]), and PD (7 [27%]), but did not occur in Alzheimer's disease (p=0.006).
 =8/15:があるとは!!

 ただ皆さん、信じられないかも知れませんが、たかが風邪薬でもせん妄が起きることはあるんですよ。私もPL配合顆粒Ⓡ(総合感冒薬)でせん妄に至ったDLBの事例を複数経験しております。
 その理由は、PL配合顆粒には抗ヒスタミン薬が配合されているため、緑内障、前立腺肥大などに禁忌となっているのですが、成分の一つであるプロメタジンメチレンジサリチル酸塩は抗コリン作用も有しているからなんです。

精神科病院への入院は、誰のために必要なのか?

 2013年1月29日に東京都内で開催された「認知症国家戦略に関する国際政策シンポジウム」(主催:東京都医学総合研究所)においては、精神科病院への入院に関する報告もなされましたね。
 以下にその記事をご紹介します。
 「先日東京で開かれた認知症政策に関する国際会議でも、『向精神薬(メモ2参照)を減らす』(イギリス)、『精神科への転科・転院は1%と少ない』(フランス)、『認知症の人の入院はない』(オランダ)、『行動心理症状を持つ人の精神科による治療はほとんど外来での治療』(デンマーク)、『精神科病院への入院を防ぐ』(オーストラリア)という報告が相次いだ。」(2013年3月15日付朝日新聞・オピニオン─中村秀一の現場から考える社会保障)

 『精神科病院への入院を防ぐ』という取り組みは、福井県では実践されておりましたね。
 石川県立高松病院副院長の北村立医師が書かれた論文(一部改変)を以下にご紹介します。
 「在宅や介護老人施設などで対応困難なBPSDが発生した場合、可及的速やかに対応でき、かつ人権擁護の観点から法律的な裏づけがあるのは精神科病院しかないと思われる。したがってBPSDの救急対応も精神科病院の大きな役割として強調されるべきである。
 石川県立高松病院ではBPSDに対する救急・急性期治療の重要性を認識し、早くからそれを実践してきている。具体的には認知症医療においても365日24時間の入院体制を合言葉に、『必要なときに即入院できる』体制を作り上げてきた。
 さて、今後爆発的な増加が予想される認知症の人をできるかぎり地域でみていくためには、BPSDの24時間の対応体制の整備が必要なのは明らかであるが、わが国にはそのような報告は筆者らの知る限りない。
 当院のような365日24時間受け入れ可能な精神科専門医療機関が地域にあれば、多少重症のケースであっても、介護老人施設でぎりぎりまで対応できる可能性が示されている。施設が困ったときにただちに対応すれば信頼が得られ、状態が安定すれば短期間で元の施設に受け入れてもらうことが可能となり、専門病院と介護老人施設の連携がスムーズとなる。
 成人の精神科医療と同様、高齢者に認められる急性一過性の激しい精神症状は、適切に対応すれば容易に消退するものであり、これこそが精神科における認知症急性期医療の重要性を示すものである。また、筆者らの臨床経験からいえば、家族の心配や介護負担感を増やさないようにするには、初診時から365日24時間いつでも受け入れることをあらかじめ保証することが重要である。家族が困ったときにすぐ対応すれば、介護者は余裕をもって介護に当たることが可能であり、近年問題となっている介護者のメンタルヘルスを保つうえでもきわめて有益と考える。」(北村 立 他:石川県立高松病院における認知症高齢者の時間外入院について. 老年精神医学雑誌 Vol.23 1246-1251 2012)

 2013年6月15日に放送されましたNHK・Eテレ/チョイスでは、「もし認知症とわかったら」(http://www.nhk.or.jp/kenko/choice/archives/2013/06/0615.html)に関連するチョイスがいくつか示されました。
 私が一番印象に残ったのが、若狭町福祉課地域包括支援センターの髙島久美子さんらが取り組んでいる試みです。
 髙島さんは、若狭町に住む65歳以上の人を年1回訪ねており、戸別訪問により認知症の早期発見に努めております。さらに、家族だけではなくご近所の方に対しても認知症ケアについてアドバイスし、認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)を未然に防止することに精力的に取り組まれておりました。
 若狭町では、これらの取り組みによって、認知症患者の入院数(平成24年人口比)が福井県の周辺自治体の約5分の1であったという成果をあげているそうです(嶺南認知症疾患医療センター調べ)。
 町ぐるみで認知症対策に取り組むことにより、BPSDを未然に防止し精神科病院への入院を減らした具体的な事例と言えます。

P.S.
 上野秀樹医師の記事もご参考に。
 「精神科病院を考える・下─根強い 入院中心の文化」
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/718834371619578

DLB:アリセプトの投与が錐体外路症状の出現率を高めるか? [レビー小体型認知症]

【森 悦朗, Ikeda M, Nakagawa M, Miyagishi H, Yamaguchi H, Kosaka K: Effects of ドネペジル on Extrapyramidal Symptoms in Patients with Dementia with Lewy Bodies - A Secondary Pooled Analysis of Two Randomized-Controlled and Two Open-Label Long-Term Extension Studies. Dement Geriatr Cogn Disord, 40 (3-4), 186-198 (2015)】

Abstract
 Background/Aims: The aim of this study was to clarify the effects of donepezil on extrapyramidal symptoms in patients with dementia with Lewy bodies (DLB). Methods: Using pooled datasets from phase 2 and 3, 12-week randomized, placebo-controlled trials (RCT, n = 281) and 52-week open-label long-term extension trials (OLE, n = 241) of donepezil in DLB, the effects of donepezil on the incidence of extrapyramidal adverse events (AEs) and on the Unified Parkinson's Disease Rating Scale (UPDRS) part III were assessed, and potential baseline factors affecting the AEs were explored. Results: The RCT analysis did not show significant differences between the placebo and active (3, 5, and 10 mg donepezil) groups in extrapyramidal AE incidence (3.8 and 6.5%, p = 0.569) and change in the UPDRS (mean ± SD: -0.2 ± 4.3 and -0.6 ± 6.5, p = 0.562). In the OLE analysis (5 and 10 mg donepezil), the incidence did not increase chronologically; all AEs leading to a dose reduction or discontinuation except one were relieved. The UPDRS was unchanged for 52 weeks. An exploratory multivariate logistic regression analysis of the RCTs revealed that donepezil treatment was not a significant factor affecting the AEs. Baseline severity of parkinsonism was a predisposing factor for worsening of parkinsonism without significant interactions between donepezil and baseline severity. Conclusion: DLB can safely be treated with donepezil without relevant worsening of extrapyramidal symptoms, but treatment requires careful attention to symptom progression when administered to patients with relatively severe parkinsonism.

Introduction
 Dementia with Lewy bodies (DLB) is the second most common form of senile dementia following Alzheimer's disease (AD) [1]. The core clinical features of DLB include neuropsychiatric symptoms and parkinsonism as well as cognitive impairment characterized by deficits in attention, executive function, and visual perception [2]. The cholinergic loss and a choline acetyltransferase activity deficit with preserved postsynaptic cortical muscarinic and nicotinic receptors [3,4,5] rationalizes the use of cholinesterase inhibitors (ChEIs) in DLB. The favorable potential of ChEls such as galantamine, rivastigmine, and donepezil has been demonstrated in previous studies [6,7,8,9,10,11]. The phase 2 and 3 trials of donepezil in patients with DLB have added to the accumulating evidence of the efficacy and safety of donepezil in terms of cognitive, behavioral, and global function in DLB, even for long durations, without increasing the risk of clinically significant safety events [12,13,14,15].
 It has been reported that 25-50% of patients with DLB have parkinsonism at the time of diagnosis and that 75-80% of such patients eventually develop it [16], although the exact proportion is still controversial. In a natural course, the symptoms could worsen with a speed comparable to Parkinson's disease (PD) [17]. The cholinergic interneurons synapse on the GABAergic striatal neurons that project to the globus pallidus. The cholinergic actions inhibit striatal cells of the direct pathway and excite striatal cells of the indirect pathway. Thus, ChEIs augment cholinergic function, which may oppose the effects of dopamine on the direct and indirect pathways exacerbating parkinsonism in DLB, in which nigrostriatal dopaminergic neurons have been lost [18,19,20,21]. On purely theoretical grounds, ChEI administration targeting cognitive impairment and behavioral symptoms may exacerbate parkinsonism. Despite studies showing that ChEIs did not affect parkinsonism and which did not replicate the possible untoward effects in patients with DLB or PD dementia (PDD) [22,23], concerns over a possible influence on the extrapyramidal symptoms still linger due to a shortage of evidence from large-scale, placebo-controlled, or long-term studies especially in DLB and require further confirmation.
 As in diseases like DLB treatment for one symptom may precipitate others [24] and the combination or severity of the associated multiple, multi-dimensional symptoms varies by patient, a large-scale comprehensive study is essential. Our trials of donepezil in patients with DLB consist of two randomized, double-blind, placebo-controlled trials (RCT) and two open-label long-term extension studies (OLE) and enrolled a large group of patients that may embody patients with diverse demographic characteristics and clinical symptom manifestations, which the current diagnosis of probable DLB may encompass. We therefore developed two types of comprehensive pooled datasets from two RCTs and two OLEs of donepezil for DLB. RCTs provide information with minimized bias, while OLEs involve more patient-years of exposure to donepezil and may thus disclose adverse effects which are not observed in the parent RCTs. Using these datasets of the largest scale ever in DLB, we analyzed the effect of donepezil on the occurrence and worsening of extrapyramidal symptoms in patients with DLB.

Methods
Design of the Phase 2 and 3 Studies
 This analysis pooled the data from the phase 2 and 3 studies of donepezil for DLB conducted in Japan. The phase 2 studies, consisting of a RCT (clinicaltrials.gov reference: NCT00543855) and a subsequent OLE (clinicaltrials.gov reference: NCT00598650), were conducted as two sequential protocols. A 12-week randomized, double-blind, placebo-controlled exploratory study (phase 2 RCT) was first conducted to investigate the efficacy and safety of donepezil at 3, 5, and 10 mg/day starting in 2007 (fig. 1a) [12]. In the patients who completed this RCT, the safety and efficacy of long-term administration at 5 mg were further investigated in the following 52-week OLE (phase 2 OLE) (fig. 1b) [13]. The phase 3 study (clinicaltrials.gov reference: NCT01278407) was conducted as a single protocol consisting of an RCT phase and a subsequent OLE phase. A 16-week randomized, double-blind, placebo-controlled comparative study consisting of a 12-week confirmatory phase (phase 3 RCT) (fig. 1a) [14] and a 4-week transition period and a subsequent 36-week OLE phase were conducted starting in 2011 for a total duration of 52 weeks (phase 3 OLE) (fig. 1b) [15]. The aim was to confirm the superiority of donepezil at 5 and 10 mg/day for 12 weeks over placebo with regard to both cognitive function and behavioral symptoms and to evaluate the safety and efficacy of long-term administration of 10 mg/day for 52 weeks. Each study was conducted in accordance with the principles of the Declaration of Helsinki. The protocols were approved by the institutional review board at each participating center.
Fig.1.JPG

Patients
 The inclusion and exclusion criteria were the same in both RCTs. The inclusion criteria were patients aged ≥50 years with probable DLB fulfilling the consensus diagnostic criteria [2], with mild to moderate-severe dementia [10-26 points on the Mini-Mental State Examination (MMSE) and Clinical Dementia Rating ≥0.5], behavioral symptoms or cognitive fluctuation [Neuropsychiatric Inventory (NPI)-plus ≥8 (rated on 12 items: original 10 NPI items + sleep [25,26] + Cognitive Fluctuation Inventory [27,28])], and with caregivers who could routinely stay with the patients, provide information for this study, assist with treatment compliance, and escort them to required visits.
 The exclusion criteria included PD that was diagnosed at least 1 year prior to the onset of dementia; focal vascular lesions on an MRI or CT that might cause cognitive impairment; other neurological or psychiatric diseases; complications or a history of severe gastrointestinal ulcers, severe asthma, or obstructive pulmonary disease; systolic hypotension (<90 mm Hg); bradycardia (<50 bpm); sick sinus syndrome; atrial or atrioventricular conduction block; QT interval prolongation (≥450 ms); severe parkinsonism (Hoehn and Yahr stage ≥4) [29], and treatment with ChEIs or any investigational drug within 3 months prior to screening. ChEIs, antipsychotics, and anti-Parkinson drugs were not allowed during the study, except for levodopa and dopamine agonists, of which only stable doses were allowed during the RCTs.
 Written informed consent was obtained from the patient (if at all possible) and his/her primary family member before initiating the study procedures.

Donepezil Administration
 In the phase 2 RCT, the patients were randomized to placebo, 3, 5, or 10 mg/day of donepezil (placebo, 3-, 5-, and 10-mg groups) (fig. 1a). In the subsequent phase 2 OLE, all patients received donepezil at 5 mg/day (fig. 1b). Donepezil administration in the 5- and 10-mg groups started with a 2-week titration period with a 3-mg dose, which was applied in all of the studies.
 In the phase 3 RCT, the patients were randomized to placebo, 5, or 10 mg/day (placebo, 5-, or 10-mg group) (fig. 1a). Since the phase 3 study incorporated the RCT and OLE phases, the duration of donepezil administration in the phase 3 OLE differed by treatment group: 52 weeks for the 5- and 10-mg groups (10 mg administration from week 24 and 6, respectively) with a 12-week overlap with the phase 3 RCT, and 36 weeks for the placebo group (3 mg titration from week 16, 5 mg administration from week 18, and 10 mg from week 24) (fig. 1b).
 In the OLEs, a dose reduction to 3 mg in the phase 2 OLE or to 5 mg after week 24 in the phase 3 OLE was allowed upon emergence of a safety concern.

