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現代型うつ病 大うつ病性障害 非定型うつ病 [うつ病]

「現代型うつ病」をどのように解釈するか─その病態と治療的対応
現代型うつ病-坂元.jpg
「現代型うつ病」への治療的対応
メランコリアとディスチミア.jpg
 表3に示したように,逃避型抑うつ,非定型うつ病,ディスチミア親和型うつ病に該当する病態を呈する彼らに対しては,うつ病と告知し,「服薬と休養で比較的短期間で治る」という保証を安易に与えることは決して得策ではない.そのことが彼らに,「自分はうつ病なので,何も(仕事を)しなくてよい,あるいは(周囲の目からは遊興としか映らないインターネット,ゲームへの熱中,海外旅行など)何をしてもよい」という気持ちを抱かせ,かえって長期転帰が不良とをることもあろう.つまり,休養をすすめることがいつもよいとは限らないし,病状によっては,多少つらくても仕事や家事をしながら生活のリズムを整えることも大事であることを説明すべきであろう.また家族には,本人の病気を理解しつつも過保護にはしないように説明する.批判は禁物だが,患者に合わせ過ぎず,言うべきことは言うように勧める.
 環境の変化(とくに人事異動や上司の叱責,同僚,部下との不和が発症の契機となった場合には,さらなる人事異動など)が彼らの病状に好ましい影響を与えることも少なくない.職場の上司や産業医との連携をも視野に入れ,そうした環境変化が生じるのをじっくり待つ姿勢も重要である.しかし,最も重要なことは,「本当のうつ病でもないくせに,うつ病,うつ病と騒ぎたて疾病利得を得ようとしている」という冷たい目のみで彼らを見てしまわないことである.そうした陰性感情が治療的にポジティブに作用するはずがない.
 いずれは治るという「希望を処方」しつつ,「服薬と休養で比較的短期間で治る」という安易な期待を彼らが持たないようにすることが肝要である.いずれは治るといっても,そう言っているだけではもちろんすまされない.数カ月,半年,1年程度などといった目安をそれぞれの症例の治療過程に応じてその都度,ある程度は具体的に示唆することも求められよう.
 そして彼らにかろうじて残されているレジリアンス(回復力)を最大限引き出す機会をうかがうことであろう.そのためには,彼らの自己愛を過剰に肥大させない範囲で,他者に適切に評価され,誉められた経験に乏しい彼らの屈折した自己愛が少しでも満たされるべく配慮することも一つの方策であろう.
 【坂元 薫:「現代型うつ病」をどのように解釈するか─その病態と治療的対応. 綜合臨牀 Vol.59 1197-1201 2010】

適切な治療・対応につなげるために、いわゆる“新型うつ病”への誤解を解く

日本うつ病学会, うつ病Q&A Q4
新型うつ病.jpg
 http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/qa/pdf/qa4.pdf

DSMの「うつ病」といえば、「大うつ病性障害」
大うつ病性障害の診断基準.jpg
 【CNS today Vol.3 No.6 Medical Tribune December, 2013 3-12】

私がうつ病を患った理由 [うつ病]

私がうつ病を患った理由
 うつ診断書.jpg

 今日の佐藤雅彦さんの言葉、「重い」ですよね。ハッとさせられました。

https://www.facebook.com/masahiko.sato.522/posts/771402846328591?comment_id=771418229660386¬if_t=feed_comment_reply¬if_id=1463525350968594
 =「認知症の診断を受けたとき、いままでの価値観が音を立てて、崩れていきました。絶望の中から立ち上がるには、新たな価値観を構築しなければなりませんでした。生きがいをなくした人間が、新たな生きがいを見つけるには、時間がかかりました。

 しかし、次の聖書のことばに励まされ、私は試練を乗り越えました。
 『あなたがたのあった試練はみな人のしらないようなものではありません。神は真実な方ですから、あなたがたを耐えることのできないような試練にあわえてくえん(コリント人の手紙 第一 10章 13節)』

 私は、苦しみ、もがき続けた結果、なにか情熱もって生きることこそが、本当にすばらしいことだと、気がつきました。
 はたから見ればつまらなく思えるかもしれないことでも、やっている本人が情熱を注ぎこむことができれば、それで十分だと思います。
 生き方は、人それぞれ違って当たり前です。むしろ、人と違うことに、より価値があると思います。
 人は何ができなくとも、それ自体尊いものです。役に立たなくとも、自分は尊い存在だと信じましょう。」


