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薬のはなし―かぜ薬について [医療]

薬のはなし―かぜ薬について
はじめに
 インフルエンザは別であるが,一般のかぜ症候群を引き起こすウイルスに有効な医薬品はない。したがって,かぜに対する薬はほとんど対症療法であるが,「早く治すために,悪くならないように,念のために」とかなり期待して来院する患者も多い。かぜの症状に合わせた処方と患者の理解度に合わせた説明が必要であるが,すべての症状を薬で抑えることが必ずしもよくない場合もある。また,十分な睡眠と栄養,安静,保温などの基本的対応を再確認してもらうことも重要である。

総合感冒薬
 かぜに対する対症療法として,解熱鎮痛薬,抗ヒスタミン薬,鎮咳薬,去痰薬などが使用されるが,総合感冒薬はこれらの医薬品を配合剤としたものである。しかし,処方される医療用医薬品の総合感冒薬としてはほとんどPL顆粒のみで,これには,解熱鎮痛薬と抗ヒスタミン薬しか含まれていない。したがって,症状により鎮咳薬や去痰薬,トローチやうがい薬などが処方される。また,頓服薬として解熱鎮痛薬が追加されることも多い。薬の数が多くなると,とくに他の疾患でいろいろな薬を服用している人にとっては大きな問題となる。
 一般のかぜに対しては明らかにセルフメディケーションの方向に進んでおり,総合感冒薬のほとんどはパブロン,ルル,ベンザなどの商品名で販売されている一般用医薬品である。これらの医薬品には,子供用や複数の剤型,さらに鼻炎や咳止めに特化したものなど,多くのシリーズ商品がそろえられており,含まれている有効成分も様々である。とくに鼻炎用や咳止めなどにはプソイドエフェドリンやメチルエフェドリンなどの交感神経作用薬が含まれているものも多く,鼻づまりや咳に対して処方薬よりよく効く場合もある。考え方によってはこれら医薬品の中から適当なものを推薦するか,薬剤師と相談し,薬局で購入してもらうのもよい方法かもしれない。

注意したい副作用
●総合感冒薬にイブプロフェンなどのNSAIDが含まれているものがあるが,アスピリン喘息には禁忌なので注意する。
●解熱鎮痛薬にはイソプロピルアンチピリンなどのピリン系薬剤を含むものがあるが,過去にピリン系薬剤でじんま疹を経験したことがある人には禁忌である。アスピリンはその名前からピリン系と誤解されるが非ピリン系である。
●アセトアミノフェンは子供に対する安全性も高い薬として繁用されているが,大量投与や長期連用,アルコールとの相互作用などにより肝障害を起こしやすく,一般薬の中で中毒事例が多い薬の一つである。多くの薬に配合されているので,過剰摂取にならないよう注意が必要である。
●総合感冒薬に含まれる抗ヒスタミン薬はほとんどが第一世代であり,抗コリン作用により,とくに高齢男性では排尿障害を起こしやすい。また,気道分泌を抑えるため痰を排泄しにくくすることもある。中枢作用による眠気も誘発しやすいが,安静にするという意味では利点である。

かぜに対する抗菌薬の使用
 明らかに細菌感染が疑われる場合や呼吸器系の基礎疾患がある場合は抗菌薬も考慮されるが,一般のかぜに対して抗菌薬が不要であることは臨床試験の報告もあり,以前から日本呼吸器学会でも提唱されている。しかし,現在でも二次感染予防や重症化の防止を目的として抗菌薬が処方されることが多い。また,患者の希望もあって処方されるケースも多い。前述のように総合感冒薬のラインアップは市販薬でそろっており,抗菌薬を求めて来院する患者が多いのかもしれない。
 抗菌薬の安易な使用は耐性菌増加に繋がる可能性があるため,症状をよく確認し,より慎重に処方しなければならない。さらに,抗菌薬を処方する場合には,患者が服用意義や服用方法をよく理解し,また,途中で中止しないように説明することも重要である。
(以下省略)
 【大石了三、園田正信:かぜ薬について. 臨牀と研究 Vol.93 155-156 2016】

私の感想
 風邪と抗菌薬に関しては、「“かぜ”をこじらせないために」(http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-04-12-4)もご参照下さいね。
イソジン.JPG
 上戸彩さんも「イソジン[レジスタードトレードマーク]」のCM(https://www.youtube.com/watch?v=6i7KR1KMbss)で言ってますよ。「のどの痛みの85%はウイルス感染によるものです。」ってね。