Summary of the Results of the Phase 2 and 3 Studies
 The results of the phase 2 and 3 studies are reported in detail elsewhere [12,13,14,15]. Briefly, in phase 2, the RCT showed that donepezil significantly improved cognitive, behavioral, and global functions with good tolerability, and the OLE demonstrated that administration was well tolerated even for a long duration and that the effect on cognitive and behavioral impairment was maintained for up to 52 weeks. In phase 3, although the RCT failed to confirm a superiority concerning the behavioral symptoms over placebo, it confirmed the efficacy concerning cognitive function (one of the co-primary endpoints) without serious safety concerns. The OLE demonstrated a lasting improvement in cognitive function for up to 52 weeks, without increasing the risk of clinically significant safety events.

Datasets
 The safety data regarding extrapyramidal symptoms derived from these studies were pooled in two ways: RCT and OLE (fig. 1). The datasets of the two RCTs were pooled and analyzed according to allocated treatment during the 12-week period: placebo, 3-, 5-, or 10-mg groups (n = 281) (fig. 1a). The dataset derived from all patients receiving donepezil via long-term administration [i.e. phase 2 OLE and phase 3 OLE (whole period of phase 3: RCT + OLE)] was pooled and analyzed (n = 241) (fig. 1b).

Assessment of Extrapyramidal Symptoms
 The influence on extrapyramidal symptoms was evaluated according to the incidence of extrapyramidal adverse events (AEs) and the Unified Parkinson's Disease Rating Scale (UPDRS) part III [30]. To reduce interrater and intrarater variability, an advanced rater training was conducted, a fixed rater was involved in the assessment of each patient in principle, and an elaborate monitoring was made throughout the study period. Of all the AEs which occurred during the studies (coded according to the Preferred Terms of the Medical Dictionary for Regulatory Activities), the following were identified as extrapyramidal AEs after discussion by the central committee: parkinsonism, rigidity, tremor, camptocormia, gait difficulty, and akinesia. The UPDRS part III was conducted every 12 weeks in the phase 2 RCT and in phase 3, and every 24 weeks in the phase 2 OLE.

Statistical Analysis
 This secondary analysis was based on the safety analysis set of each study, which comprised all patients who received at least one dose of donepezil and had safety assessment data. For the analysis of the RCTs, the incidence of extrapyramidal AEs was summarized by treatment group and compared between the placebo and each active group using Fisher's exact test. The change in the UPDRS part III total and subscale score from baseline was compared between the placebo and each treatment group using analysis of covariance (ANCOVA) with the baseline values as covariates. Subscales were predefined as the following four symptoms: tremor, akinesia, rigidity, and postural instability and gait difficulty, with score ranges of 0-28, 0-36, 0-20, and 0-16, respectively [31,32]. For the analysis of OLEs, the incidence of extrapyramidal AEs was calculated. The UPDRS part III scores were analyzed using Student's paired t test.
 To identify any potential baseline factors that may contribute to the extrapyramidal AEs, the incidence was calculated for subgroups stratified by the potential factors, and univariate and multivariate logistic regression analyses were subsequently conducted. Potential factors included endogenous factors (sex, age, and body weight) and symptom-related factors [UPDRS part III score, Hoehn and Yahr stage (≤2 or 3), and use of anti-Parkinson drugs (use or nonuse)]. In multivariate analyses, either the UPDRS part III score or the Hoehn and Yahr stage was included in the model because of the high correlation between them. In the analysis of the RCTs, the interaction between the treatment groups and factors was tested for each symptom-related factor using a logistic regression analysis. Each interaction was to be included in the model when significance was detected.
 Values of the UPDRS part III score at the final evaluation were imputed using a last observation carried forward (LOCF) method. All analyses were made using SAS version 9.3 (SAS institute, Cary, N.C., USA).

Results
Baseline Characteristics
 The demographic and baseline characteristics of the patients included in this analysis are summarized in table 1. The phase 2 RCT enrolled 140 patients. Of 123 patients who completed the RCT, 108 patients were enrolled in the phase 2 OLE, 81 of whom completed the study. The phase 3 study enrolled 142 patients; the RCT and OLE were completed by 111 and 100 patients, respectively.
Table 1.JPG
 Of the patients included in the RCT analyses, females accounted for 60.9%. The mean age was 78.3 (range 57-95) years; all but 2 patients were 65 years or older. Anti-Parkinson drugs (levodopa or dopamine agonists) were used by 20.3% (57/281) with the mean ± standard deviation (SD) levodopa equivalent dose [33] of 262.0 ± 179.8 mg/day at baseline, and the dosages were not changed during the RCTs. No patients were on antipsychotics. The mean scores for the MMSE and UPDRS part III at baseline were 20.0 and 19.8 points, respectively. The characteristics in the OLE analysis were similar. During the OLEs, levodopa or dopamine agonists were started by 9.1% of patients (22/241), with the dose being increased in 6.6% (16/241) and decreased in 1.2% (3/241).

Analysis of RCTs
Incidence of Extrapyramidal AEs
 The incidence of extrapyramidal AEs was 3.8% (3/80), 5.7% (2/35), 7.5% (6/80), and 5.8% (5/86) in the placebo, 3-, 5-, and 10-mg groups, respectively, and 6.5% (13/201) in the combined donepezil group, with no significant difference from the placebo group (p = 0.639, 0.495, 0.721, and 0.569 in the 3-, 5-, and 10-mg and combined donepezil group, respectively) (table 2). Most of the extrapyramidal AEs were reported as parkinsonism, the incidence of which was somewhat higher in the combined donepezil group [5.0% (10/201)] than in the placebo group [2.5% (2/80)], but the difference was not significant (p = 0.519). Severity was mild or moderate in all cases, and none were serious. Extrapyramidal AEs that led to discontinuation were reported in 3 patients as parkinsonism and were relieved after discontinuation: 2 patients in the 5-mg group (1 patient while receiving 3 mg) and 1 patient in the 10-mg group while receiving 3 mg.
Table 2.JPG
UPDRS Part III Score
 The mean ± SD change in the UPDRS part III total score at week 12 (LOCF) was -0.2 ± 4.3, -0.5 ± 7.4, -1.2 ± 6.8, and -0.1 ± 5.9 in the placebo, 3-, 5-, and 10-mg groups, respectively, and -0.6 ± 6.5 in the combined donepezil group (table 3). The score was rather decreased in each treatment group from baseline, with no significant differences between the placebo and any active groups. Data at the final evaluation prior to week 12 from 30 patients were imputed using the LOCF method, but the results at week 12 of the observed case analysis were very similar to the results of the LOCF analysis (data not shown). Among the UPDRS part III subscales, the mean ± SD score decrease in rigidity was significantly larger in the 5-mg group (-0.8 ± 2.2) than in the placebo group (-0.2 ± 2.0, p = 0.030), although significant differences were not found in the 3- and 10-mg groups for either this or other items (table 4).
Table 3.JPG
Table 4.JPG

Analysis of Long-Term Administration
Incidence of Extrapyramidal AEs
 Extrapyramidal AEs were reported by 12.4% (30/241) of patients (table 2). The incidence did not change over time for 52 weeks; the incidence in weeks 0-12, >12-24, >24-36, and >36-52 was 4.4% (9/204), 2.3% (4/173), 3.1% (5/161), and 6.4% (10/157), respectively (note that the placebo group during the phase 3 RCT was excluded from this calculation due to a difference in the administration period).
 One severe AE was reported by 1 patient as parkinsonism, and all other AEs were mild or moderate in severity. No serious AEs were reported. AEs that led to discontinuation were reported in 4 patients as parkinsonism. AEs that led to a dose reduction were reported in 4 patients: 3 as parkinsonism and 1 as akinesia. All of these AEs recovered or were relieved after dose reduction or discontinuation, except for the single case of parkinsonism which led to discontinuation after dose reduction in the phase 2 OLE. Most of the extrapyramidal AEs that led to neither discontinuation nor dose reduction of the study drug were treated by start or dose increment of anti-Parkinson drugs [72.7% (16/22)].
UPDRS Part III Score
 The mean ± SD change in the UPDRS part III total score from baseline was -0.7 ± 6.5, -0.2 ± 8.6, and 0.1 ± 8.4 at weeks 24, 52, and 52 (LOCF, n = 197, 179, and 227), respectively. The absolute magnitude of the mean change was small, ranging from -0.7 to 0.1, with no significant difference from baseline at any of the evaluation points (p = 0.145, 0.768, and 0.794, respectively).

Exploration for Potential Factors Affecting Extrapyramidal Symptoms
RCT Analysis
 The incidence of extrapyramidal AEs did not differ according to the potential endogenous factors (table 5). Calculated by symptom-related factors, the incidence tended to be higher in the subgroups of the 5- and 10-mg groups with a UPDRS part III score above or equal to the median, a Hoehn and Yahr stage of 3, and use of anti-Parkinson drugs, relative to the incidence in the same subgroups of the placebo group and their respective counterparts in the 5- and 10-mg groups, even with an overall small incidence. The results of the univariate logistic regression analysis are shown in table 6. No significant interactions were detected between the treatment group and the symptom-related factors (UPDRS part III score, Hoehn and Yahr stage of 3, and use of anti-Parkinson drugs: p = 0.920, 0.949, and 0.354, respectively). The UPDRS part III score [odds ratio (OR): 1.087, p < 0.001], Hoehn and Yahr stage of 3 (OR: 5.228, p = 0.005), and use of anti-Parkinson drugs (OR: 4.612, p = 0.003) were the significant factors contributing to the extrapyramidal AEs. In the multivariate logistic regression analysis, the UPDRS part III score was the significant factor (OR: 1.071, p = 0.005) (table 7). In the model including the Hoehn and Yahr stage instead of the UPDRS part III score, a Hoehn and Yahr stage of 3 was significant (OR: 4.857, p = 0.014). In the subgroups of the active drug groups with use of anti-Parkinson drugs, the mean levodopa equivalent doses were comparable between patients with and without extrapyramidal AEs (228.6 and 262.9 mg, respectively; p = 0.679).
Table 5.JPG
Table 6.JPG
Table 7.JPG

Long-Term Studies
 The incidence of the extrapyramidal AEs did not differ greatly by the endogenous factors (table 5). Among the symptom-related factors, the incidence tended to be higher in the subgroups with a UPDRS part III score above or equal to the median, a Hoehn and Yahr stage of 3, and use of anti-Parkinson drugs. In the univariate logistic regression analysis, the UPDRS part III score [OR: 1.052, 95% confidence interval (CI): 1.019-1.087, p = 0.002], a Hoehn and Yahr stage of 3 (OR: 5.126, 95% CI: 2.228-11.794, p < 0.001), use of anti-Parkinson drugs (OR: 4.125, 95% CI: 1.831-9.293, p < 0.001), and age (OR: 0.931, 95% CI: 0.872-0.993, p = 0.030) were the significant factors. In the multivariate logistic regression analysis, the UPDRS part III score (OR: 1.043, 95% CI: 1.007-1.080, p = 0.020) and use of anti-Parkinson drugs (OR: 2.581, 95% CI: 1.058-6.298, p = 0.037) were the significant factors. In the model including the Hoehn and Yahr stage instead of the UPDRS part III score, a Hoehn and Yahr stage of 3 (OR: 5.561, 95% CI: 2.179-14.192, p < 0.001) and age (OR: 0.904, 95% CI: 0.834-0.980, p = 0.014) were significant. In the subgroups with use of anti-Parkinson drugs, the mean levodopa equivalent doses were comparable between patients with and without extrapyramidal AEs (265.4 and 271.5 mg, respectively; p = 0.925).