 私は「うつ病」を患ったことは告白しましたが、うつ病を患った理由(=あくまでも私が感じている理由です。主治医である水谷先生にはこの理由を早い段階で診察室で伝えました)はFacebookではあまり伝えてきませんでした(ヒントみたいなのは書きましたが・・)。
 長年取り組んできた「認知症」への取り組み。朝日新聞社デジタルの「アスパラクラブ」&「アピタル」においては、「ひょっとして認知症?」という医療ブログを約4年半(2010.9.28~2015.3.29)続け、その間に1,337本の原稿を書き上げました。今もこの原稿は大きな財産となっています。
 しかし、私には何かが欠けている! そう感じ始めたのは、そのブログを担当しておりました終盤です。沢山の原稿を書いているだけで認知症カフェに顔を出すわけでもなく、認知症の当事者に対して私は全然向き合っていないのではないか・・と感じ出すとモチベーションがどんどん低下していき、自分自身に対して「俺は何てダメな人間なんだ!」と感じるようになりました。うつ病を発症する1年以上前からそんな状態に入り込んでおりました。
 大好きだったテニスにも意欲・興味をなくし、平成27年度は長年続けてきました「日本認知症学会」の学会発表も途絶えてしまいました。
 そんな失意の中、私が唯一2014年から2015年にかけて書き上げた論文が『入院高齢者診療マニュアル』【編者:神﨑恒一 著:笠間 睦:認知症患者の胃瘻. pp278-280, 文光堂, 東京, 2015】http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06-1)なのです。うつ状態で頭の回転が相当鈍くなった状態でしたが執念で書き上げました。ここだけは譲れない世界だったわけです。
 その後、うつ病はますます悪化し、2015年1月には、病院長にも相談しました。「苦しい」と正直に伝えました。しかし、実際に診察に行くまでには随分と時間がかかりました。2015年4月のアルツハイマー病研究会の折、名古屋駅の新幹線ホームで「今、飛び込んだら楽になるかな・・」って考えている自分自身に気づきました。
 東京出張を終えて家に戻り妻に名古屋駅でのことを話したら、「仕事できないのならもう休んだら・・。私が仕事していけば食べるだけなら何とかなるでしょう・・」という妻の言葉に、ようやく、きちんと受診して診察を受ける覚悟ができました。大切な家族のために・・。
 ですから、2016年4月23日に開催されました『アルツハイマー病研究会 第17回学術シンポジウム(in グランドプリンスホテル新高輪)』(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/576593242510359)における水谷佳子さんと丹野智文さんの対談におきまして、丹野智文さんが語った「これから子どもを学校に行かせることができるかな・・。自分のことよりも家族のことを心配しました。」という言葉はスッと共感できました。

 うつ病は判断能力・処理能力などを確実に低下させます(P.S.私は「不能(=インポ)」にもなりましたので昨年1月の時点では、うつ状態ではなく「うつ病」に突入していたと思います)。いつもは数分でこなせていた業務に一時間くらい要するようになり、毎日仕事が定時に終わらず残業する状況でした。それでも仕事が終わらず、遂に2015年4月に物忘れ外来の初診受付を閉鎖する事態となってしまいました(結局、2016年3月末まで閉めました)。
 病棟も50名以上の重症度の高い患者さんを受け持っておりましたが、院長先生は私の状況を考え協力して下さいました。ただ、病院経営を重視し私の仕事の調整(入院患者数を減らす)ことに難色を示された方もおりました(今年の春、私はその上司に対して、堂々と「指導」を行い、指導した理由はこの時の“対応”にあったことを伝えました!→ その上司とは一時「険悪」な関係となりましたがその後“共通の敵”ができたことによりその上司とはよりを戻しました)。
 さて、きちんと受診して診察を受ける覚悟を決めた私は、2015年6月1日から水谷先生の診療を受け始めましたが、当初はいっこうに回復の兆候は出てきませんでした。ただ、不思議と診察に行くと心は落ち着きました。同じような病気で闘っている仲間が居るんだな・・って感じられたんですね。
 大好きだったテニスをうつ病極期の時に再開(2015年春)してみましたが、何だか楽しめないというか、むしろ罪悪感を感じておりました。こんなにも下手になって他のメンバーに迷惑をかけながらテニスを続けて良いのだろうか・・と自問自答して何度もテニス(サンライズ:http://www.amigo2.ne.jp/~waki5342/)に行くことをやめようと思っていました。診察の折に水谷先生からは、「うつ病が治ってきたかどうかの目安の一つに、趣味にどれだけ意欲が戻ってきたのかというチェック項目があるのですが笠間さんどうですか?」と尋ねられ、「全然前向きには取り組めません」と話している状況でした。
 夏場に、一度、テニスでK西さんに勝ったことがありました(実は復帰後の初勝利であり、K西さんに勝ったのも初めて)。K西さんは未だにその理由を明らかにしませんが(=もちろん私からは直接聞いておりません。怖くて聞けないです。でも、今度一緒に飲む機会があったら「あの時負けた本当の理由を言え」と強迫してみる?(笑) )、何となく私の異変に気づいており暖かい手(=私がサンライズを再び去ることがないように、「わざと負けた」というわけではなく「武士の情け」をかけてくれた?)をさしのべてくれたのではないかと私は察しております。K西さんには深く感謝しております。この感謝の気持ちがありますので、M本さんの復帰戦で5-0になった際、私は6-0で勝ちたいと思えなくなってしまった。「武士の情け」をかける人間にスポーツをやる資格はないのかも知れませんが、弱っている知人が元気を取り戻せるのなら私を含め多くの方が「武士の情け=あり!」だと感じられるのではないでしょうか・・。
 秋になっても「うつ病」は一向に良くならず、睡眠障害もひどく、辛い日々を過ごしました。大好きだった飲み会も欠席するようになり(榊原白鳳病院に長年勤務して初めて親睦会も欠席しました)、カラオケ女王の山口さんからの病棟飲み会のお誘いも断ってしまいました。「何でですか?」と言われましたが、当時は未だ「うつ病」をカミングアウトすることができませんでした。
 私自身、立ち直りの“きっかけ”はよく覚えていないのですが、いつの頃からか、うつ病の極期であったにも関わらず気力を振り絞って書き上げた論文のことが脳裏をよぎるようになってきました。
 そして、認知症の当事者に対して正面から向き合ってみよう! 今まで腰が引けていた「告知」問題に正面から向き合って見よう!と感じるようになっていきました。しかし、正面から向き合うには相当の覚悟が必要です。中途半端はダメなんです! でも、毎日うつ病で落ち込んでダラダラ一生を終えるくらいなら、覚悟を決めて前向きに生きてみよう!と思えるようになりました。
 そんな気持ちが芽生えてきて、ようやく本格的な回復に向けて始動し始めました。
 手始めに、Facebookでの更新をぼつぼつ始めました。テニスもようやく晩秋辺りから調子が上がってきて楽しめるようになってきました。
 そして今年1月のメンタルクリニック最終日の後、何と、主治医である水谷先生に「Facebook友達リクエスト」をして“承認”を頂いてからは、もう勇気100倍! 主治医が自分の書き込みを見てくれているという心強さに支えられて、友達にもうつ病であったことをカミングアウトできるようになり、しばらくしたらFacebookでもうつ病であった自分を公開カミングアウトし、もうそこからは怒濤の勢いです。
 椎間板ヘルニアにも関わらずテニスの試合に復帰し(=脚を引きずりながら試合しました。ロキソニンを一日に6錠も服薬して)、カラオケにもガンガン行きだし・・。妻には、「うつ病の時の方がまだましだった」と言われる始末・・。