“かぜ”をこじらせないために [医療]

教科書では分からない高齢者診療のコツとヒント-第6回・高齢者の“かぜ”をあまく見てはいけない

「“かぜ”をひいた」と来院した高齢者とは
 高齢者に限らず,一般の医療機関において新たな健康問題を有する(初診)患者として診療する機会が最も多いのは,「“かぜ”をひいた」と来院する患者であると考えられます。そのほとんどはウイルス感染症としての「かぜ症候群」(普通感冒,急性上気道炎)ですが,時に「かぜ症候群」以外であることもあります。さらに,“かぜ”をひいた高齢者の中には,めったに医療機関を訪れない,普段は元気な方も含まれています。本稿では「“かぜ”をひいた」と来院した高齢者をどう診るかについて考えます。
 …(中略)…

“かぜ”をこじらせないために
高齢者のかぜ診療のポイント.jpg
 かぜ症候群の原因のほとんどはウイルスであり通常は自然治癒するので,経過中に“こじらせないようにすること”が肝要です。これには,合併症の早期発見と,“裏目に出ない”介入を行うことに尽きます。
 経過中に合併症,特に肺炎を合併してるか否かを注意深く判断しなければなりません。高齢者では,発熱の遷延や呼吸器症状の悪化はもちろん,食欲の低下,“元気がない”などが肺炎と診断する契機となることがしばしばあります。肺炎の診断は,抗菌薬を使用するか否かや入院適応とも強く関連するためとても重要となります。
 また,“裏目に出ない”介入を行うためには,余計な薬剤を処方しないように留意することが重要です。高齢者は,ただでさえポリファーマシーであることが多いため,必要最低限の処方とします。かぜ薬では,眠気などの副作用が生じることもあるので,総合感冒薬は避け,単剤で短期間の投与としますそもそも,かぜ症候群に対して有効性が明らかな対症療法は限られており,患者にとって不快な自覚症状に対してのみ処方し,その点を患者に説明すべきでしょう。当初は薬の処方を希望していても,説明により対症療法すら希望しなくなる患者も一定数はいるものです。
 薬剤の副作用では,高齢者では抗菌薬で実際に偽膜性腸炎などを生じることがあり,適応を十分に吟味して処方すべきでしょう。現実には「“抗生物質”を出してください」など患者や家族から求められることがありますが,抗菌薬が本症に対する原因療法であると誤解していることもあるので,よく説明した上で,患者の受診理由や薬剤に対する価値観も踏まえ対応します。そして,抗菌薬の適応があると判断すれば十分量を処方すべきであると思います。
 高齢者で最も必要なのは,適切な一般療法・生活指導を行うことでしょう。その点,医師が特に留意すべきなのは、絶対安静,入浴不可など明確な根拠のない一般療法を強く指導しないことです。かぜで寝込んでから,あるいはかぜでデイサービスを休んだ後,かぜは治まったのに日常生活動作(ADL)が低下したという患者をしばしば経験します。医師には、高齢者がかぜをひいても、できるだけ通常の生活を続けられるようにするための,適切な一般療法・生活指導が求められます。この際,集団防衛の観点として,手洗いや必要に応じたマスクの使用についての慎重な判断も求められるでしょう。
 【木村琢磨:教科書では分からない高齢者診療のコツとヒント-第6回・高齢者の“かぜ”をあまく見てはいけない. Medical Tribune 2016.4.7 p13】


私の感想
 表「高齢者のかぜ診療のポイント」において、「かぜをこじらせない配慮」として、「不必要な薬剤を処方しない」という項目が挙げられていることに注目したいと思います。
 「安易な抗菌薬の処方」は長年にわたり警鐘が鳴らされてきましたが、皆さん心配が先に立ち、良くなると「早めに服薬したので早く治った・・」などと思い込み・・ということが繰り返されてきました。
 かぜ症候群の原因のほとんどはウイルスであり、抗菌薬は無効であり、通常は自然治癒する!ということをもう一度、しっかりと脳裏に刻み込んで下さいね。