Discussion
 This study explored the presence of any possible influence of DLB treatment with donepezil on extrapyramidal symptoms using two pooled datasets. In the RCT analysis, the difference in the incidence of extrapyramidal AEs between the active and placebo groups was minimal, and there was no tendency for a dose-dependent increase in the incidence. In the OLE analysis, none of the extrapyramidal AEs were serious. AEs that led to discontinuation or dose reduction were reported only in 8 patients (3.3%), all of which except for one case of parkinsonism recovered or were relieved after discontinuation or dose reduction. Moreover, the possibility of delayed onset or worsening of extrapyramidal AEs with long-term treatment appears low. In contrast to the concern based on the classical dopaminergic-cholinergic imbalance theory about worsening of extrapyramidal symptoms by cholinergic enhancement, these results suggest that patients with DLB can benefit from donepezil, which has a well-established efficacy on cognitive and psychiatric functions [12,13,14,15], with a minimal risk for extrapyramidal symptoms. The absence of an influence of ChEIs, including donepezil, on parkinsonism has been reported in previous studies, along with improvement in a few of these studies, which reinforces the interpretations drawn from this analysis [7,10,11,22,34]. Our finding is also in accordance with accumulating evidence of cholinergic involvement in PD; degeneration of multiple cholinergic projection systems occurs early in PD [35], cholinergic degeneration plays a role in some aspects of motor symptoms including postural control [36] and gait [37], and treatment with donepezil produces reductions in the number of falls in frequently falling patients with PD [38].
 In contrast to our study, a worsening of parkinsonism after ChEI administration has been reported in some studies [18,19,20,21]. Moreover, compared with AD, extrapyramidal symptoms are considered to occur more frequently in patients with DLB. In a 24-week RCT and a 52-week OLE of donepezil in patients with severe AD in Japan, parkinsonism was reported with less than a 5.0% incidence [39,40]. The incidence in the present study is seemingly higher, although the events cannot necessarily be attributed to donepezil but to disease progression.
 In the present study, baseline severity of parkinsonism (i.e. the UPDRS part III score, a Hoehn and Yahr stage of 3, and use of anti-Parkinson drugs) was identified as a predisposing factor for worsening of parkinsonism. Donepezil was not a contributing factor. There was no significant interaction between donepezil and baseline severity. These results suggest that extrapyramidal AEs can mostly be attributed to progression in the relatively severe stage.
 Studies of ChEIs for patients with PDD, which is in the same spectrum of Lewy body disease as DLB, reported a slightly higher incidence of extrapyramidal AEs in the active than in the placebo group (tremor: 3.9 and 10.2% in the placebo and rivastigmine groups, respectively [41]; PD: 6.9, 10.8, and 10.4%, and tremor: 2.9, 7.2, and 7.1% in the placebo and donepezil 5- and 10-mg groups, respectively [42]), although both studies concluded that the active treatment was well tolerated. These studies may enable us to delineate the similar safety profile of ChEIs in patients with DLB manifesting relatively severe extrapyramidal symptoms and in those with PDD.
 In any case, careful attention is certainly required in treating DLB with donepezil. Particular attention should be placed on patients who manifest extrapyramidal symptoms that restrict their daily living activities and who require pharmacological treatment. Nevertheless, even after the occurrence or worsening of these symptoms, dose reduction or discontinuation, or addition of anti-Parkinson drugs may prevent further worsening and lead to recovery or relief.
 An interpretation of this analysis may require consideration of several points. First, the present analysis may not encompass all of the possible factors that may affect the symptoms in treatment with donepezil. Second, the analysis is based on the data obtained under a clinical trial setting where the strict inclusion and exclusion criteria employed may have curtailed the variety of patient characteristics which may be encountered in a real-life setting. Third, patients with very severe parkinsonism of a Hoehn and Yahr stage ≥4 were not included, and thus the present findings cannot be extrapolated to those patients. Finally, the recording of extrapyramidal AEs and UPDRS part III scoring might be confounded due to interrater variability in the assessments in multicenter studies where both neurologists and psychiatrists participated, although a rater training and elaborate monitoring were conducted to reduce the concern. Future studies which overcome all of these possible limitations may be warranted.
 In conclusion, donepezil can treat DLB effectively and safely without relevant worsening of extrapyramidal symptoms. However, its administration to patients whose daily living activities are restricted and for whom pharmacotherapy is required due to parkinsonism necessitates care regarding symptom progression. In case of the occurrence or progression of symptoms, a dose reduction or discontinuation, or addition of anti-Parkinson drugs is considered as an effective approach.

Acknowledgments
 We thank all patients and caregivers for their participation in the study; all investigators and their site staff for their contributions; Clinical Study Support, Inc., for their editorial assistance in preparing this manuscript, and the Eisai study team for their assistance. The studies and analyses were sponsored by Eisai Co., Ltd. (Tokyo, Japan). The sponsor was involved in the study designing, the collection and analysis of data, and review of the manuscript.

Disclosure Statement
 E.M. received personal fees from Eisai during the conduct of the studies; grants and personal fees from Eisai, Daiichi Sankyo, and FUJIFILM RI, and personal fees from Janssen, Johnson and Johnson, Lundbeck, Novartis, Ono Pharmaceutical, Nihon Medi-Physics, and Medtronic outside the submitted work. All grants were for his department, and he received them as the director of the department. M.I. received personal fees from Eisai during the conduct of the studies; grants and personal fees from Daiichi Sankyo, Eisai, FUJIFILM RI, Janssen, Nihon Medi-Physics, Novartis, Pfizer, Takeda, and Tsumura, and personal fees from MSD and Ono Pharmaceutical outside the submitted work. All grants were for his department, and he received them as the director of the department. M.N., H.M., and H.Y. are employees of Eisai. K.K. received personal fees from Eisai during the conduct of the studies and personal fees from Tsumura, Eisai, Janssen, FUJIFILM RI, Novartis, Nihon Medi-Physics, Daiichi Sankyo, Ono Pharmaceutical, Otsuka, and Dainippon Sumitomo outside the submitted work.

References
 (省略)

書評:『樋口直美:私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活. ブックマン社, 東京, 2015』 [レビー小体型認知症]

私の脳で起こったこと.jpg
初夏に読んだ樋口直美さんの本の書評を書きました。

タイトル:
 認知症専門医にこそお勧めの本だと感じました。

本文:
 まず最初に、著書の「はじめに」を一部改変して以下にご紹介します。

 「急速に変わりつつあるとはいえ、レビー小体型認知症は、まだ知名度の低い病気です。私は、内科、眼科整形外科で『レビー…? どういう字を書きますか?』と訊かれました。
 正しく診断されていないだけで、実際には、認知症の約5人に1人がレビー小体型だと専門医は言います。生前にうつ病、パーキンソン病と誤診されていた人気俳優、ロビン・ウィリアムズもレビー小体型認知症でした。
 私も41才でうつ病と誤診され、約6年間、誤った薬物治療を受けました。自分でこの病気を疑い、文献を読み漁り始めたのが、49才。
 50才の秋、専門医に診断され、治療が始まったのは、翌年の夏。抗うつ剤で劇的に悪化した日から、丸9年という歳月がかかりました。」

 私は、日本認知症学会の専門医(指導医)です。
 詳細な記述を読み、私自身も非常に勉強になりました。

 多くの方が、「著者は、本当にレビー小体型認知症?」と疑問に感じることは当然のことだと思います。
 この辺りを説明するのは少し専門的な話をする必要があります。
 近年では呼称が、レビー小体型認知症(dementia with Lewy body:DLB)、認知症を伴うパーキンソン病(Parkinson's disease with dementia:PDD)さらにはパーキンソン病も含め,病理学的な観点からレビー小体病(LBD:Lewy body disease)、あるいはα-synucleinopathyといった包括的な呼称へと変化しつつあるのです。

 もう1点だけ専門的な話をさせて頂きます。
 49例の記憶以外の認知機能障害を主体とする非健忘型MCI(non-aMCI)のうち認知症(アルツハイマー病&DLB)に進展したのは73.4%であり、26.6%は認知症には至らないことが報告されています(Ferman TJ1, Smith GE, Kantarci K et al:Nonamnestic mild cognitive impairment progresses to dementia with Lewy bodies. Neurology. 2013 Dec 3;81(23):2032-8)。

 発症早期の何らかの対策が認知症への進展を食い止めたことが想定されます。これは、同じ病気を抱える方にとって大きな希望となります。
 私自身は、著書を読み進めながら専門誌を読み漁り、おそらく認知症への進展を食い止めた鍵は、腸内フローラないしはミトコンドリア機能の改善が鍵を握っていたのではないかと推察しております。
 まだ明確には証明されていない仮説ではありますが、「腸内フローラ悪化 → ミトコンドリア機能低下 → レビー小体病」という発症機序を想定している研究者もおられます。
 その仮説が正しければ、腸内フローラを改善する生活習慣、ないしはミトコンドリアの機能を向上させる試みなどに大きな期待が寄せられます。

 著者の樋口直美さんは、今でも、突然の認知機能の変動(「意識障害」とご本人はお話されております)と自律神経症状(血圧の変動など)、視空間認知機能障害、時間感覚の低下(https://note.mu/hiiguchinaomi/n/n8da1f271f912)などで苦慮され生活障害を抱えておられます。そのことは、今年7月に講演会でご一緒する機会があり、ご本人から直接お伺いしました。
 レビー小体型認知症(DLB)に関する正しい情報が普及することを願ってやみません。
 著書を隅々まで読み、私自身“目から鱗”のような情報がありました。DLBを発症する15年も前に「薬剤に対する過敏」が既に起きているなんて到底信じがたい話でした。まずは認知症学会の専門医が率先して正しい知識を身につけることが必要であると深く反省させられました


もっと詳しく勉強したい方は↓
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/628261997343483?pnref=story
 「腸内フローラ悪化 → ミトコンドリア機能低下 → レビー小体病」の根拠となる論文などを紹介しております。

まとめ
 http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-05-29-1

DLBのSPECT所見を読影する際の注意点 [レビー小体型認知症]

認知症の語り.jpg
語り 021

 床を虫がつっつっつーと歩いているのを見て、「あれ、こんなところに虫がいる」って思いました。数秒間なんですけれども、虫が歩いてぱっと止まったときに、それが綿くずだったんですね。それを見たときに、「これは目の錯覚でも何でもない。これこそが幻視なんだ」と思いました。そのとき、ほんとに血の気が引くというか、……冷汗は出ませんでしたけれども、とんでもないことになったと思いました。
 で、病院に行かなければいけないと思いました。ただ、誤診が多いということなので、誤診されたらたまらないと思いまして、調べました。で、この先生なら大丈夫だろう、というところに、かなり遠かったんですけれども、行きました。
 そこで、脳血流の検査、MRIとMGBI〔MIBGのこと〕だったっけ、心筋シンチグラフィの検査をしまして、あと、血の検査とか、血圧の検査とかしました。で、結局、画像には出ませんでした。MRI正常。ま、レビーではそれが当たり前なんですけれども。で、脳血流は、レビーでは後頭葉が血流低化すると言うんですけれども、私の場合は前頭葉が血流低下しているって。「これは、うつ病でよくあるものです」って言われました。心筋シンチグラフィは9割の精度でわかるということなんですけども、……レビーは心臓が(黒く)写らないんですけども、私は写ったんですね〔p.60参照〕。
 知能検査は、計算を全部間違いました。100引く7っていうやつですね。100引く7、はい、また7引いて、7引いてって、それを私は全部間違えたようで……。自分ではわからなかったんですけども、「認知機能の低下があります」と言われました。「何を間違ったんですか」って聞きましたら、「計算が違っていました」って。
 で、「画像で出ないので、診断できません。診断できませんから、治療もできません」と言われました。
 早期発見・早期治療が、残された唯一の希望だと思っていましたので、「治療しない」と言われて、……何か、こう、命綱が目の前で、ぷつんと切られたと感じまして、……ほんとに、私の真後ろに死神が立っていて、今にも鎌を振り下ろしそうなので、「何とかしてください」って言いに行ったのに、「鎌を振り下ろして、けがをしたら来てください」って言われたような……、そういう感じがしましたね。
                    本人11(プロフィール:p.613)
 【認知症の語り─本人と家族による200のエピソード. 健康と病いの語りディペックス・ジャパン, 東京, 2016, pp57-59】

私の感想
 福井俊哉先生が著書『症例から学ぶ戦略的認知症診断』の中で、DLBのSPECT所見を読影する際の注意点について言及しております。
 たいへん重要な視点を述べておられますので以下に抜粋してご紹介致します。

 DLBの診断基準の支持的症状の一つとして,「SPECT上の後頭葉の機能低下を伴った全体的な取り込み低下」がある.これはあくまでも,DLBとADを比較した場合の所見であることに注意を要する.DLBをADと比較した場合には,後頭葉[Lobotesisら2001,Pasquierら2002,Rossiら2009]または頭頂後頭葉[Collobyら2002]における取り込み低下がDLBにてより高度である.しかし,この点が強調され過ぎ,後頭葉取り込み低下を示さない症例はDLBにあらずといった極論すら見聞するが,これは大きな誤解である.後頭葉取り込み低下所見のDLBとADの鑑別診断に対する感度は60~70%[Lobotesisら2001,Pasquierら2002],特異度は87%[Lobotesisら2001]程度である.さらに後頭葉における取り込み低下を呈するDLB症例は7割弱[Tatenoら2008]に過ぎない.一方,DLBやPDDを正常コントロールと比べた場合は,後頭葉には有意な取り込み低下は見られず,頭頂後頭葉,頭頂葉,前頭葉,視床などが主たる取り込み低下部位である[Rossiら2009,Changら2008].側頭葉の取り込みはPDよりもDLBで有意に低値である[Changら2008].したがって,健常人を正常コントロールとするSPECT統計ソフト(easy Z-score Imaging System(eZIS),Voxel-Based Stereotactic Extraction Estimation(vBSEE)をDLB症例に応用する場合には,後頭葉ではなく,頭頂後頭葉,前頭葉,側頭葉にて取り込み低下が見られることがDLBの特徴であることを念頭に置くべきである.後頭葉取り込み低下はDLB診断基準の支持的症状ではあるが,その意味合いは「DLBとADの鑑別上重要な所見である」というもので,DLBを正常対象や非AD認知症疾患と対比した場合の所見ではないことに注意を喚起したい.
 …(中略)…
DLBの血流低下部位.jpg
 図10はDLB19例全例における,検討脳部位における取り込み変化を示したものである.Y軸はこのextensionとseverityの積であるが,マイナス方向は取り込み低下,プラス方向は相対的な取り込み増加を示す.相対的な取り込み増加とは,当該脳部位の取り込み低下が全脳の取り込み低下の平均値よりも軽度であることを意味し,必ずしも実際に取り込みが亢進していることを示すのではない.
 取り込み低下は主に前頭葉と頭頂葉にてみられた.後頭葉ではむしろ相対的な取り込み増加が見られた.これは,DLBを正常コントロールと比較した場合,前頭葉,頭頂葉,前部帯状回,楔前部の取り込み低下が重要であるとの見解[Rossiら2009,Changら2008]を支持するものであった.この結果から,正常例を対照とするeZIS/VbSEE処理のSPECT所見を用いてDLB診断を行う際,後頭葉に単独の取り込み低下を認めなくてもDLBは必ずしも否定できないことが理解できよう.
 【福井俊哉:症例から学ぶ戦略的認知症診断 南山堂発行, 東京, 2011, pp234-238】