 そして現在、4月下旬からは終末期意向調査Stage2に入っております。ご本人の気持ちを確認したうえで「予後告知」にも踏み込む方針で臨んでおります。ただし、かなりきめ細やかな対応を求められる領域であることは間違いありませんので、慎重に慎重に考えながら進めていきたいと考えております。

P.S.1
 うつ病は本当に辛い病気です。一人で立ち直ることは難しい病気のような気がします。誰かの支えが必要なんです。そういう意味(=周囲の支え・協力が必要)におきましては、「うつ病」と「認知症」と「発達障害」と「子ども」は共通点があるようにも感じております。
 私が専門外の「発達障害」や「早期教育」に関心が高いのはそんな背景があるのでしょうね。
 これからも前向きにいろいろなことに取り組んでいきたいと考えております。

P.S.2
 みっちゃん、あったかい励ましの言葉(=「すごい人達は、鬱になった経験をお持ちの人が多いですね。」)ありがとうね。
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/585984924904524
 みっちゃん.JPG

P.S.3
 「うつ病が治って、インポはどうなった!」って質問しないでね。


 最後までお読み頂きありがとうございました。
 

勤務医の自殺リスクは3.6%、うつ症状は7.6% [うつ病]

勤務医の自殺リスクは3.6%、うつ症状は7.6% 日医委員会調べ
 https://medpeer.jp/news/article?id=209&from=top_news_ranking
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睡眠時間・休日日数との関連認める
 自殺のリスクが高いとみられたり、中等度以上のうつ症状が認められたりする勤務医がそれぞれ3.6%、6.5%いることが、日本医師会の「勤務医の健康支援に関する検討委員会」の調べで明らかになりました。死や自殺を考える勤務医の割合は当直中の睡眠時間が短いほど高まり、うつ症状の分布は1カ月当たりの休日の日数が多いほど下がることなども分かり、委員会ではこれらの結果を参考に長期的な支援策を検討するよう呼び掛けています。

休日日数・当直環境など、勤務状況は改善も
 調査は、日医会員の勤務医約8万人から無作為抽出した1万人を対象に2015年6月15日~7月15日に実施しました。最近1カ月間の休日の日数や当直回数といった勤務状況と、抑うつ症状の尺度となるQIDSで中等度以上に該当するかといった健康面の質問に3166人が回答しました(有効回答率31.7%)。
 その結果によると、「最近1カ月間に休日なし」と答えた勤務医は、09年の8.7%に対して15年は5.9%と2.8ポイント減少しました(表1)。
 このほか、「当直回数が月4回以上」は09年が26.4%、15年が22.5%(3.9ポイント減)、「当直日の平均睡眠時間が4時間以下」は09年49.8%、15年39.3%(10.5ポイント減)、「半年以内に不当なクレームを経験」は09年45.9%、15年37.0%(8.9ポイント減)などと勤務状況の改善ぶりが目立ちました。

勤務医の2割が「不健康」を自覚、6年前と変わらず
 これに対して健康面では、「健康ではない・不健康」と自覚する勤務医は今回が20.1%で、09年の21.5%と比べて大きな変化はありませんでした。
 「自殺や死を毎週/毎日具体的に考える」は3.6%(09年は5.7%)、「QIDSが中等度以上」は6.5%(同8.7%)と09年からいずれも低下しましたが、委員会では、喫緊の健康危機に直面している勤務医が依然として相当数存在するとして、実効性のある対策を速やかに取る必要があるとしています。

当直が多いほど、オンコールが多いほど・・・
 今回の調査では、メンタルヘルス(うつ)の尺度となるQIDSの値や自殺リスク、労働能力障害の程度などが勤務状況によってどれだけ変化するかもクロス集計しました。
 その結果、「うつ症状の分布は休日の回数と明確な関連があり、休日が多いほど)低い」「当直回数が多いほど『生きている価値への疑問』を感じる割合が高まる」―などが分かりました。
 また、オンコールの回数が多いほど労働能力障害の程度が高まる傾向が認められ、委員会では、出勤はしていても体調不良などで能力を完全には発揮できない「プレゼンティーイズム」のリスクは、勤務状況に左右されると指摘しました。

勤務医の健康支援策に15のアクション
 今回の調査結果は、委員会が3月31日、日医の横倉義武会長に答申した「医療勤務環境改善支援センターと連携した勤務医の健康支援の推進」に盛り込まれました。
 答申の中で委員会は、勤務医の健康支援の具体策として「当直の翌日は休日にする」「診療補助者(医療クラーク)を導入し、医師は診療に専念」「予定手術前の当直・オンコールを免除」など15のアクションを提言しています(表2)。これらは、委員会が14年3月にまとめた「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」30項目のうち、勤務医からの要望が強いなど15のアクションをリストアップしたものです。
 メンタルヘルスや自殺リスク、労働生産性、勤務継続意思の高さを示す4つの指標が、これらのアクションによって改善するかどうかを評価したところ、15項目のうち14のアクションでは4つの指標すべてに対する改善効果が認められたということです。
 そのため委員会では、都道府県の「医療勤務環境改善支援センター」を活用してこれらのアクションを実行するよう呼び掛けています。医療従事者の勤務環境の改善を継続的に進めるため、14年の医療法改正に伴って各都道府県には支援センターの設置(努力義務)が求められました。