P.S.
 風邪の際に「ロキソニン」と「クラビット」を平気で同時に処方する医師がけっこう居ます。かなり有名な「併用注意」なんですが知らないのですかね・・。
 http://www.fizz-di.jp/archives/1029337922.html
 https://medqa.m3.com/doctor/showMessageDetail.do
 まあ知ってって「注意喚起」して処方することはあるかも知れません。と言うか私自身、知ってて、ロキソニンとクラビットをウイスキーで飲んだりしています。最悪のパターンですが私の場合は平気です! でも皆さんはやめて下さいね!
 そもそも風邪に対して抗菌薬は(基本的には)不要であることを理解して下さいね。正しい医学知識を少しでも身につけることに、微力ながらこのサイトが役割を果たすことができれば幸いです。

ジカウイルス 脳組織成長妨げ [医療]

ジカウイルス 脳組織成長妨げ
 小頭症増加と関連強める

 中南米で流行するジカウイルスの感染が脳組織の成長を妨げることを、ブラジルの研究グループがiPS細胞を使った実験で確かめた。
 ブラジルでは、ジカウイルスに感染した妊婦から、脳の発育不全で頭が極端に小さい小頭症の子が生まれるケースが多数報告されている。研究グループは「ジカウイルス感染と小頭症の増加の関連をより強める結果」としている。
 米科学誌サイエンス(電子版)に11日発表された論文によると、研究グループは、ヒトのiPS細胞から脳の組織を作り、、ジカウイルスに感染させ、成長にどのような影響が出るかを調べた。ウイルス感染から11日後では、感染させなかった脳の組織に比べて大きさが40%小さかった
ジカウイルス.jpg
 一方、ジカウイルスと同じフラビウイルス科に分類されるデング熱のウイルスでも同じような実験をしたが、脳の組織は小さくならなかった。脳組織の成長を妨げる影響について「フラビウイルス科に一般的な特徴ではない」とした。
 さらに、ヒトのiPS細胞から作った脳の神経幹細胞にジカウイルスを感染させると、6日後にはほとんどの神経幹細胞が死滅することも確かめた。(南宏美)
 【2016年4月12日付朝日新聞 総合3】

私の感想:
 日本国内でも流行すれば、「少子化」にますます拍車がかかってしまいますので、何とか水際で阻止して欲しいです。

日本リハビリテーション医学会における専門医制度の現状 [医療]

日本リハビリテーション医学会における専門医制度の現状
 2013年8月時点での18基本領域専門医数を示す(表1).2015年4月現在,日本リハ医学会が認定しているリハ科専門医は2,050名である.基本領域の中では,日本リハ医学会は日本臨床検査医学会を除けば,最も専門医の少ない診療領域であることがわかる.人口比を加味しても米国のリハ科専門医の約7,000名に比べ少なく,需要>供給の値は救急診療科以上であること(朝日新聞2010年9月29日,30日)が大きく報道された.需要を喚起した要因の1つは2000年度に新設された回復期リハ病棟であり,これによって病院機能分化が著しく促進され,急性期から可及的早期にリハ目的(名目)で転院するという現在の流れとなっている.良質のリハを提供するために必須のリハ科専門医が全国で2,000名に限られているため,絶対的に不足しており,内科や外科,耳鼻科や産婦人科医師などの他科医師がリハ科担当医としてその役割を担っているという状況や,適切なリハ処方ができないため,療法士任せとなっている場合もある.
 リハ科専門医をこれまで増やせなかったのにはさまざまな要因がある.日本医師会総合政策研究機構による「医学生のキャリア意識に関する調査(2014年)では,①医学部での学習と将来のキャリア,②視野の広さ,世界観,③診療科の選択,④将来のキャリアについて,全国1,309人の医学部生(1~6年生)を対象に調査を行った.図に示すように将来専門にしたい診療科・分野について(2つまで選択)ではリハ科はわずか0.8%であった(図1).
 【大串 幹:エビデンスとロールモデルから示されるリハビリテーション科専門医の存在意義―リハビリテーション科専門医の価値を示すために―. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine Vol.53 217-222 2016】

子宮頸がんワクチンで痛み・マヒ─被害者「人生奪われ悔しい」 [医療]