DLBのSPECT.jpg
 本例のように,CDT(Clock Drawing Test)などの視空間認知課題の障害が全般性認知レベルに比べて不釣り合いに高度であることがDLBの診断に結びつくことが少なくない.SPECTを用いてCDT障害と高度・軽度DLBの関係を比較した検討[Nagahamaら2008]によると,CDT高度障害DLBにおいて両側前頭葉眼球運動領域,補足運動野,被殻,視床の取り込みが有意に低かった.したがって,DLBでは前頭葉線条体障害が視空間認知に関わる注意/覚醒障害を生じる結果,視空間認知障害が顕著になると推測されている[Nagahamaら2008]
 【福井俊哉:症例から学ぶ戦略的認知症診断 南山堂発行, 東京, 2011, p229-234】

P.S.
[Nagahamaら2008]
 Nagahama Y, et al.:Cerebral substrates related to impaired performance in the clock-drawing test in dementia with Lewy bodies. Dement Geriatr Cogn Disord, 25:524-530 2008.
 Abstractは以下サイトにてお読み頂けます。
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18477845

DLBの幻視とADの幻視は発生機序が違う [レビー小体型認知症]

幻視に対する薬物療法の考え方

 アルツハイマー型認知症でみられる幻視に対して,有効性を期待できる薬剤は少ない.原則は非薬物療法で対応すべきであるが,夜間の睡眠障害のために日中の覚醒度が低いことから,幻視を訴える患者がみられる.そのときには,夜間の睡眠を確保できる薬剤を使用することで,日中の幻視が軽減することもある.レビー小体型認知症と診断される患者の場合には,ドネペジル(アリセプト[レジスタードトレードマーク])が幻視の軽減から消失を期待できるので,一度はその使用を考慮したい.
 【川畑信也:認知症でみられる行動障害・精神症状BPSDへの対応の実際. Geriatric Medicine Vol.54 447-453 2016】

私の感想:
 DLBの幻視とADの幻視は発生機序が違いましたね。
 以下に復習して下さい。
 

1. はじめに
 BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の発現には環境要因(独居、環境変化など)、心理的要因(喪失感、孤独感など)、身体的要因(難聴、視力障害、運動制限、身体疾患など)、性格要因(疑い深い、心配性、凡帳面ほか)などが複雑に絡み合っているが、病理学的な基盤は共通して存在する。それは認知症でさえなければBPSDは発現しなかったであろうことからも明らかである。認知症症状は中核症状と周辺症状からなり、BPSDは周辺症状にあたるとされるが、その発現には中核症状も関与している。例えば、「物盗られ妄想」は物忘れだけでは起きないものであるが、中核症状である病的な物忘れが基盤にあることは確かである。

3. 脳の領域と幻覚
1)ATDの誤認・幻覚
 アルツハイマー型認知症(ATD)では視覚情報統合の上位の領域ほど病変が強い。以上のことから、ATDでは情報はインプットされるがそれを統合して有効に利用する機能が冒されているので視覚情報の誤認が起こりやすく。BPSDとしての視覚性誤認や幻視が起こりやすい。これは聴覚系でも同様であり、錯聴、幻聴を引き起こすと考えられる。このような知覚の誤認や幻覚は認知症ではしばしば妄想に発展する。
2)DLBの幻視
 DLBの後頭葉の視覚系でもATDと同じように上位の領域ほどレビー病理が強い。DLBでは後頭葉の脳血流の低下があり、これはDLBの幻視を説明する根拠とされている。これはDLBの視覚性誤認の基盤として矛盾しないが、DLBの幻視はATDと異なった『ありありとした』幻視という特徴があり、頻度も高く、ATDとは異なった機序も関与していると考えられる。

4. ATDの『物盗られ妄想』と『誰かいる妄想』
 妄想の中には脳の局在機能の関与が疑われるものがある。『物盗られ妄想』と『誰かいる妄想』はATDで起こりやすい妄想であるが、いずれも空間認知が関係していると考えられ、ATDで病変が高度に及ぶ頭頂葉領域の関与が示唆される。ATD病変は海馬領域を中心とする辺縁糸に始まり、大脳新皮質に広がる。その進展の様相はNFTの分布とその程度(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/Braak-NFTstage.JPG)にほぼ相関している。大脳新皮質では一次知覚・運動野は最後に病変が及ぶ領域であり、連合野が冒されやすいが、連合野の冒され方も一様ではない。ATDの連合野は、後部帯状回と上頭頂小葉が最初に冒され、次いで、下頭頂小葉、中・下側頭葉が続く。経時的な機能画像研究で示されているように、ATD病変は後方から前方(前頭葉)に広がる。早期に冒される新皮質で最も病変が高度に及ぶのは後部帯状回と下頭頂小葉である。ATDの新皮質病変で興味深いことは早期かつ高度に冒される領域はヒトで最もよく発達し、遅くに髄鞘化される領域である(図4)。最も強く冒される下頭頂小葉は角回、縁上回で構成される。この領域は異種感覚連合野として概念、言語、行為の遂行や空間的認知など脳の高次機能に関わるが、角回の電気刺激で「誰かが傍にいる」「影のような人物がいる」という現象が再現性をもって確認されている(Arzy S, Seeck M, Oritique S et al:Induction of an illusory shadow person. Nature Vol.443 287 2006)。ATDの「誰かいる妄想」と角回病変の関連が示唆される。
 「物盗られ妄想」について、病的記憶障害が関与していることは確かであるが、ATDと同じく海馬領域にNFT病変が強いが新皮質が冒されない神経原線維型認知症(SD-NFT)では病的記憶障害が長く続く特徴がある。SD-NFTでは深刻味に乏しい被害妄想は起こるが、『物盗られ妄想』は稀である。これは『物盗られ妄想』の成立には海馬病変に加えて、空間認知や判断力の低下などの皮質機能の関与が必要であることを示している。池田(池田 学:アルツハイマー病における物盗られ妄想と記憶障害の関係について. 高次脳機能研究 Vol.24 147-154 2004)の画像研究では楔前部の機能低下の関与を指摘している。この領域は頭頂葉内側に位置し、この領域の障害で自分が物を置いた場所を想起するのが困難になるとされ、外側の下頭頂小葉と並んでATDで病変の及びやすい領域である。妄想は思考障害であるので概念や言語が関与するが、幻覚よりも広範な機能が関わると考えられる。妄想と名のつくものを一括りには出来ない。
 【池田研二:BPSDの神経病理. Dementia Japan Vol.28 18-27 2014】

嗅覚障害 [レビー小体型認知症]

……2014年8月12日 臭覚障害の実験
私の脳で起こったこと.jpg
 臭覚と認知症について調べていて、ピーナッツバターと定規でアルツハイマー病の早期発見をするという研究があることを初めて知った。既にこの春に 『ためしてガッテン』などで紹介していた様子。臭覚低下に左右差があり、左の方が、低下が強いという。
 ピーナッツバターを使ってやってみた。右18cm。左10cm。三叉神経を刺激しないからピーナッツバターが良いのだと書いてある。刺激臭がなければいいのかと思って、味噌でもやってみる。左右差がほとんど出ない。
 疑問は色々ある。レビー小体型の臭覚低下と同じメカニズムなのか? それとも私は、アルツハイマー病を合併しているのか? 短期記憶障害を特に感じないが、近い将来、一気に起こるのか? 私に残された時間はわずかなのか? でも、たとえ記憶障害が起こったとしても、それを補う対策を取れば、自立した生活は続けられるのではないか。記憶障害があっても、思考力や人格が変わらなければ、私は、私のままだ。
 浦上克哉教授は、アロマセラピーで臭覚を刺激することが、認知症の予防になると書いている。刺激することで臭覚は回復するとも。
 私は臭覚にも波がある。右肩下がりではない。回復したと感じる時もある。臭覚の神経もオンになったりオフになったりするのだろうか? わからないことばかり。
 【樋口直美:私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活. ブックマン社, 東京, 2015, pp187-188】

私の感想
 朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」から「嗅覚障害」に関連する記述を拾い出してみました。

3. DLB診断あるいは記憶障害出現以前からみられる症状
 「OnofrjらはDLBと診断される以前に、しばしば身体症状が認められることを報告している。彼らによれば15例の検討から、87%の患者が心気症状を呈した(Onofrj M, Bonanni L, Manzoli L et al:Cohort study on somatoform disorders in Parkinson disease and dementia with Lewy bodies. Neurology Vol.74 1598-1606 2010)。このほか消化器症状をともなう多発性の疼痛は53%、麻痺様症状は40%、感覚異常は27%にみられた。
 Fujishiroらは、記憶障害が出現する以前に見られる症状を検討した(Fujishiro H, Iseki E, Nakamura S et al:Dementia with Lewy bodies: early diagnostic challenges. Psychogeriatrics Vol.13 128-138 2013)。その結果、記憶障害出現前に便秘が76%の患者にみられ、平均9.3±13.8年記憶障害出現に先行したという。このほか、嗅覚障害(44%, 8.7±11.9年)、うつ(24%, 4.8±11.4年)、レム睡眠行動障害(66%, 4.5±10.5年)、起立性めまい(33%, 1.2±6.5年)の順であった。」(水上勝義:DLBの早期診断. Dementia Japan Vol.28 176-181 2014)


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第431回『加齢とからだ、加齢と知能─目的遂行に欠かせない作業記憶』(2014年3月12日公開)
メモ5:ワーキングメモリー(ワーキングメモリ)
 ワーキングメモリ(作業記憶・作動記憶)とは、短期記憶の概念を拡大し、課題を遂行するための処理機能の役割を含む概念です。作業中の何かを一時的に覚えておく記憶であり(例:電話をかけるために、電話帳を見て番号を覚える)、主として前頭葉の前頭前野(概ね前頭葉の前半部分)が司っています。
 『ホンマでっか!? TV』の辛口コメントで有名な澤口俊之先生は、「作業記憶は、言語理解はもとより、思考や推論、計画、決断などの多様な認知機能(高次脳機能)の最重要な基礎機能となっている。」(澤口俊之:大脳皮質─作業記憶. Clinical Neuroscience Vol.29 188-191 2011)と指摘しております。
 また、大阪大学大学院人間科学研究科の苧阪満里子教授は、ワーキングメモリについて以下のように述べております(苧阪満里子:ワーキングメモリ. こころの科学 通巻138号 47-51 2008)。
 「ワーキングメモリは目標志向的であり、課題の遂行に必要な情報を一時的に活性化状態で保持するとともに、平行して処理をおこなう機能をもつ。」
 「高齢者はある程度の年齢まで短期記憶は保持されるものの、ワーキングメモリは加齢とともに徐々に低下する。」
 「ワーキングメモリは、社会生活のなかで毎日を無事過ごすのになくてはならないシステムである。火の消し忘れによる台所の火事、運転中の携帯電話(二重課題下)等が引き起こす事故の背景には、ワーキングメモリの機能劣化が潜在しているといっても過言ではない。」
 遂行機能が低下してきますと、いったいどのような状況が生じてくるのでしょうか。住友病院副院長の宇高不可思医師(神経内科)が繁田雅弘医師(首都大学東京)、篠原幸人医師(国家公務員共済組合連合会立川病院神経内科)との鼎談のなかで、分かりやすく解説しておりますので以下にご紹介しましょう(一部改変)。
 「アルツハイマー病において日常生活で気づかされる一番重要な症状は、短期記憶の障害、記銘力の障害、エピソード記憶の障害です。同じことを何度も何度もいう、あるいは質問する、ある用件で電話をして、まったく同じ用件で翌日も同じ人に電話をする。
 記憶以外では、遂行機能の低下があります。ちょっと複雑なことができなくなる、仕事でミスが多い、あるいは今までちゃんとやれていた家事でも間違いが多くなる、料理もそうですが、一つひとつの動作はできても、計画的に材料を買って準備するという遂行機能に障害が起こる。一緒に暮らしている人には、日常生活でちょっと変だなと気づきます。
 それから、意欲の低下。だんだんものぐさになって、今まで自分でやっていたことをやらなくなる。」(繁田雅弘、篠原幸人、宇高不可思:鼎談─本邦の認知症. 成人病と生活習慣病 Vol.43 799-813 2013)