【兼松 昭夫 (かねまつ あきお)
「最新医療経営フェイズスリー」記者などを経て2006年、「医療・介護CBニュース」を創刊。CBニュース編集部元マネジャー。14年、「メディ・ウォッチ」を創刊し、チーフエディターに就任。16年からフリーに。】

うつ病─認知行動療法, 抗うつ薬の有効率 [うつ病]

https://askdoctors.m3.com/topics/detail/15412794

Q:
  なかなかうつが治りません。

A:
 抗うつ薬の有効率をご存じですか?
 意外と低いのです。

うつ病
 薬物療法については抗うつ薬が基本で,SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬),SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬),ミルタザピンなどが第一選択薬である.どれも有効率は40~60%くらいで,どれが優れているとは言えない.単剤での使用を原則とし,多剤併用はよほど信頼性の高いエビデンスがある場合を除き避けたい.【野村総一郎:産業メンタルヘルスとさまざまな精神疾患. 日本医師会雑誌 第144巻・第12号 2433-2436 2016】

P.S.1
 私も昨年5月~今年1月までうつ病で治療を受けました。
 薬の有効率を知ってからは、薬に期待しすぎるのは控えて、認知行動療法を主体にして徐々に治していきました。
 認知行動療法の参考になるサイトは以下です。
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf


P.S.2
 上記は、もちろん、私のコメントです。
 誰かの役に立てるというのは嬉しいことですよね。
 時間を見つけて「ネット医療相談」、微力ながら続けていきます。

日本医師会雑誌 生涯教育3月号問題―勤労者のメンタルヘルス [うつ病]

日本医師会雑誌2016-3月号.jpg

日本医師会雑誌 生涯教育3月号問題

 日本医師会雑誌2016年3月号に出題されている「生涯教育」10問より、知っておいても良いのではないかと思われる5問をセレクトしてお届け致します。
 医師対象のクイズに挑戦するのもたまには良いのではないでしょうか。

 さて、皆さん、どうでしたか? 比較的易しい問題もあれば難しい設問もあったかとは思います。正解を知るだけでは知識が深まりませんので、解説も加えますので参考にお読み下さいね。
 なお、正解に関しては、日本医師会雑誌 第144巻・第12号の記述などを元に私が下した判断であり必ずしも「正解」であるとは限りませんのでご了承下さい。

設問1-1:ストレスチェック制度で正しいのはどれか。1つ選べ。
正解:
 2
解説:
1. 制度趣旨
 この制度は人間や組織の心理にかかわるため,労使その他の関係者について「性悪説」を基本的な前提にすれば成立しなくなる.逆に,関係者間の信頼関係の向上を通じ,必要な情報が適切に拝受されるよう努めることで,職場環境の改善にもつながるよう設計されている.
2. 検査
 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(平成27年5月)(以下,SCマニュアル)32頁以下には簡略版の23項目が示されており,「心身のストレス反応」9項目(疲労,不安,抑うつ)+身体愁訴2項目(食欲・睡眠)の計11項目と,受検者を取り巻く環境にある「仕事のストレス要因(仕事の量的負担とコントロール度)」6項目+上司/同僚等の支援を指す「周囲のサポート」6項目の計12項目から成っている.
 これらの項目は,科学的に同趣旨との確認が可能な限り,実施者の判断や事業場内の衛生委員会等での審議を経て,別の質問内容をもって代えることもできるが,にわかには困難であろう.ただし項目の追加は容易なので,標準版調査票を基本に,その事業場の事情に応じた質問項目を加える方法が望まれる.
3.検査結果の取り扱い
 法第66条の10第2項によれば,実施者やその指揮下にある補助者や実施事務従事者に収集されたSC結果は,本人同意がなければ,高ストレスにより何らかのリスクがうかがわれる場合も含めて一切の例外なく,事業者側に伝えられてはならない.
 とは言え,実施(代表)者となった産業医が,直接・間接の面談等を通じてハイリスクを認識した受検者について,注意喚起ないし就業上の措置を事業者に勧告したり,検査後に継続的に面談を行うなどして経過観察を行うことは可能であり,こうした行為が,事情により健康配慮義務や注意義務の内容と解釈される場合もありうる.また,知りえたSC結果を踏まえて法定健診の一環として問診を実施し,その問診結果(≠SC結果)を事業者に伝達することにも特段の制約はない.
4.面接指導の申出
 SCの結果,高ストレスと判定された者のうち一定要件を満たす者,すなわち,
(1)厚生労働省が示す標準[基本的に,①仕事のストレス要因,②心身のストレス反応,③周囲のサポートのうち,②の点数が高いか,②が一定以上で(①と③が著しく高いこと:SC指針7(1)ウ(イ),SCマニュアル6(2)ウなど]に基づき事業者が個別に定めた基準を満たし,
(2)実施者が認め(SC規則第52条の15),
(3)労働者自らがそれを希望する場合(*実際には,その対応に職場の協力が必要と考えるか,たとえ事業者に知られてもその対応に事業者側の協力が必要と考えるか,その費用負担で面接指導の実施を望む場合などが多くなると思われる)(法第66粂の10第3項本文),
 事業者に対して,医師による面接指導を申し出る.
6.面接指導実施後の事後措置
 法第66条の10第4~6項により,面接指導の終了後,事業者はその結果を記録して保管すると共に,担当医から意見を聞き,それを踏まえて労働時間の短縮,配置転換などの事後措置を講じる義務を負う.
【三柴丈典:ストレスチェックの実施. 日本医師会雑誌 第144巻・第12号 2451-2454 2016】