子宮頸がんワクチンで痛み・マヒ
 副作用被害 集団提訴へ─国などに賠償請求

被害者「人生奪われ悔しい
 埼玉県大学1年生、酒井七海さん(21)は「副作用があるとわかっていながら、起きた副作用に対しての十分な治療方法もなく、5年間苦しんできた。私がなぜ被害を受けたのか、なぜすぐ適切な医療を受けられなかったのかを知りたい」と訴えた。
 高校1年だった2011年2~3月に2回接種した。2回目の翌日に失神し、頭痛やめまいに悩まされるようになった。これまでに22回入退院を繰り返したが、症状は悪化。いまは車いす生活で、右足に装具をつけないと立ち上がれない。視野の一部も欠け、見えづらい。
 副作用について国がまとめた資料で自身の欄を確認すると「回復」と書いてあり、副作用についての国の追跡調査の対象にもならなかった。「私たちはデータではなく一人の人間。一人の人間の人生が変わってしまったことを訴えたい」。悩んだ末、実名を明らかにして訴えることを決意した。

分かれる評価
 子宮頸がんは国内では年に約1万人(上皮内がんを除く)が発病し、約3千人が死亡する。ワクチンは、子宮頸がん全体の50~70%の原因とされる2種類のウイルスの感染を防ぐ効果があるとされる。がんそのものを予防する効果は証明されていないが、海外では、がんの前段階の状態を減らす効果が報告されている。
 厚生労働省が推奨を控えて以降、再開の是非を決められないのはワクチンの評価が分かれているためだ。
 川崎医科大の中野貴司教授(小児科)は「(推奨の中止が続けば)将来、先進国のなかで子宮頸がんの患者が減っていない国が日本だけになりかねない」と指摘。日本産科婦人科学会も推奨の再開を求めている。推奨の中止が続く日本について世界保健機関(WHO)は昨年12月、「弱い証拠に基づいた政策決定」などと声明で批判した。
 一方、東京医大医学総合研究所の西岡久寿樹所長らのグループは、副作用をワクチンと関連する新たな病態としてとらえるべきだと主張。効果よりも副作用のほうが上回るとしている。
 厚労省が結論を出す際に根拠にするつもりなのが疫学調査だ。ワクチンによる健康被害と訴えている症状が、接種を受けた人と受けていない人で発症する割合に差があるかどうかを調べる。ただ、結果が出る時期ははっきりしていない。
 【2016年3月31日付朝日新聞・社会】
 【デジタルhttp://digital.asahi.com/articles/ASJ3X5TGQJ3XUTIL04P.html?rm=418

子宮頸がんワクチンの経緯.jpg
 若い患者が急増したため、国は10年11月からワクチン接種への公費助成を始めた。13年4月からは小学6年~高校1年の女子を対象に原則無料の定期接種とした。しかし、全身の痛みや倦怠(けんたい)感などの健康被害を訴える声が相次ぎ、国は同年6月に積極的な接種の勧奨を中止した。
 厚生労働省によると、14年11月までに約338万人が接種を受け、2584人が「副作用」を訴えている。同省は「実態の解明にはさらに研究が必要」としており、接種の勧奨再開のめどは立っていない。
 提訴方針について、厚生労働省とグラクソ・スミスクラインは「詳しい内容を承知していないのでコメントは差し控えたい」などとし、MSDは「世界各国で承認されており、圧倒的な科学的エビデンスがあることから被害者連絡会のこれまでの主張に根拠はないと信じている」としている。
 【2016年3月31日付日本経済新聞・社会】

私の感想:
 問題となったワクチンは、グラクソ・スミスクラインの「サーバリックス」とMSDの「ガーダシル」です。
 私は諸情報を元に、ワクチン接種が始まって間もない時点で(=公費助成前に)、高校生(当時)の娘にも接種させました。「公費助成」の噂はありましたがお金の問題じゃないですからね・・。
 一歩間違えば、副作用で苦しんでいたかも・・という状況ですよね。
 薬害エイズ以来の大きな問題だと感じます。

医出づる国⑤―明日を拓く [医療]

医出づる国⑤―明日を拓く
 医師任せで大丈夫?
 患者の選択、生き方決める

 東京都立神経病院(府中市)で2月、難病を患う小川伝司さん(59)の退院後の支援体制を話し合う会議が開かれた。医師や地域の保健師ら十数人を前に小川さんが切り出した。「今後が楽しみです」