 『バナナ・レディ(前頭側頭型認知症をめぐる19のエピソード)』(Andrew Kertesz著 河村満・監訳 医学書院発行, 東京, 2010)という著書のエピソード16には、「行動を『遂行』するのに必須の脳内の要素は『ワーキングメモリ』であり、言い換えれば、適切な行動を決定するために、直前に起こったことを頭にとどめつつ過去の経験と照らし合わせる過程である。遂行機能はアルツハイマー病や脳卒中など、前頭側頭型認知症(FTD)以外にも多くの神経疾患や精神疾患で障害される。また、健常者でも加齢に伴い遂行機能(エグゼクティブ・ファンクション)は低下する。遂行機能の障害は特異性は低くても、FTDの初期にも感度が高く、最初に現れる症状となりうる。」と記載されております。
 認知症の症候学に詳しい滋賀県立成人病センター老年内科の松田実部長は、論文(松田 実:認知症の症候論. 高次脳機能研究 Vol.29 312-320 2009)において、「MMSEにおける計算の誤りは、計算そのものの誤りではなくworking memoryや注意力の障害と考えられる」と述べています。
 松田実部長の報告によりますと、初期アルツハイマー病におけるMMSEの減点項目は3単語遅延再生、見当識、計算の3項目がほとんどであり、計算の誤りは計算の途中で引く数を保持できずに誤ってしまう場合がほとんどであった(典型例:100から順に7を引く課題では、79まで正解して「9を引くんやったかな?」といった誤り)と報告しています。

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 久しぶりに日本医師会雑誌の「生涯教育」問題に挑戦してみて下さいね。

【問題2-2】嗅覚障害で正しいのはどれか。1つ選べ。
①嗅覚同定能力は50歳代から低下する。
②原因として最も多いのは頭部外傷である。
③慢性副鼻腔炎では嗅神経の変性は起こらない。
④嗅覚が低下しても味覚が変化することはない。
⑤嗅覚障害はアルツハイマー病の早期症状である

【正解】
 私は⑤を選択しました。

【解説】
 近年、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患の発症前に嗅覚障害が出現することが判明し、嗅覚検査がこれらの疾患のバイオマーカーとして用いられるようになっている。中枢性嗅覚障害では、嗅覚自体の低下と共に、その認知能力および識別能力の低下が特徴とされている。
 
嗅覚障害の原因別頻度と特徴
 表に金沢医科大学耳鼻咽喉科嗅覚外来における原因別頻度を示す。最も多いのは慢性副鼻腔炎によるものであり、アレルギー性鼻炎も含めると嗅覚障害患者の半数以上を占めている。次いで感冒罹患後、頭部顔面外傷と続くが、原因不明の嗅覚障害も少なからず存在する。

 嗅覚検査開発のために行われた過去の研究でも、65歳以上で嗅覚が有意に低下することが報告されている。したがって、嗅覚低下で問題になるのは、特定される疾患を除けば65歳以上の高齢者であるといえる。

 嗅覚障害患者が日常生活で最も困っていることは、食品の腐敗に気付かないことであり、それ以外にも、ガス漏れ、煙に気付かないなどの生活面での安全、味覚の変化による食欲の低下、食への関心の低下、調理の不具合も、半数以上の患者が日常の支障と感じている。

【三輪高喜:嗅覚障害の疫学と臨床像. 平成26年3月号・日本医師会雑誌 Vol.142 2623-2626 2014】

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 「嗅覚低下は必ずしもパーキンソン病に特異的ではなく、関連した神経変性疾患において広く観察されるとの指摘もあり、臨床的にはアルツハイマー病においても強い嗅覚低下がみられることが報告されてきた。しかし、病理学的検討からは嗅覚低下がアルツハイマー病の病理変化の程度には依存せず、むしろ随伴するLewy小体の出現に関連していることが示唆されている。臨床的にも、Lewy小体型認知症との比較においてアルツハイマー病の嗅覚低下はより軽度であることが知られている。」(武田 篤、馬場 徹:パーキンソン病における嗅覚障害と扁桃体. Clinical Neuroscience Vo.32 659-661 2014)


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第766回『軽度認知障害? それとも?─料理の味付けが変化』(2015年2月16日公開)
さて、実行機能障害(遂行機能障害)が生じてきますと、目的をもった行動や動作の遂行が困難な状態となり、料理・掃除・仕事・後片付けなどの「段取り」が悪くなります。
 八千代病院(愛知県安城市)神経内科部長の川畑信也医師が軽度アルツハイマー病患者さん72名(MMSEが20点以上に該当)で調査した結果によれば、「軽度アルツハイマー病患者さんにみられる実行機能障害」ベスト5は以下のものでした(川畑信也:物忘れ外来ハンドブック─アルツハイマー病の診断・治療・介護─ 中外医学社, 東京, 2006, pp44-46)。
 1 伝言を正確に書いて伝えられない        :74.6%
 2 余暇活動や趣味に関心がなくなってきた     :63.8%
 3 適切な交通手段をきちんととれない       :57.4%
 4 適切な品物を買って店から戻れない       :51.5%
 5 薬を自分から飲もうとしない          :50.0%
 5 以前行っていた家事をきちんとこなせなくなった :50.0%

 5の「家事」の中で、料理に関する話は、ご家族がよく訴える症状です。
 料理という実行機能は、献立を考え、必要な食材を考え買い物し、調理して味付けを吟味し盛りつけるという多くの過程を必要とします。
 川畑信也医師は、「認知症に罹患している患者さんが作る料理は、以前に比べて味が濃くなってくる、辛くなってくることが多い。これは、患者さんの味覚が鈍麻してくることと記憶障害のために不必要に調味料を加えたり煮込みすぎる傾向からと思われる。以前は多くの種類の料理ができたのにできる料理の数が減ってきたときも危険信号である。この料理の問題は比較的早期から家族が気づく行動の変化といえる。」と指摘しています。
 アルツハイマー病患者さんにおいて料理の味付けが変化する背景には、感覚器の機能低下が絡んでいる可能性もあります。

 東京大学医学部附属病院老年病科・保健健康推進本部の亀山祐美助教は、認知症患者さんにおける感覚器の機能低下について詳細な報告をしております(亀山祐美:感覚器の機能低下と認知症. 医学のあゆみ Vol.239 No.5 388-391 2011)。一部改変して以下にご紹介します。
 「高齢者では老化とともに高周波の音が聞こえにくくなり、50歳くらいからすこしずつ低下しはじめ、65歳以上では約30%が一定の聴力障害を起こしている。当科に『物忘れ精査入院』した99名の患者において、認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)の有無と難聴の有無との関連を解析した。その結果、難聴とBPSDの有無には有意な関連が認められた(BPSDありの群の43名中21名に難聴あり)。とくに物盗られ妄想との関連がみられた。このように、聴覚障害があるとBPSDなどの精神症状を生じやすい。
 視覚障害や聴覚障害は眼鏡・補聴器の装用あるいは手術による治療の可能性もあるが、加齢に伴う嗅覚障害や味覚障害には有効な治療法はなく『年を取ればあたりまえ』と放置されがちである。嗅覚障害が日常生活に与える影響はさして強くないとみなされがちである。しかし、ガス漏れや鍋をこがしても気づかないといった思わぬ事故につながることもあり、看過することはできない。最近では嗅覚障害が認知症早期のサインとして注目されている。
 嗅細胞にニオイ分子がつくと電気信号が起こり、嗅神経から一次中枢である嗅球に伝わる。嗅球で処理された情報は二次中枢である嗅皮質を経て前頭前野に達する。嗅覚に関する情報は扁桃体や海馬などの大脳辺縁系に到達し、最終的な嗅覚の認知は記憶と照合されて認識される。
 認知症患者において味覚障害を訴え拒食になるケースも見受けられ、中枢への味覚伝導の部分の問題も生じると考えられる。」
 上記の記述にありますように、嗅覚は原始的な感覚で中枢経路は他の感覚と違い視床を経由せずに大脳辺縁系に到達します。近年、嗅覚を刺激することで認知症の進行を穏やかにする、一時的に意識を晴明にすることができるという考えから食事前にアロマテラピーを行い、安全な食事介助を行う試みもなされております(正田晨夫:認知症患者の口腔ケア. 精神科 Vol.19 132-140 2011)。
 なお、嗅覚は視床を経由しない唯一の感覚であると考えられてきましたが、視床が関与しているという指摘もあります(岩田 誠、河村 満・編集:脳とアート─感覚と表現の脳科学 医学書院, 東京, 2012, pp71-72)。
 また、東京ふれあい医療生協梶原診療所在宅サポートセンター長の平原佐斗司医師は、「AD(アルツハイマー病)で、どのような感覚器の障害が起こるかは十分明らかにはなっていませんが、一般的には、視覚、ついで聴覚などの系統発生学的に新しい感覚器の機能から低下すると考えられています。」と述べたうえで、「ADでは、味覚や嗅覚、触覚などの原始的な感覚は重度になっても保たれていると推定されています。そのため重度の患者に対しても、ハーブやアロマ、タクティールなどの非薬物療法が有効だと考えられるのです。」と指摘しております(平原佐斗司編著:認知症ステージアプローチ入門─早期診断、BPSDの対応から緩和ケアまで 中央法規, 東京, 2013, p28)。

リバスチグミンとドネペジルの差異 [レビー小体型認知症]

リバスチグミンとドネペジルの差異―私のスライドより

 図表1-1「薬物に関する根拠の現状」【編/小阪憲司、著/森 悦朗:レビー小体型認知症の診断と治療─臨床医のためのオールカラー実践ガイド. harunosora, 川崎, 2014, p111】におきまして、認知機能障害に対する根拠として、DLBにおいてはドネペジルが「4(=有効:2つ以上の高品位のRCTで効果が示され、他に矛盾した知見がない)」でリバスチグミンが「2(=可能性あり:RCTの部分的・事後的解析、あるいは低品位のRCTで示唆されている)」、一方PDDではドネペジルが「2」でリバスチグミンが「4」と記載されております。
 これは不思議ですよね。病理学的にも症候学的にも共通した病態であるにも関わらず治療効果に差異が出てくるということは・・。
 だとすれば、ドネペジルとリバスチグミンの作用機序の違いが影響しているとしか考えられません。
 発売された当初は、ドネペジルとリバスチグミンとガランタミンの違いについて医学雑誌、講演会でよく話題として提供されました。
 最近では、3者の違いについて触れられることはほとんど無くなりました。それは、細かな違いこそあれ大きな違いは無いだろう・・というコンセンサスが得られてきたからではないでしょうか。
 しかし、薬剤過敏の目立つレビー小体型認知症(DLB)の治療におきましては、その“細かな違い”が病状に大きく影響しうるかも知れないということを忘れてはいけないのかも知れません
 そこで、DLBにおいて比較的治療効果が高いのではないかと指摘されてきたリバスチグミンと、従来からの治療薬で現在DLBに対して唯一保険適用(http://kaigo123.net/rebi-chiryo/)を有しているアリセプトの差異について考察するため、私のスライド集に忘備録としてしまい込んであった文献を抜き出してみました。
 この中に、何らかのヒントが隠されているとは思うのですが、現状ではまだ推測の域を出ておりません。


AChE3剤の作用機序の違い.jpg
 【高齢者のアルツハイマー型認知症治療における課題と展望. Geriat Med Vol.49 815-824 2011】

3剤の違い1.jpg
【池田篤平、山田正仁:アルツハイマー病新薬の使い分け方. 医学のあゆみ Vol.239 No.5 407-412 2011】
 

 アルツハイマー病、とくにBuChEによるアセチルコリン分解が主体となった進行例でもリバスチグミンは有用である可能性が期待されている。
 【岩手医科大学神経内科高橋智准教授:抗ChE-I剤とメマンチンの現状. Modern Physician Vol.30 1139-1143 2010】



 AChEは主に神経細胞に発現するが、BuChEは神経細胞のほか、グリア細胞にも発現するのが特徴である。ADでは進行に伴って、神経細胞の変性・脱落が起こりAChE活性は低下するが、一方でグリア細胞は増生し、BuChE活性が上昇する。そこにリバスチグミンのBuChE阻害作用が働くことで、シナプス間隙のACh濃度を上昇させることができる。
 【下濱 俊:Geriat Med Vol.49 819 2011】



 ドネペジル・ガランタミンで消化器症状が出現したら、消化器症状の頻度が少ないリバスチグミン・パッチに変更を検討できる。
 【繁田雅弘:Medical Practice Vol.29 799-802 2012】



 リバスチグミンはAChEといったん結合すると分離するまで長時間かかるため、偽非可逆性ChE阻害薬と言われ、最高血中濃度までの時間は0.5~2時間と短いが10時間程度の持続性ChE阻害作用を有する
 【和田健二、中島健二:Alzheimer病の治療薬-総論. 神経内科 Vol.76 113-119 2012】