設問1-5:職場におけるハラスメントで正しいのはどれか。1つ選べ。
正解:
 5
解説:
 パワーハラスメントは上司から部下に行われるものたけでなく,先輩・後輩間や同僚間,さらには部下から上司に対するものも含まれる.パワーハラスメントには,暴行や暴言,無視のほか,業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制なども含まれる.労働者の失敗を上司が叱責することは,適正な範囲内のものであればパワーハラスメントではないが,人格を否定するような叱責や執拗な叱責はパワーハラスメントに当たる可能性がある.
【水島郁子:ハラスメント. 日本医師会雑誌 第144巻・第12号 2480 2016】


設問2-1:抗うつ薬で正しいのはどれか。1つ選べ。
正解:
 5
解説:
 http://panic.sou-dan.net/treatment/medicine-3/
 日本ではパロキセチンやセルトラリン、フルボキサミン、エスシタロプラムの4種類がパニック障害の薬として認可されています。

うつ病:薬物療法については抗うつ薬が基本で,SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬),SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬),ミルタザピンなどが第一選択薬である.どれも有効率は40~60%くらいで,どれが優れているとは言えない.単剤での使用を原則とし,多剤併用はよほど信頼性の高いエビデンスがある場合を除き避けたい.
【野村総一郎:産業メンタルヘルスとさまざまな精神疾患. 日本医師会雑誌 第144巻・第12号 2433-2436 2016】


設問2-2:労働者のうつ病の原因となる可能性のあるストレスで誤っているのはどれか。1つ選べ。
正解:
 ②(仕事の自己裁量権や自由度が大きい)
解説:
 これは解説不要ですよね。


設問2-5:わが国のうつ病で正しいのはどれか。1つ選べ。
正解:
 ②で良いと思います。
解説:
1)性差
 http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-02-22-1
 うつ病って、女性のほうが有病率が高いんですが、自殺率は圧倒的に男性のほうが高い。ホルモンの要因もありますが、一つは、男性は自殺するまで誰にも言えないのもあると思う。
2)日内変動
 http://seseragi-mentalclinic.com/depression-daily-variation/
3)50歳代男性のうつ病によると思われる自殺者は急激に増加しているか?
 これに関するダイレクトな記述は「日本医師会雑誌2016年3月号」には無く、また、ネット上でも見つけられませんでしたが、ネットにて以下の疫学データを見つけました。
▼年齢別の年次推移
 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2740.html
 年次別の各年齢層の自殺者数の推移を見ると、1997年から98年の急増期には、50歳代前後の中高年の自殺の急増が中心であった。20~40歳代の増加の寄与率(増加数総数に占める割合)が28.2%であるのに対して、50歳代だけで寄与率がそれを上回る32.4%であった。定年前の働き盛りの世代を経済ショックが直撃し、中高年の失業の増大によって生活不安が大きく拡大したことが主な要因と考えられる。
 2003年の対前年の年齢別自殺者数を見てみると、1998年の時とは異なり、50歳代の増加は目立っておらず(自殺者数自体は相変わらず50歳代が中心であるが)、むしろ、20~40歳代の増加が顕著である。20~40歳代の増加寄与率は69.6%と50歳代の4.5%を大きく凌駕している。


 以上、参考になりましたら幸いです。

うつ病? 自分なりにアドバイスしました [うつ病]

Q. 昼寝 切れ痔? 眠れない

 https://askdoctors.m3.com/topics/unanswered?message_id=15371179

> 毎日生きてるだけの生活してます。生活には不自由してませんが、昼間眠気きて二度寝して1日二食食べ、夜は眠れず朝方まで起きています・・

 辛いですよね。
 「うつ病」の可能性が高いように感じますが、心療内科ないしは精神神経科などのメンタルクリニックを受診されたことはありますか?
 もちろん、「うつ病」じゃない可能性もあります。すなわち、うつ病では、症状の自覚が強く、抑うつ感・焦燥感・不安感が目立ちますが、あなたの場合には、「生活には不自由してません」と感じておられるからです。

 実は私は、昨年5月から今年1月までうつ病の治療を受けておりました。
 仕事は続けておりましたが(家族を養うため)、休日になると、あなたがここで書かれているような症状(生きるだけの生活、二度寝、食欲不振→体重減少、不眠と過眠)で全くやる気が出ず、昨年5月には新幹線ホームに飛び込みそうになる衝動にも駆られました。
 一番辛かったのは、「不眠」でした。それと、家族に迷惑を掛けること! ですから立ち直りの糸口を見つけるために、勇気を持って医療機関を受診しました。
 たまたま相性が合う先生に巡り会え、1月に治療を終えることができました。9か月の闘病生活でした。今では、主治医の先生とSocial Networking Service(SNS)で交流しております。
 私が回復への糸口をつかめたきっかけは、趣味のテニスを本格的に再開したことと、仕事に再び意欲を持てるようになったことが大きなきっかけです。もちろん、治療中の医師からのアドバイス(カウンセリング)も回復には必要でした。