残した声で参加
 小川さんは3年前、全身の筋肉が動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された。声はほとんど出ない。それでも肉声で表現できるのは「マイボイス」と呼ぶシステムで声を残していたからだ。
 パソコンに入力した文字情報を前もって取り込んだ自分の声に変換する。同病院の作業療法士、本間武蔵さんが開発に携わり、これまでに約220人が録音した。治療に直接役立つわけではないが、本間さんは「患者の医療参加を後押ししたい」と力を込める。
 神戸市の人工島ポートアイランド。2013年に開業したチャイルド・ケモ・クリニックは小児がんの子供と家族が共同生活しながら治療を受けられる。
 楠木重範院長も子供の頃にがんを患った。その経験を生かし、設計段階から家族の声を取り入れ、面会ルールも話し合って決めた。「患者や家族と一緒に進めでこそ、理想の医療が実現する」(楠木院長)
 患者は長年、医師が決めた治療を受けるだけの立場とされてきた。いち早く改革に動いた米国では1973年に病院協会が「患者の権利章典」を作成。90年、連邦法に「患者の自己決定権」が加わった。
 日本でもインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の考え方が徐々に浸透し、97年の医療法改正で理念が明確に位置付けられた。推奨される治療法などを記した診療ガイドラインづくりに患者が参加するケースも増え始めた。
 だが「医師に判断を委ねる『お任せ医療』はまだ根強い」と滋慶医療科学大学院大の飛田伊都子准教授は話す。技術の進歩が医師と患者の情報格差を広げている面もある。

医師任せ.jpg
リスクまで共有
 上下関係を解消し、病という共通の敵にどう立ち向かうか。近年、SDM(Shared Decision Making)という考え方が注目される。治療過程を共有し、医師が示した選択肢から患者が治療法を選ぶ。インフォームドコンセントと比べ、患者の意思決定権は強い。
 昨年秋、がん研有明病院(東京・江東)の大野真司乳腺センター長の元に乳がん患者が訪れた。腫療は3~4センチとやや大きめ。手術で取り除いても再発率は40%あり、術後の抗がん剤治療が望ましかった。
 選択肢は2つ。再発率を20%に抑えるタイプは手にしびれが残る恐れがある。もう一つは25%だが、しびれはない。患者は大野氏とじっくり話し合い「生きがいである書道を続けたい」と後者を選んだ。
 医療は患者と医師の共同作業だ。リスクや限界も含め情報を共有し、信頼関係を築かなければ、安全で安心な医療は実現しない。主役となる患者が「任せる」から「参加する」に意識を変え、行動を起こすことが「医出づる国」への第一歩となる。
 【2016年3月30日付日本経済新聞・1面】

精神科医療施策―デイケアの〝縮小〟なぜ [医療]

精神科医療施策
 デイケアの〝縮小〟なぜ

 精神科外来でデイケアと呼ばれる集団療法の長期利用が厳しく制約される。患者の社会復帰を支える場でもあり、国が重視する〝かかりつけ機能〟に近い役割も担っている。それなのに、なぜ。
 原則二年ごとに国が見直す医療の公定価格(診療報酬)が改定された。だが中には、首をかしげたくなる内容もある。
 精神医療分野のデイケアの制度変更は、その一つだ。
 厚生労働省などによれば、精神科デイケアなどの患者の七割近くは統合失調症。うつ病などの気分障害やアルコール、薬物依存症などの疾患も対象だ。
 大半が専門の医院クリニック運営され、十数人など一定数の患者が通いながら、主治医の治療と併せ、集団活動に取り組む。
 教室の授業さながら病気について学んだり、機能訓練、スポーツなど多彩なプログラムを重ねる。孤立する患者の〝心のリハビリ〟は欠かせないという。
 ところが今回の改定で、そんな患者のよりどころが〝縮小〟されかねない制約が、一年以上の長期継続利用に設けられた。
 現在、一年を超える利用は「週五日」を限度に診療報酬に算定する。だが、四月からは「精神保健福祉士による患者の意向聴取」など、定められた三要件をすべて満たさなければ、その日数は「週三日」に短縮されてしまう。
 しわ寄せは確実に患者に来る。医療団体の呼び掛けに、見直し撤回の署名は四万人分を超えた。
 厚労省は「より自立した生活への移行を促す」ための見直しと説明したが、どこまで誠実に現場の実情を見たのか。
 再発や挫折を繰り返す患者も少なくない。「自立」には根気と時間がいる。デイケア参加を何日続けられるか、生活リズムをどう取り戻すかが意味を持つのだ。
 「福祉士がいない医療機関は通常の運営自体も難しくなる」と、危機感を抱く精神科医もいた。
 患者数が三百万人を超え、なお増えている精神疾患。国もがんや脳卒中などに加え五大疾病に指定、重点対策を訴えたはず。
 程度の差はあれ、デイケア併設の医療機関は、長期入院者の受け皿や大病院への橋渡しなど地域の「かかりつけ」の役割も持つ。
 患者の人生同様、仮に病名が同じでも症状は一人一人違う。一律にデイケア利用を縮めるような改定は、やはりおかしい。効率優先ではなく少し長い目で、患者本位の改善案を考えるべきだろう。
 【2016年3月28日付中日新聞・社説】