 Bullockらは中等度AD患者994名についてプラセボ対照試験を行い,リバスチグミンとドネペジル塩酸塩の効果を比較したところ,NPI-10の下位項目にはいずれも有意差は認められなかった【Bullock R, et al. :Rivastigmine and donepezil treatment in moderate to moderately-severe Alzheimer’s disease over a 2-year period. Curr Med Res Opin. Vol.21 1317-1327 2005】
しかし,患者を75歳末満と75歳以上の2群に分けて再検討したところ,75歳末満の群では,不安,無為,脱抑制,睡眠,食欲,妄想の下位項目について,リバスチグミンがドネペジル塩酸塩よりも有意な効果が認められた【Bullock R, et al. :Effect of age on response to rivastigmine or donepezil in patients with Alzheimer’s disease. Curr Med Res Opin. Vol.22 483-494 2006】
 【朝田 隆、木之下 徹:『認知症の薬物療法』 新興医学出版社 2011 p38】




 Chee-Iのうちrivastigmineは、DLBにおける不安や意欲低下に対して効果的だったという報告(McKeith I et al:Efficacy of rivastigmine in dementia with Lewy bodies: a randomised, double-blind, placebo-controlled international study. Lancet Vol.356 2031-2036 2000)があるため、本邦でも使用経験の蓄積が待たれる。
 【熊谷 亮、一宮洋介、新井平伊:認知症の診断と治療における精神科的アプローチの特性. Dementia Japan Vol.26 164-170 2012】



順天堂大学大学院精神行動科学・新井平伊教授
 「海外の報告では、ドネペジル効果不十分例におけるリバスチグミンパッチへの反応率が約70%であった(Figiel GS:Prim Care Companion J Clin Psychiatry. Vol.10 291-298 2008)とされているため、効果不十分であった患者への切り替え投与も今後検討すべきでしょう。」
 【認知症治療における新規薬剤への期待. 2011年11月10日付日経メディカル第528号 113-116】



 G1-subtypeのAChEは海馬、扁桃体などのAD病変が強く認められる部位に強く発現し、リバスチグミンは他のAChE阻害薬に比べて、G1-subtypeのAChEへの選択性が高い。ADCS-ADL(Alzheimer’s Disease Cooperative Study Activities of Daily Living)スコアを用いた日常生活活動能力では、「入浴」、「買い物」、「何かを書き留める」、「最近の出来事を話す」などの点で有意な改善が報告されている(Alva G et al:Efficacy of rivastigmine transdermal patch on activities of daily living:item responder analyses. Int J Geriatr Psychiatry Vol.26 356-363 2011)。
 【門司 晃:リバスチグミンの臨床. MEDICINAL Vol.2 56-62 2012】



 DLBの治療は容易ではありません。薬物療法として、McKeithらは、AD治療薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬のなかでは、リバスチグミンがより効果的と報告(McKeith IG et al:Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies:third report of the DLB consortium. Neurology Vol.65 1863-1872 2005)しています。レビー小体型認知症を命名したMckeithらは、レビー小体型認知症では、リバスチグミン投与群はプラセボ群に比べてアパシー、不安、妄想、幻視の有意な改善がみられ、レビー小体型認知症のBPSDにおけるリバスチグミンの有用性を報告(McKeith IG et al:Efficacy of rivastigmine in dementia with Lewy bodies:a randomized, double-blind, placebo-controlled international study. Lancet Vol.356 2031-2036 2000)しています。
 【木村武実:BPSD─症例から学ぶ治療戦略 フジメディカル出版, 大阪, 2012, pp29,107】



 著者は、保険適応外であるが、パーキンソン病に伴う認知症(Parkinson’s disease with dementia;PDD)あるいはレビー小体型認知症の患者さんに、しばしばイクセロン・リバスタッチを使用している。幻覚などの精神症状が著しく改善・消失する事例が少なくない
 【川畑信也:臨床医へ贈る抗認知症薬・向精神薬の使い方 中外医学社, 東京, 2012, pp40-41】



リバスチグミン18mg=ドネペジル9.4mg
 リバスチグミンは、最大容量18mgがドネペジル9.4mgに相当し(Bullock R, Touchon J, Bergman H et al:Rivastigmine and donepezil treatment in moderate to moderately-severe Alzheimer‘s disease over a 2-year period. Curr Med Res Opin 2005 Vol.21 1317-1327)、さらにパッチ剤となったため、高容量の投与も可能である。
 ドネペジルの項でも述べたが、実際、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は高容量必要であることが示唆されており、その点でリバスチグミンパッチは有効である。
 【工藤 喬、武田雅俊:認知症の新しい薬物療法. 精神科 Vol.22 418-423 2013】



 進行したADでは、BuChEを抑制する方がより効果がある可能性がある。
Rainaらのメタ解析では9試験(2,164症例)が検討され、認知機能や全般的臨床症状で有意な改善を認めている【Raina P et al:Effectiveness of cholinesterase inhibitors and memantine for treating dementia:evidence review for a clinical practice guideline. Ann Intern Med Vol.148 379-397 2008】。
 しかし、高度ADに対する効果についてのメタ解析では、2試験のみが評価対象となり、その効果は限定的であると報告【Birks J et al:Rivastigmine for Alzheimer’s disease. Cochrane Detabase Syst Rev, 2009;CD001191】、さらなる検討が必要である。
【浜口 毅、山田正仁:認知症の薬物療法─認知症の中核症状に着目した治療薬の使用方法と注意点. Geriat Med Vol.51 39-45 2013】



リバスチグミン─BuChを介する効果か?
 BuChは、記憶を司る海馬や喜怒哀楽に関与する扁桃体に多く発現するため、易怒性、易刺激性、無気力(アパシー)などに効果的である。
 【吉岩あおい:認知症治療薬の特性─認知症の人のために、介護者の負担軽減に根ざした治療─. 第14回日本認知症ケア学会プログラム・抄録集, pp30-31 2013=特別講演2】



Six-month, placebo-controlled randomized controlled trials (RCTs) of the cholinesterase inhibitor rivastigmine have indicated modest but significant benefits in cognition, function, global outcome and neuropsychiatric symptoms in both PDD and DLB. (コリンエステラーゼ阻害剤リバスチグミンの6カ月のプラセボ対照無作為化試験では、認知、機能、全般的な臨床アウトカム、神経精神徴候においてPDDとDLBのいずれにおいても大きくはないものの有意な効果が示されている。)
 他のコリンエステラーゼ阻害剤のRCTによるエビデンスについては結論が得られていない。最近のPDD/DLB患者を対象としたメマンチンのRCTでは、全般的な臨床アウトカム、なかでも睡眠障害に対して明確な有効性が得られている。抗精神病薬の感受性リスクが高いので、抗精神病薬の投与は避けるべきである。PDD/DLB患者のかなりの割合でレボドパに対して反応するが、特に幻視などの神経精神徴候を増悪させる傾向があるため、抗パーキンソン病薬投与の際にはケアの必要がある(Ballard C, Kahn Z, Corbett A:Treatment of Dementia with Lewy Bodies and Parkinson's Disease Dementia. Drugs Aging Vol.28 769-777 2011)。
 【山本泰司:最近のジャーナルから. 認知症の最新医療 Vol.3 102 2013】




幻視─フレンチトースト [レビー小体型認知症]

朝日新聞アスパラクラブ「ひょっとして認知症-PartⅠ」第187回『NHK番組「認知症と向き合う」を観て(その2) 62歳のある認知症』(2011年9月13日公開)
 9月7日に紹介されたのは62歳の金子智洋さんと、62歳の加藤千賀子さんです。たまたまなのかどうか分かりませんが、今回の「シリーズ認知症と向き合う」で登場した方は皆さん62歳でしたね。
 金子智洋さんは、レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)と診断されています。シリーズ第20回『幻視が特徴の認知症とは』にて詳しくご紹介した疾患ですね。
 幻視のある患者さんが幻視に関する自分の考えを述べているシーンが非常に印象的です。金子さんは、「おふくろと節子がつるんで、『それは模様なんだから』というふうに援助してくれようとしているのは分かるんですけども、『こうだ!』ということを押し付けちゃう部分が・・(僕の方がね)。悪いなとは思うんだけれども、でもやっぱりそうはいうものの、このお皿のなかの虫は絶対許さないなと・・」と心境を語ります。
 妻の節子さんは、智洋さんがパンくずを虫と見間違えないように「フレンチトースト」にしました。フレンチトーストが功を奏して虫は随分と出にくくなったようです。
 
 加藤千賀子さんは、前頭側頭型認知症(FTD)と診断されています。シリーズ第22回『ピック病をご存じですか?』にて詳しくご紹介しておりますね。
 当初、軽い記憶障害と「盗聴されている」という妄想がみられ物忘れ外来を受診したところ、「神経精神専門医に行ったほうが良い」と言われます。
 そこで「統合失調症」と診断され、精神病院の閉鎖病棟に入院となり大量の薬が処方されます。
 統合失調症に関しては、シリーズ第173回『妄想性障害(その1)』にて少し触れております。
 夫である勝雄さんが面会に行くと、千賀子さんから「父さん、私がここにいたら病気になっちゃうよ」と言われてしまいます。詳しい経緯は放送では紹介されておりませんが、その後医療機関を転々とし、5人目の医師によってようやくFTDという診断にたどり着きます。
 その後、千賀子さんはデイケアに通うようになりました。当初は集団生活に馴染めずに他の利用者とのトラブルが絶えない状況だったそうです。しかし、施設の横溝和子看護師長が千賀子さんの「文字の美しさ」に気づきます。
 千賀子さんがかつて書道の先生をしていたことを知り、デイケアの誕生会で使う看板を書いてもらうことになります。
 できることが増えて行くにつれて、千賀子さんの症状は次第に落ちついてきます。国立長寿医療研究センター内科総合診療部の遠藤英俊医師は、書道により本人の自信が回復したことが症状の改善に繋がったと分析します。


盗聴されている
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/13 11:19
 「盗聴されている」という訴えがあった場合には、私は先ずはシリーズ173回『妄想性障害(その1)-病的な妄想いろいろ』にてご紹介した「妄想性障害」を診断する際の念頭におくと思います。
 また、年齢が高齢でしたらレビー小体型認知症(DLB)も鑑別診断の中には入れる必要があると思います。

 「軽い記憶障害 , 盗聴されている」→「前頭側頭型認知症(FTD)」は結びつきにくいですね。誤診され5人目の医師でようやく診断がついたのも頷けます。
 しかしながら誤診は誤診。真摯に結果を受けとめる必要があるのでしょうね。

 2010年6月に開催された第25回日本老年精神医学会の抄録に記載されていますように、新潟医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健学専攻言語聴覚学分野の今村徹教授が、「前頭側頭型認知症(Frontotemporal dementia;FTD)では妄想の頻度は低く、幻覚は極めて稀であるとされている。今回我々は被害妄想と幻聴を呈したFTD の一例を報告する。」(http://184.73.219.23/rounen-s/J-senyou/D_gakkai_koenkai/25th/koutou2-1.htm)という症例を報告しています。
 上記の報告によると、73歳女性において実際に認められた症状は、3軒隣の住人に盗聴器を仕掛けられているという被害妄想と、「夜間その家からカラオケの声が聞こえてくる」、「自分の話したことと同じことが聞こえる」という幻聴が初発症状に含まれておりました(今村 徹 他:幻覚、妄想を初発症状に含み前頭側頭型認知症(Frontotemporal dementia;FTD)に一致する臨床症候群を呈した一例. 老年精神医学 Vol.22 595-605 2011)。


本人には実体験
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/13 12:42
 松本診療所ものわすれクリニックの松本一生院長(大阪人間科学大学教授)は、「妄想」に関して以下のようなコメントを述べられています。
 「医学用語として使われる妄想についても認知症の本人にしてみれば、今まさにそのようなことを実体験として感じているのである。たとえその体験が真実ではなく、その人の病的体験であろうとも、本人からすると『今、まさにそのように体験している』と感じているのである。それゆえ周囲の者がその状況だけを見て、『この人は妄想を持っている』と一言で片づけるのではなく、病気のためにその人が体験している世界がどのようなものなのかを考え、そのような世界にいる人ができる限り恐怖や恐れなく過ごせる状況を作ろうと心掛けることが大切である。」(松本一生:認知症の人と家族を支えるということ. 現代のエスプリ通巻507号 ぎょうせい発行, 東京, 2009, pp8-9)


実体験(架空)を尊重する
投稿者:ムラタケ 投稿日時:11/09/13 19:41
「 本人には実体験」という説明を聞いて、そういうことなのだと、納得しました。おかしいとか、間違っていると言われた本人が、怒ったり不信を募らせるのは当然のこと。今は亡き認知症の義父に、厳しい批判の言葉を浴びせたこと、反省しています。ごめんなさい。

ムラタケさんへ
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/13 20:38
 あまり思い出したくない過去を振り返らせてしまったみたいですね。
 認知症ケアへの理解が深まってきたのは、まだここ10年程度のことです。ずっと手探りの状況でした。
 その時代に、「怒った」ことは致し方ないことです。
 私などは、実の父を「叱った」のはまだ昨年のことです。


今日の再放送
投稿者:まるタン 投稿日時:11/09/13 20:00
 足立昭一さんは何度か観ております。
 今日は今まで観たよりも表情が豊かでした。周辺環境がとても良いのでしょう。関わりの工夫と努力のたまものですね。