 あなたの夢は何ですか? 夢にもう一度トライしてみませんか? うつ病の方を励ましてはいけないことは基本です。しかし、覚悟を持って夢に向かって歩み始めないと「心の病」からは本格的に回復できないのではないかと私は思っています。
 夢を追うことはそんなに簡単なことじゃありません。テニスにしても、決して楽しいだけではなく、痛みをこらえながらプレーすることだってしばしばです。
 趣味でも生活でも、覚悟を決めて本気で立ち向かわないと、「毎日生きてるだけの生活」からはなかなか抜け出せないのではないでしょうか。

 少しでも参考になりましたら幸いです。

P.S.
お勧め図書
1)清水徹男『不眠とうつ病─眠れてますか?』
 さらに、こうした病気を持っている人がうつ病を併発すると、病気の予後や、病気の重症度にも悪影響が及びます。心不全の患者さんを例にとると、うつ病を併発している場合、新たな心疾患の発生や死亡のリスクは二倍以上になります。また、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の患者さんではうつ病、とりわけ何も楽しめない「無快楽症」という症状(これはうつ病の中核症状の一つとも考えられている症状です)を持つ患者さんではその死亡率が非常に高いと言われます。無快楽症の症状のない患者さんは、発症一年後にも九〇%の方が生存していますが、無快楽症のある患者さんでは約七〇%の生存率にとどまっているのです。
【清水徹男:不眠とうつ病─眠れてますか? 岩波新書, 東京, 2015, p103】

2)こころの科学177・うつの心理療法─その真実 黒木俊秀編集, 日本評論社



P.S.
 上記の文章を送信しようとしましたら、「800字を超えています」とのアラームが・・。
 改変して800字以内にしたものを送信しました。

心のケア、スマホで相談 [うつ病]

心のケア、スマホで相談
 医療VB各社 法人需要を開拓

 従業員の心の健康状態を年1回調べる「ストレスチェック」の昨年12月の義務化をうけ、医療ベンチャー(VB)が法人向けに新サービスを相次ぎ打ち出している。働く世代のうつ病は深刻な問題になっている。社員の心のケアに力を注ぐ企業の需要を開拓する。
 iCARE(アイケア、東京・渋谷、山田洋太社長)は3月中旬、スマートフォン(スマホ)のチャットで医師や看護師が社員の心の悩みの相談に乗る法人向けサービス「ケアリー」を始める。うつ病の兆候を早期に発見したり、医療機関の受診を勧告したりする。料金は1人あたり年1800円で初年度100社との契約を狙う。
 メディカルフィットネスラボラトリー(東京・港、白岡亮平社長)はスマホやパソコンからストレスチェックができるサービスを始めた。厚生労働省が定める項目に加え、食生活や運動習慣など独自の質問項目を取り入れ内容を充実した。利用料金は1社あたり月額2万円から。5年後に300社の導入をめざす。
 ダイエット指導のFiNC(フィンク、東京・中央、溝口勇児社長)もパソコンやスマホでストレスチェックができるサービスを手がける。このほか薬剤師や栄養士などの専門家がメンタルヘルスの相談に乗るアプリ(月額500円)も配信しており、来年春までに50万人の利用を見込む。
【2016年3月7日付日本経済新聞 新興・中小企業】

私の感想:
 うつ病経験者として言わせてもらえば、生身の人間関係抜きの心のケアの相談なんて、根本的な解決には決して結びつかない!って思います。
 手軽に相談できるから便利という浅はかな思考からこんなことを考えたんだと思うが、「お前、うつ病の深刻さを分かっていないやろ!」って怒ってやりたい!

産業医が見た「うつ職場のリアル」 [うつ病]

20160215AERA-2.jpg産業医が見た「うつ職場のリアル」
 コミュニケーションがなく、働く人が孤立する職場が増えている。メンタル不調を抱える人も多い。いま、職場で何が起きているのか。現場を知り尽くす、産業医の3人が語り合った。【構成 編集部・高橋有紀】

裁量権ないまま24時間縛られる
阿部眞雄
 私は、現在18社ほど産業医をやっていて、最近は学校も担当しています。先生たちがメンタルを崩すケースも多いので。
海原純子
 私は男女雇用機会均等法ができた頃にクリニックをやっていたんですが、その頃から女性のストレス性疾患がすごく増えた。主に女性を20年ほど診てきましたが、高学歴の人でも自分の精神的なことってあまり知らない。これは教育をしなくちゃいけない、と大学で女性学や心身医学の基礎、健康教育などを教えました。ここ15年ほどは、企業のメンタルに関する現状を見てきました。
大室正志
 僕はそのもう少し後の世代で、産業医科大学という産業医を養成する大学を出て、臨床研修後、産業医の専門家を養成するプログラムを修了し、今は外資系など30社ほどの産業医をしています。

なんで生きてるのか
海原
 企業でメンタル部分の相談を受けていて、2008、09年頃から、ガラッと変わった感じがあります。リーマン・ショック後、社内のコミュニケーションが減り、妙に孤独感、不安感が強い人が増えた。若い人や正社員でも将来が不安。社内で挨拶もない、居心地が悪い、足を引っ張られるんじゃないかとビクビクしているんです。
大室
 外資系では、将来性のリスクは、本人もある程度織り込み済みです。例えば外資の金融の人が「お前今日でクビ」と言われても、ショックではあるけどまあ織り込み済み、と。それが、家族主義を掲げていたような日本の会社がリストラを始めたりして、今までそういったことを一切意識していなかった人が不安にさらされるようになったのが2000年代。
阿部
 コンピューター一台あれば仕事ができる時代になり、孤立労働になってしまった。仮面をかぶって、不安の中で、周りの顔色をうかがいながら仕事をしている。40、50代でメンタル不調になる人は、もういわゆるうつ病じゃなくて、適応障害でもなくて、なんで生きてるのかみたいな、そんな不安を持っている人が多い。ストレスチェック制度の義務化はいい時に始まったと思います。職場をコミュニケーションの場として考え直すきっかけになるんじゃないか。