P.S.
 改定の詳細は、本日のFacebookに「表」を載せましたのでご参照下さい。

中外製薬の特許訴訟控訴審 [医療]

中外製薬の特許訴訟控訴審
 「後発薬」の侵害認める
 ジェネリックに逆風も

 中外製薬が自社の薬の製法特許を侵害しているとして、後発医薬品メーカーなどを訴えた訴訟の控訴審判決が25日、知的財産高裁の大合議であった。設楽隆一裁判長(同高裁所長)は「製品の本質的な部分に違いはない」として、特許侵害を認めて販売の差し止めを命じた一審・東京地裁判決を支持。後発医薬品メーカー側の控訴を棄却した。

 先行者の権利を保護する内容で、後発薬(ジェネリック)開発に影響が出る可能性もある。
 …(中略)…
 後発薬は、医薬品の特許の期間が切れた後に別のメーカーが同じ有効成分で製造・販売する。価格を抑え、患者の負担を減らす効果があり、近年、日本でも普及が進む。
 中外製薬のオキサロール軟こうは、有効成分を構成する物質に関する「物質特許」の期限は切れていたが、後発薬の発売時点で製法特許は有効だった。訴訟では製法に関する特許侵害の有無が争われた。
 …(中略)…
  
知財紛争に詳しい牧野和夫弁護士の話
 薬の製法特許の有効性を認め、権利範囲を広く解釈した今回の知財高裁判決は、特許保護に向かう判断として評価できる。
 最高裁は昨年6月の判決で、同じ成分の薬を異なる方法で造っても構造や特性が同じなら特許侵害に当たるとしており、特許保護の流れの判断が続いている。
 製法特許の権利保護の範囲がこれまでより広く解釈されたことで、今後も新薬の開発意欲が維持されるだろう。一方で、後発医薬品メーカーには逆風になり、安価なジェネリック医薬品が普及しにくくなる可能性もある。
 【2016年3月26日付日本経済新聞・社会】

ご当地医療にアイデア続々 [医療]

ご当地医療にアイデア続々
 地域で患者支える
 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG10H7V_R10C16A3MM8000/

 昨春、名古屋市南部のJR南大高駅前に「よってって横丁」という名の建物がオープンした。診療所や介護事業所などが入る。
 高齢者のための場所というわけでもない。自習室やレストラン、カフェも備え、老若男女が集う。
 2010年には横丁の隣に総合病院ができた。吹き抜けのロビーは地域住民が通勤通学で通り抜ける。建物内にはレストランやフィットネスクラブ、図書室、病児保育室などがある。病院らしくない病院だ。
南医療生協ロビー.jpg
 これらをつくったのは、南医療生活協同組合。同生協はこの地域に8万人近い組合員を抱える。これら組合員が「地域に必要なもの」を徹底的に議論した。
 組合員は口だけでなく、カネも出す。新病院の建設には20億円、横丁には3億円の出資金を集めた。これまでにも同様の方式で診療所や介護事業所などを次々と立ち上げてきた。
 ボランティア活動も盛んだ。医師が診察室で独居の高齢患者らの生活の困り事を聞くと、それが地域の組合員に伝わり、問題解決を手伝う仕組みもある。組合理事の杉浦直美さんは「医療だけでその患者の暮らしは支えられない。地域の助け合いがいる」と語る。
 日本が若かった頃は、病気やけがの患者を入院させるなどして治療し、社会復帰させる病院中心の医療でよかった。しかし高齢化が進み、慢性疾患を抱えながら生きる高齢患者が増えた今は介護や生活支援なども併せて求められる。
 いわば「地域で治し、支える医療」だ。医療費が膨らむ中、医療資源を効率的に使うこともますます重要になる。ただ地域の人口や高齢化はそれぞれ異なるので、全国一律で同じ形はあり得ない。そこで「ご当地医療」づくりが大切になる。南医療生協は住民を巻き込み、地域に合った形をつくりつつある一つの例だ。