 明日は義母が入院している病院に嫁二人で行きます。
 どのように話すか、義母の話をどのように聴くか、複数の目で体感してきます。


Re:今日の再放送
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/13 20:53
まるタンさんへ

> 今日は今まで観たよりも表情が豊かでした。

 そうですね。
 野菜を売るときの足立昭一さん、本当に活き活きしていましたね。

> 明日は義母が入院している病院に嫁二人で行きます。

 明日の原稿に登場すると思いますが、「今やってみたいこと」を率直にお義母さんに聞いてみることは良いかもしれませんよ。
 本人の気持ちを引き出すには良い質問だと感じています。詳細は、木曜の再放送をお楽しみに。

体感幻覚 [レビー小体型認知症]

体感幻覚
 

朝日新聞アスパラクラブ「ひょっとして認知症-PartⅠ」第189回『奇異な症状さまざま(その1)―「電気のコード」がヘビに見える』(2011年9月15日公開)
 『心はどこまで脳なんだろうか』(兼本浩祐:医学書院, 東京, 2011)の第7章「同じものが同じであることの奇跡」の冒頭には、以下のような文章があります(一部改変)。
 「ツバメの雛が巣から一度落ちてしまうと、同じ雛を元の巣に戻しても親鳥はもうそれを自分の子どもとは認識できずにもう一度巣から追い出したりします。自分の子どものように最大の愛着の対象になるものであっても、巣から落ちる前の雛と巣から落ちた後の雛が全く別の対象として認識されてしまうといった事態は野生の動物の場合には必ずしも稀ではありません。」

 シリーズ第150回『出そろった4種類の認知症治療薬(4)-珍しい副作用のケースに遭遇』(https://aspara.asahi.com/blog/hyottoshite/entry/SmQmhARVBq)のコメント欄にて、レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)では、「重複記憶錯誤」、「幻の同居人」とか「カプグラ症候群(Capgras syndrome)」などの奇異な症状も時折認められます。これらの症状に関しては、後日別の機会に詳しく説明致しますと述べました。今回はこの辺りの話をご紹介したいと思います。

 その前に先ずは、シリーズ第20回『幻視が特徴の認知症とは』(https://aspara.asahi.com/blog/hyottoshite/entry/kUNWJ079qG)を読み返して、DLBの概略に関してざっと復習して頂けると以下の記述がより興味深く感じられるだろうと思います。

 DLBにおける典型的な幻視は、人物や小動物などが家の中に居るというものです。幻視以外にも、電気のコードがヘビに見えたり(錯視)、天井や壁がゆがんで見えたり(変形視)します。そして、幻視に反応した患者さんが床や壁を触って歩く姿もしばしば見られます。
 私の亡父も、「パソコンのモニタの中に石塔(石像)が積み上げられていく」という幻視を訴え、私に「取ってくれ」と訴えました。そして、私が「見えないので取れない」と返事すると、モニタの中に手を突っ込もうとしていました。詳細は、シリーズ第14回(https://aspara.asahi.com/blog/hyottoshite/entry/xLuyvV6JBa)及びシリーズ第157回コメント欄(https://aspara.asahi.com/blog/hyottoshite/entry/r7b57yxe6H)にてご紹介しましたね。
 DLBの幻視では、「せん妄と異なり、繰り返し何度も現れ、出現している際にも明らかな意識障害を伴わず、意識の鮮明な日中にもその詳細を家族や医師に説明することができる」(東晋二,井関栄三:妄想性障害と若年性認知症をどう診分けるか-レビー小体病を中心に-. 精神科治療学 Vol.25 1305-1309 2010)のが特徴です。
 この「石塔(石像)が積み上げられていく」という幻視は、私が現在診療中のアルツハイマー病患者さん(80代前半・男性)も訴えており、父の姿と重ね合わせながら診療しています。
 古来から日本では万物に神が宿ると信じられてきました。太陽や山河と同じように、石や岩も神が宿る場所として崇拝されてきたのです。日本人は「石」に対して独特の崇高な感覚を抱くためこのような幻視が出現しやすいのかも知れませんね。

幻視が訴えるものは
投稿者:ムラタケ 投稿日時:11/09/15 21:51
 素朴な疑問です。 ①食パンの屑が虫に見えるとか、電気コードが蛇に見えるというのは、患者でなくても、状況や心理状態次第で、見間違うことがあるのと、似通っているように思えますが、
 ②存在しない人物や小動物が家の中に居る、というのは全く言葉通りの幻視だと思えます。
 また、③パソコンのモニタの中に石塔(石像)が積み上げられていく、というのは②と同じ全くの幻視とも思えますが、先生が触れておられるように、心の中にある何かが、象徴的に見えているのかな、と想像しました。
 そこで例えば、②については、人物が誰かとか、どういう動物か、どういう関わりがあるのか、といったことを聞いてみることは、治療に関係がない無意味あるいは有害なことなのでしょうか。
 ③については、それを取らなかったら、どういうことになってしまうのか、と聞いてみることも同様です。
 幻視は本人の実体験と考えれば、全体としてどういう体験のなかで、それが見えているのか、もっと詳しく説明したいことが有るのではないだろうか、と気になりました。本旨からずれた疑問でしたら、ごめんなさい。


Re:幻視が訴えるものは
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/16 06:39
ムラタケさんへ
 コメント拝見致しました。

> 食パンの屑が虫に見えるとか、電気コードが蛇に見えるというのは、患者でなくても、状況や心理状態次第で、見間違うことがあるのと、似通っているように思えますが、

 確かにそういったことがあるかも知れませんね。私も、愛犬と散歩しているとよく大嫌いな「ヘビ」に遭遇します(幻視です)。愛犬をヘビから守りたいという心理的要因が働くのでしょうね。

> ②については、人物が誰かとか、どういう動物

 動物に関しては、小動物が多いです。
 人物に関しては、多くの場合が、「子ども」あるいは「亡くなっているはずの母親」です。「過去への遊出」ですね。一番「大切な人」が見えることが多いようですね。

> 先生が触れておられるように、心の中にある何か

 私の父の場合には、父の体力落ちてきたときに、私が何かの機会に「アンコール・ワット」の話をしたことがあったようで、父はパソコンで「アンコール・ワット」について調べていたようで、どうもそのこととパソコンの中の石塔がリンクしているような様子でした。


朝日新聞アスパラクラブ「ひょっとして認知症-PartⅠ」第190回『奇異な症状さまざま(その2)―叱責する妻や子どもが別人に』(2011年9月16日公開)
 レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)では、「幻視以外の幻覚として幻聴や体感幻覚が出現することもあるが、頻度は高くない」ことが報告されています(Iseki E:Psychiatric symptoms typical of patients with dementia with Lewy bodies. Acta Neuropsychiatr Vol.14 237-241 2002)。
 「幻聴」は、統合失調症において有名な症状ですね。統合失調症では、幻聴が多くみられますが幻視は稀です。いずれにしても、幻聴を認めるから統合失調症であると短絡的に判断をしてはいけないわけです。
 では「体感幻覚」ってどんな症状でしょうか。具体例を挙げて説明しましょう。「頭・胸・肩に虫がたまっている」とか「頭から虫が流れる」などと訴え、「むずむず足症候群」の様相を呈したりします。むずむず足症候群だと思ってそのまま経過観察していたら、実はレビー小体型認知症だったということもありますから診断面において要注意ですね。

 シリーズ第20回において、夜間睡眠中に叫んだり大きな声で寝言を繰り返す症状がレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)を発症する数年前から予兆として認められるケースもあり注意する必要があると説明しました。私自身もかなり寝言が激しいようですから、「ひょっとして前兆?」と少々心配しております。

 メディカルケアコート・クリニック(横浜市青葉区)の小阪憲司院長(横浜市立大学名誉教授)は、「認知症は治らない疾患と思われがちだが、DLBは早期に発見して適切に治療すれば、長期にわたって症状をコントロールできる」、「DLBのパーキンソン症状は、動作緩慢や筋肉のこわばり、小さい歩幅をきっかけに発見されることが多く、『手の震え』は比較的少ない」(日経メディカル 2011年8月号 28-29)とその特徴について言及しています。

 シリーズ第35回『「嫁が盗った!」「どなたさんでしたっけねえ?」(その1)』(https://aspara.asahi.com/blog/hyottoshite/entry/9oBLU0L6CR)においては、「人物誤認」の話題に触れました。今回のテーマと関連が深い部分を再掲しますね。
 介護者が大きなショックを受けることとして、物盗られ妄想で自分が犯人扱いされることと、人物誤認、弄便(ろうべん)があります。
 何十年も連れ添ったのに、「どなたさんでしたっけねえ?」と言われるショックはたいへん大きなものです。家族の誤認は、レビー小体型認知症で最も多いことが指摘されています。特に、怒った後で「人物誤認」は起こりやすいことが指摘されています。認知症の症候学に詳しい滋賀県立成人病センター老年内科の松田実部長は、論文(松田実:認知症の症候論. 高次脳機能研究 Vol.29 312-320 2009)において、「自分を注意叱責する配偶者や息子のみが別人になる例がある」(http://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/29/3/312/_pdf/-char/ja/" target="_blank">http://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/29/3/312/_pdf/-char/ja/)ことを紹介し、患者さんに、怒られている相手を家族以外の別人にしたいという心理的機序が働き、誤認が起きやすくなるのではないかと推察しています。そしてこの場合は、誤認の対象者が対応を変えるだけで症状は軽減することが多いと松田実部長は指摘しています。

叱られることは否定されること
投稿者:ムラタケ 投稿日時:11/09/16 12:00
 「叱責する妻や子どもが別人に」を聞いて、過去に経験した疑問の答えが解りました。
 交通事故から寝たきり、そして認知症になった義母が、月に一度程度しか見舞いに行かない私を、名指しで呼ぶ一方、介護に携わる実子たちを「どなたさんですか」と言って、嘆かれていたのです。
 当時の実子たちの結論は、よく叱られているから、わざと知らないふりをしているのだろう、ということでした。


Re:叱られることは否定されること
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/16 12:28
ムラタケさんへ
 実体験をで経験されていたようですね。
 認知症の人の心の中は、複雑な想いで交錯しているんですよね。


人物誤認から離婚!?
投稿者:音とリズム 投稿日時:11/09/16 12:30
 人物誤認に触れてあったので、これを書いています。
 昨日、CNNという放送局のニュースを観ていたら「こんな失言があった」と報道。その報道とは--キリスト教徒のためのテレビ局の番組で、視聴者が、「友人の妻はアルツハイマー病になり、夫を夫と認識できなくなり、それを嘆き、友人は他の女性と交際を始めた」と発言。その発言に対して、番組の創始者ロバートソン氏がこのように述べたのです。「友達にこう伝えたい。冷たいと思われるかもしれないが、あなたの奥さんはあなたの知っている奥さんではもうないのだから、離婚して初めからやり直しなさい。でも、ちゃんと奥さんの身の回りの世話ができる人をつける事を忘れないように。」

 「他の女性との交際をやめて、アルツハイマー病の妻の支えになって!」と言うべきなのに、キリスト教の指導者のような人が、怒り、悲しくなる発言ですよね。

 もちろんこれは倫理に反する失言としてCNNで紹介されていました。


Re:失言
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/16 17:01
音とリズムさんへ
 「失言」と言うよりも、ドライな割り切りができる方なのかな・・って感じました。
 ですから、失言ではなく、本人としては、率直な感情を述べたのではないでしょうか。
 ご本人(ロバートソン氏)は、謝罪されていないのではないですか?