上司がにこやかがカギ
海原
 やっぱり役職が下の者は上の顔色を見ます。上司がにこやかで気分よくやっているところはメンタル不調が少ない。あと給料も、ある種アイデンティティーみたいなところがあるので、特に男性の場合は給料が下がると自分の価値が下がったと感じて、落ち込みの原因になることも。特に最近感じます。

男性は悩みを語れない
大室
 メンタル失調の原因は複合要因。親の介護や離婚問題、40代からはプライベート要因も重なりやすい時期。そのあたりの中間管理職は要注意ですね。
海原
 男性は、紛らわすことで済ませちゃう人も。
大室
 酒、タバコ、ギャンブルとか(笑)。
海原
 ちょっとどこか痛くても薬飲めばいいとか、30代まではそれで乗り越えられても、40代になるとどうしようもなくなる。相談する人もいないし、弱みも見せられないし。
大室
 言語化する時も、男女の差があります。男性は、この頭痛はいつからどんな頻度で起きているという事象は雄弁に語れる。でも「なぜこの頭痛が起きていると思うか?」というような話はしない傾向があるので、こちらから聞く必要があります。うつ病って、女性のほうが有病率が高いんですが、自殺率は圧倒的に男性のほうが高い。ホルモンの要因もありますが、一つは、男性は自殺するまで誰にも言えないのもあると思う。
阿部
 女性は管理職も相談に来ますね。最初は部下や同僚の話をしにきて、何回か会っているうちに、自分の話がワーッと出る。それで2、3回泣いて帰ると、すっきりしたって。男性の管理職はほとんど来ない。
海原
 女性によくあるのは120%病。男の人が100やるなら120やらないと認めてもらえないから、120%で頑張って過剰適応になる。「下駄をはかされて管理職になった」なんて言われると、下駄じゃないと証明しなくちゃいけない。私自身もそうでした。病院で当直のとき、男性ドクターたちは、入院患者がいっぱいだと救急車を断るんです。当然ですよね。手一杯なんだから。私ともう1人の先輩女性ドクターは、過剰適応状態で無理しても救急を全部受け入れていた。

回復のためのリソース
阿部
 派遣とか協力会社が多くかかわっていると、いろんな立場の人が職場にいる。
海原
 人もしょっちゅう入れ替わって、全然誰かわからない。
大室
 昔の会社は終身雇用で、家族のように面倒を見るかわりに、ズケズケ本人に対して言った。今は基本的には成果で見て、本人の人格には介入しない。今の上司はパワハラを気にして、「お前のそのコミュニケーションだと嫌われる」「あなたのそういう性格は良くない」なんて言えない。結局、起きた事例だけを注意する。本人はいつまで経ってもコミュニケーションのフォームが変わらない。
海原
 会社が教えてくれないなら、仕事をする人自身が、自分の性格傾向や、ものを伝える方法を学ぶ必要がある。自分で自分の傾向を知り対策を考えなければならない時代です。
阿部
 大学では、就職課がそれをやる場合もありますね。
海原
 性格診断をするエゴグラムとかやってみると、意外に自分で見えていないものに気づくんです。客観的な視点で、助言できる環境が必要です。
阿部
 最近は4者面談をします。部下、上司、保健師と私。産業医は月に数回しか行かないけど保健師さんはずっと社内にいる。私が保健師と今の状況を確認しながら、上司と部下に何が問題かをそれとなく伝える。あとは2人に任せて、我々はフェードアウト。そうするとうまくいくケースがあります。いったんメンタル不調になってしまうと認知がゆがんで対話もできなくなってしまうので、その前に休職者を出さないことが一番大切です。「私はここにいていいんだ」という感覚をつくっていく。そうすると休む人も少なくなる。
大室
 自分の会社に起きていること、労働環境を冷静に見極めることも大切です。
海原
 回復の方法をいろいろつくっておくのも大事。ちょっと何か言われた程度ならアルコールでよくても、グサグサに自尊心が傷ついたらサポートが要る。ダメージのグレードに合わせて回復のためのリソースを利用できることはスキルです。リソースを用意しないのは、武器がなく戦っている状態。それに、複数のリソースを組み合わせないと、ストレスって乗り切れません。趣味とか、友達とか。
大室
 何も考えずに身体だけを動かす、編み物とか写経とかも心を整理するにはいい。いろいろなリソースの中で自分に合うものを探してほしい。手助けする上司も、部下が悩んでいるときに、ゴルフに誘うか飲みに誘う、球種が二つしかない人が多い(笑)。
阿部
 本人と労働をつなげる役割が産業医。精神科の先生は時間がないので、3分診療も結構あります。薬だけで終わりとか、診断書も本人の言う通りに書いちゃう。まだ復帰できないのに、本人の希望で復帰可と書いてあったり。
海原
 本当にひどい時、ありますね。絶対にこの人働けないよね、という状態なのに「復帰可」。どうしようと思ったり。
大室
 主治医は会社に対して医師法上の責任を負っているわけではなくて、目の前にいる患者さんがクライアントですから。
海原
 従業員は企凛にとって非常に重要なリソース。働く人がうまく仕事ができて、気持ちよく生きる手助けができれば、絶対に企業の収益になる。ダメにして辞めさせるよりもね。産業医がうまく機能して、両方の利益になれるといい。調子が悪かったから休んで、また出てきてダメなら辞めてください、じゃなく。より気持ちよく働いてもらって、企業の収益を上げるにはどうすればいいか。そういう視点を企業側は持ちたいですね。
【2016.2.15 No.7 AERA 22-24】