データ使い改善
 …(中略)…
 3月13日、都内で開いた医療シンポジウム。この中で様々なデータから地域医療の将来像を描くコンペの結果が発表された。一般市民も含めた応募作の中で最優秀賞に選ばれたのは臨床現場の医師の提言だった。
 「ご当地医療」づくりといっても、まだ戸惑いが多い。そこで東京大学公共政策大学院の研究会「医療政策実践コミュニティー」は地域別の病床数などのデータベースをつくり、これを活用して広く考えてもらおうと、コンペを実施した。
 埴岡健一・同大学院特任教授は「医療関係者だけでなく、市民もデータで地域の状況を理解し、議論しないと医療は変わらない」と強調する。天から地域に最もふさわしい医療体制が降ってくるわけではない。地域の多くの人たちが積極的にかかわり、考え、行動することが大切になる。
     ◇
 医療がより良いものになれば、私たちの暮らしはさらに豊かになる。そのための手立てを考える。
 【2016年3月25日付日本経済新聞・1面―医出づる国・明日を拓く①】

こむらがえり [医療]

こむらがえり

医学的定義
 「こむらがえり」の語源は「こむら(ふくらはぎ)」が「かえる(つる)」と思われ,その言葉の表す通り,突然不随意的に腓腹筋が持続的に収縮して起こる激しい痛みで,比較的短時間で自然に軽快するものを指す.医学用語としては「腓腹筋痙攣」も用いられる.

患者がよく用いる表現
 「こむらがえり」のほか,「足がつる」と言って受診されることも多い.ふくらはぎ以外の部位の筋肉の痙撃も「こむらがえり」と表現することもある.

 …(中略)…
鑑別診断
 筋肉の痙攣を起こす独立した疾患に過換気症候群やテタニー,書痙などがある.丁寧な問診で筋肉痙攣の部位や誘発因子を明らかにできれば鑑別は容易である.
夜間のこむらがえり.jpg
 夜間のこむらがえりの基礎疾患としては,表1のほか,薬剤性が重要で,誘発薬剤は非常に数多く知られており,表2の薬剤などが代表的である(すべての服用薬を聞き出し,すべての薬剤の添付文書を確認する;「筋肉痛」または「筋肉痙攣」と記載されていることが多い).
こむらがえりの誘発薬剤.jpg
 原因が見つからないこともあるが(原因不明),多くは加齢性変性によると考えられている.

初期治療
 …(中略)…
 こむらがえりは糖尿病患者にも多いが,こむらがえりを経験して初めて糖尿病のコントロールが血管神経系に影響していることを実感し,食事療法や運動療法の重要性に気づいたという人もいる.喫煙が原因の動脈硬化,アルコール過剰摂取が原因の脱水とわかれば,禁煙節酒に真剣に取り組む患者がほとんどである.
 …(中略)…
 悪性進行性の疾患が除外でき,原因疾患や原因薬剤の特定はできてもその治療・コントールや薬剤変更が困難な場合,あるいは,全く原因不明の場合は,患者への説明として,良性一過性の筋肉現象であるので対症療法で対処して経過をみることを勧める.就寝時に下肢を挙上することや,下肢を暖めること,就寝前の簡単な理学療法(筋肉ストレッチマッサージなど)が予防に有効とされる.就寝前にコップー杯の水を飲むことも予防に役立つ.起こってしまった場合は,息を吐きながら親趾をつかんで背屈する(そらす)と比較的速やかに消失する.
 …(中略)…
芍薬甘草湯.jpg
 芍薬甘草湯は,こむらがえりによく処方される漢方薬である.速効性があるとされ,こむらがえりが起こってからでも奏効するとされるが,そもそもこむらがえり自体,服薬なしでも自然に消失するものであるので,その客観的効果判定は困難なことが多い.副作用として偽性アルドステロン症があり,高血圧や低カリウム血症を起こすので,予防的に長期服用するには適さず,頓服処方でも定期的に血圧測定や血液検査を実施するなどの注意が必要である(患者は以外と他ルートで入手して頻繁に服用していることもある).
 以下省略
 【田中まゆみ:こむらがえり. medicina Vol.53 2016増刊号 385-389 2016】

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