他の女性との交際をやめてアルツハイマー病の妻の支えになって!
投稿者:梨木 投稿日時:11/09/16 18:01
 コメントと言うより問題提起です。
 「他の女性との交際」が、競馬・読書会・ダンスクラブなどだったらどうですか。
 やめないことで元気をもらって、病気の妻を支え続けていられるのかもしれません。

 「離婚して初めからやりなおしなさい」は確かに失言ですね。
 関わっている全員の尊厳を傷つけていると感じます。
 女性との交際がセクシャルなものも含んでいるのか、その交際で妻の介護がなおざりになっているのか、全てわからないなかで、「それでも良いんじゃないの」と思っているキリスト信者の私がいます。

 疲れた心には暖かい笑顔が勇気をそそいでくれるかも…encourageという言葉が大好きです。


ドライな割り切り
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/16 19:01
梨木さんへ
 私が「失言ではなく・・」と直感的に感じるのは、おそらく、欧米人特有のドライな思想が絡んでいるのではないかと思うからです。

 シリーズ第18回&32回で紹介しましたように、日本と欧米のアルツハイマー病終末期への対応はかなり異なります。その点に関して私は以下のように述べておりますね。
 「日本では、経管栄養はごくあたり前に実施されています。しかし欧米では、口から食べられなくなった高齢者に対して、経管栄養で延命させることは少ないのが現状です。特にスウェーデンとオーストラリアでは、経管栄養はほとんど行われていない状況です。
 欧米と日本における終末期の対応の違いには、古代ギリシア人やローマ人の思想も絡んでいるようです。『ただ生きるだけが重要なことでなく、よく生きることがより大切だと考え、この世が苦痛に満ちたものならこの世から去ったほうがましだ』(日医雑誌 Vol.126 833-845 2001)という思想的背景です。」

>  「離婚して初めからやりなおしなさい」は確かに失言ですね。

 もしかすると、ロバートソン氏の真意は、「離婚して、(もう一度奥さんと結婚し)初めからやりなおしなさい」という示唆的発言だったのでは・・。

お詫び:タイトル字数オーバーで引用マークが入りませんでした。
投稿者:梨木 投稿日時:11/09/16 19:31
 すみません。上記の理由で論旨がわかりにくくなっていると思います。
一言でいうと、大変な介護(または困難)を担うため、ある共有しあえる楽しみを支えにしている人を、私達が非難できるのだろうかという問い。そういう生き方は好きじゃない、というのは自由です。


本日は返信が遅くなります。
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/17 06:00
 本日は、日本老年医学会・東海地方支部のシンポジウム『認知症の終末期、胃瘻をどうする?』(http://www.kktcs.co.jp/jgsmember/secure/chapter/detail.aspx?target=4)が開催されます。私は最初から最後まで聴いてくるつもりですので、帰りが遅くなります。
 この医学会、聴取も可能だと思いますので、興味があって是非聴きたいという方は、事前に学会事務局にご確認下さい。

 シリーズ第172回『介護者にアンケート実施!』にてご紹介した調査結果も報告します。学会での初公開となります。
 外来通院中という早い段階での終末期医療に対する啓蒙という今回の取り組みは、事前指示書の普及が進まない、間際になってどうしよう・どうしようと悩む日本の終末期医療の現状を一歩でも二歩でも前進させる取り組みになるものと私は考えております。
 この調査結果、論文投稿しておりましたが、昨晩「採択通知」が届きましたことをご報告致します。


論議を呼ぶ発言2(私は失言だと思う)
投稿者:音とリズム 投稿日時:11/09/17 05:38
 この相談者の内容に一つ重要な事をカッコで付け加えるとこうです。(注:私が最初に観たCNNで報道されなかった)

 「友人の妻はアルツハイマー病になり、夫を夫と認識できなくなり、(妻をそんな病気で苦しませる神を腹立たしく思い)、それを嘆き、友人は他の女性と交際を始めた。」

 それに、ロバートソン氏がどう答えたかは、前に書き込みましたが、その続きがまだあり、ロバートソン氏の発言に対し、もう一人の番組のホストが、「でも、それは、死ぬ時まで、よい時も悪い時も一緒に添い遂げるという結婚の誓いに反するのじゃないのかな?」という問いに、ロバートソン氏は、「アルツハイマー病は、一種の死に値するから、この場合離婚は正当だ。」と締めくくりました。

 私が思うには、キリスト教信者は「神を貴び」、「浮気は罪」であり、ロバートソン氏の個人の解釈でADは「死」という観点から、離婚して他の女性と第二の人生を、とアドバイスしたのでしょうね。勿論本人真面目に答えてます。他社の番組からの問い合わせには、今のとこのノーコメントのようです。

 Googleなどで、「700 club host advises man to divorce his wife suffering from Alzheimer」で調べるとたくさん情報がでてくると思います。

注:私の日本語が今ひとつ怪しげなところ、ご理解下さい。


Re:論議を呼ぶ発言2
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/09/17 06:26
音とリズムさんへ
 詳しいご報告ありがとうございました。
 発言の前後関係・背景なども分かり、理解が深まりました。

 やはり「失言」ではなく、ロバートソン氏は確信しているのだと感じます。
 それは、ロバートソン氏の「アルツハイマー病は、一種の死に値するから、この場合離婚は正当だ。」という発言に表れています。

 ただ、確信しているのだとしても、「アルツハイマー病は、一種の死に値する」という表現は訂正・謝罪して欲しいです。

「首下がり症候群」 「Pisa症候群」 [レビー小体型認知症]

「首下がり症候群」 「Pisa症候群」
キャプチャ.JPG
 レビー小体型認知症(DLB)では、Pisa症候群を呈する場合が多いのではないかという指摘もされています。
 

朝日新聞アスパラクラブ「ひょっとして認知症-PartⅠ」第150回『出そろった4種類の認知症治療薬(4) 珍しい副作用のケースに遭遇』(2011年8月6日公開)
 私が最近経験した極めて稀な副作用の一例をご紹介しましょう(以下、個人情報の特定を防ぐために事実関係に若干の改変を加えています)。
 患者さんは、80代後半の女性です。
【既往歴】
 高血圧症にて月1回、近くの病院で投薬加療中。
【主訴】
 物忘れ
【認知機能検査】
 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R):26/30
 リバーミード行動記憶検査(日本版/RBMT)
  標準プロフィール点(24点満点):6/24
  スクリーニング点(12点満点):1/12
 ※アルツハイマー病では、標準プロフィール点が5点以下、スクリーニング点が1点以下まで低下することが多いです。

 記憶障害以外に、息子がもう一人家の中にいるような誤認や昨年死んだ犬が今も生きているような言動も確認されましたので、軽度アルツハイマー型認知症と診断し、2010年11月よりドネペジル(商品名:アリセプト)を開始しました。
 2011年6月の診察の際にご家族から、「この2~3か月ほど、首の前屈が目立ってきました」という訴えがあり、「ひょっとして副作用?」と疑い、ドネペジルを中止してみることにしました。
 と言いますのは、非常に稀な副作用ですが、「首下がり」に関する文献をごく最近、医学書店で立ち読みした記憶がかすかにあり、頸部前屈(首下がり症候群)という珍しい副作用をふと思い出したのです。
 私は物忘れがかなり多い方です。特に楽しかった飲み会におけるある時点以降の記憶はほとんど飛んでしまう方です。もし私に「タイムマシンのような記憶力」(メモ参照)があったら記載されていた雑誌を思い起こしてすぐに調べられるのにと残念に思いました。2011年春先の「神経内科」雑誌だったようにおぼろげには記憶していましたので、榊原白鳳病院神経内科医師に相談しました。するとすぐに掲載雑誌を持ってきてくれました。

メモ:タイムマシンのような記憶力
 ソニー・コンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャーの茂木健一郎博士が書かれた著書には、「超記憶症候群」のリック・バロンさんの詳細が紹介されています(奇跡の脳の物語-キング・オブ・サヴァンと驚異の復活脳. 廣済堂新書, 東京, 2011, pp99-117)。
 リック・バロンさんは、世界でたった四人しかいないとされる超記憶症候群の一人だそうです。
 著書によれば、超記憶症候群とは、「通常、時間ととともに薄れてゆく幼い頃に体験した出来事などを、細部に至るまですべて正確に覚えている能力」と言われています。
 リックは、「十三歳から現在にいたるまで、およそ四十年以上にわたって、自分に起きた出来事を正確に記憶している」そうです。

 皆さん、リックの家にないものって分かりますか?

 「リックの家には、カレンダーも、電話帳も本もメモ用紙もない」そうです。一度見たものはすべて覚えてしまうため、そのような類のものは必要ないようです。
 メモ魔の私にとっては、羨ましい限りの才能です。毎晩意識が遠のくまで深酒をして、おそらく海馬が萎縮して記憶力が低下している私にとっては・・。


重複記憶錯誤
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/08/06 12:40
 このケースの診断は、「軽度アルツハイマー型認知症」と記載しておりますが、実は、レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)も疑わしい状況です。
 DLBの概略は、シリーズ第20回『幻視が特徴の認知症とは』にて復習して下さいね。
 さて本例のどこが「DLBらしさ」かというと、「息子がもう一人家の中にいるような誤認」という部分です。この症状は、専門的には「重複記憶錯誤」と呼ばれます。

 DLBでは他にも、「幻の同居人」とか「カプグラ症候群(Capgras syndrome)」などの奇異な症状も時折認められます。これらの症状に関しては、後日また別の機会に詳しく説明致します。


超記憶症候群
投稿者:シャトー 投稿日時:11/08/06 18:17
 稗田阿礼もそうだったのでしょうか。


Re:超記憶症候群
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/08/07 05:13
シャトーさんへ
 かなり古い時代の方ですから、詳細な記録は残っていないのでは・・。
 まともな回答になっていなくて申し訳ないです。


認知症の治療に疎い私に教えて下さい
投稿者:音とリズム 投稿日時:11/08/07 03:46
 この方の認知症治療の目標は何になるのですか? 治療薬によって、正しい記憶をよみがえらせる事? それともそれ以上の進行を阻止する事? 自分にあった治療薬を探すのも大変ですが、治療薬を用いると家族が決断する時も大変ですよね。

 私もメモ魔ですが、メモするの大好き。メモするのは、自分の記憶が頼りにならないからですが、メモする過程に新たな学習の喜びがあります。


認知症治療の目標
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/08/07 05:14
音とリズムさんへ
 コメント拝見しました。
 とっても重要な質問だと思います。「認知症治療の意義」に関しては、以前から議論されている話題です。
 シリーズ第83回『早期診断・早期治療が重要である理由』において、「認知症診療において早期診断・早期治療が重要であるのは、端的に言えば『認知症の進行を遅らせることができるから』です。」と私は述べております。
 さらにもっと早期の段階(=軽度認知障害;MCI)で受診することの意義に関しても、シリーズ第4回『認知症検診の誕生秘話』のコメント(=『今、受診することの意義』)において、「正確な診断のために」と説明しました。
 幻視に対して不安を感じておられる方でしたら、それに対するケアの指導なども認知症外来では求められます。
 軽度から重度に至るまで共通の治療目標は、「家族が穏やかに介護していけるように」という視点ではないかと私は考えています。

 また、「治療の意義」を論ずるうえでは、「費用対効果」の問題を考える必要が出てきます。
 認知症の進行を遅らせることは、「一時的でわずかな認知機能の改善に過ぎないのなら、認知症による問題行動に振り回されてきた介護者にとっては、その辛いプロセスを長く続けることになってしまう」という指摘もされております。そのような意見に対して、真摯に耳を傾けることも必要だと思います。
 「費用対効果」の問題は、また改めて詳しくお話させて頂きます。


ありがとうございます
投稿者:音とリズム 投稿日時:11/08/07 13:12
 Dr. 笠間、わかりやすく説明していただきありがとうございます。最近ブログを読み始めたので過去に書かれたリポートは拝見していませんでした。失礼しました。
 認知症の進行を遅らせることと、その引き換えに介護が長期化する事のジレンマは重要な問題ですね。また、費用の事も重要な問題です。「費用対効果」のお話し楽しみにしています。また、どんどん進む高齢化社会で、ますます多くなる認知症の患者さんの研究をなさり、我々の医療に貢献くださりありがとうございます。



朝日新聞アスパラクラブ「ひょっとして認知症-PartⅠ」第151回『出そろった4種類の認知症治療薬(5)―首が下がる』
 論文には、「ドネペジルによる首下がりの報告は見当たらない。しかし、ドネペジル中止後数日で首下がりは改善し始め、2週間後にはほぼ消失、歩行も正常になった。」(根来清:神経内科 Vol.74 319-320 2011)と記載されています(一部改変)。
 相談した神経内科医師がジストニアの権威で論文(『ジストニア:内科的治療』 BRAIN MEDICAL Vol.20 265-270 2008 など)も多数書かれている医師でしたので、「首下がり」と「頸部ジストニア(痙性斜頸)」に関する専門的な意見もお伺いすることができました。
 著作権の関係で、「神経内科」雑誌に載っている印象的な図(写真)を提示できないのが残念です。しかし、ネット上でもこれに関する1件の論文(http://neurology-jp.org/Journal/public_pdf/050030147.pdf)を閲覧することができます。論文のFig.1を一度見ておいていただくと、印象深く記憶に残すことができると思います。
 論文中に、「Pisa症候群」という文字が出てきますね。Pisa症候群(体幹ジストニア)とは、抗精神病薬によって引き起こされる副作用(錐体外路系副作用)の一つとされており、1972年にはじめて報告されました。患者さんの体幹は、一側に強直的・持続的に屈曲し、あたかも「ピサの斜塔」を連想させることが命名の由来となっています。
 レビー小体型認知症(DLB)では、Pisa症候群を呈する場合が多いのではないかという指摘もされています
 今回経験した80代後半の女性は、DLBの特徴的な症状は認めておりません。また、服薬している薬剤はドネペジルだけでした。ただ、シリーズ第35回『嫁が盗った! どなたさんでしたっけねえ?(その1)』で述べましたように、家族の誤認は、DLBで最も多いことが指摘されていますので、「息子がもう一人家の中にいるような誤認」は、ひょっとするとDLBに関連した症状かも知れません。
 中止して2週間後の再診時には頸部前屈はやや改善傾向となっており、1カ月後の再診時には頸部前屈はさらにもう少し改善を認めており、本人が首が下がることに留意していると首が下がらない状態にはなりました。ただ症状の消失には至っておりませんので、ドネペジルの副作用としての「首下がり症候群」であったと決定づける根拠には欠ける状況です。しばらく経過をみて治療方針を再考していく予定です。
 首が極度に前屈していくことは、患者さんにとってはかなり辛い症状ですので、早期に気づき対処することは重要ですね。
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