P.S.
> 40、50代でメンタル不調になる人は、もういわゆるうつ病じゃなくて、適応障害でもなくて、なんで生きてるのかみたいな、そんな不安を持っている人が多い。

 私もそんな感じでした。


> うつ病って、女性のほうが有病率が高いんですが、自殺率は圧倒的に男性のほうが高い。ホルモンの要因もありますが、一つは、男性は自殺するまで誰にも言えないのもあると思う。

 私は、昨年の春、東京出張から帰ってしばらくしてから妻に、「名古屋駅の新幹線ホームでふわ~と飛び込みそうな感覚に襲われた」ってことを打ち明けました。
 それを昨日、昼食に行ったとき、久しぶりに妻に話しました。=「まだあれから1年経っていないんやね~~。。。」
 そしたら妻は、「1年間あなたをよくお世話したわ」ってさらっと言い放ちました。
 私は妻に自殺をほのめかすことを話すことができたので回復に向かって一歩一歩踏み出せたのかも知れませんね。

うつ病 NIRS 生活改善療法 [うつ病]

 2012年2月12日に放送されましたNHKスペシャル「ここまで来た! うつ病治療」(http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20120212)の番組冒頭では、「うつ病は心の病気ではない。れっきとした脳の病気だ!」というナレーションが流れました。
 番組では、日本のうつ病診療においては、診断面で大きな進歩が出始めていることが紹介されました。それが光トポグラフィー(near-infrared spectroscopy;NIRS)という検査方法です。
 頭皮上から近赤外光を当てて、背外側前頭前野(dorsolateral prefrontal cortex;DLPFC)やその周辺の血液量の変化を測定し、うつ病かどうかを調べるのです。
 NIRSを用いることにより、「うつ病」と症状が似ている「双極性障害(そううつ病)」や「統合失調症」とを客観的に見分けられるようになってきており、誤診を防ぎ適切な治療につなげられると期待されています。うつ病と診断された患者の中に双極性障害の患者が41.4%も含まれていたという報告も紹介されました(Zimmermann P, Brückl T, Nocon A et al:Heterogeneity of DSM-IV major depressive disorder as a consequence of subthreshold bipolarity. Arch Gen Psychiatry Vol.66 1341-1352 2009)。この論文の抄録はウェブサイトにおいても閲覧可能です(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19996039)。番組においては、双極性障害の患者さんが抗うつ薬を服薬すると、気分の波が押し上げられ、危険な衝動に駆られることがあるという危険性も指摘されました。
 NIRSは、近赤外線の散乱光を用いて脳表面の血管の酸化・還元ヘモグロビン濃度を非侵襲的に計測することができ、空間分解能は2~3cmと低いものの、時間分解能は100msと他の脳血流評価法に比べて高く、神経活動による局所的な脳血流の変化を反映しているとされています(森田喜一郎、井上雅之、藤木 僚 他:認知症の早期発見と治療─精神生理学的検討. 臨牀と研究 Vol.89 1579-1583 2012)。
 NIRS検査は、精神科において2009年4月に「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」として先進医療に承認され、2012年12月時点で全国19施設において実施されています(野田隆政:光トポグラフィによるうつ病診断. 医学のあゆみ Vol.244 425-431 2013)。
 NHKスペシャルにおいては、以下のような事例紹介もされました。
 吉岡明子さん(仮名)はある医療機関を受診した際に、「軽い認知症の疑いがある」と告げられ、さらに「治療法はないよ。認知症だから。」と説明を受け絶望的な気持ちになりました。しかしその後、NIRS検査を受けて「うつ病」という診断が下されます。正確な診断名がついたことで、吉岡さんはようやく自分自身の病気と正面から向き合えるようになっていきます。
 国立長寿医療研究センター内科総合診療部長の遠藤英俊先生は、近赤外光脳計測装置(http://www.an.shimadzu.co.jp/bio/nirs/nirs2.htm)を用いると頭皮から20mm程度の深さの大脳皮質の活動状態がリアルタイムにカラーマッピング表示されることを利用して、認知症患者が昔話をしたときの脳の活動状態を調べました。その結果、昔話をしているときは大脳皮質の活動状態が顕著に亢進したそうです。このような研究を通して遠藤英俊先生らは、オーダーメイドの認知症ケアの確立を目指しているそうです。

メモ:うつ病におけるNIRSの臨床応用(http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/kokoro2.jpg
 「うつ病では、①言語流暢性課題開始直後からoxy-Hb賦活反応が速やかであるが、②賦活反応量は小さく、③賦活反応の重心値は言語流暢性課題の前半にある。
 双極性障害では、①言語流暢性課題開始後oxy-Hb賦活反応は緩やかで、②oxy-Hb賦活反応量はうつ病より大きく、③賦活反応の重心値は言語流暢性課題の後半にある。
 統合失調症では、①言語流暢性課題中の賦活反応量は少なく、②言語流暢性課題終了後に非効率的な賦活反応(再上昇)を示す。
 これまで研究としてしか行えなかった精神疾患についてのNIRS検査が、先進医療という形で、診療として行えるようになった。厚生労働省によると、先進医療の実施施設は2013年3月1日時点では21施設、2010年7月から2011年6月の1年間に実施された件数は703件であった。」(朴 盛弘、石田寿人、兼子幸一:Depressionの光トポグラフィー. 神経内科 Vol.79 42-49 2013)
 なお、2009年度に「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」として先進医療に承認されました近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy;NIRS)は、2014年度から「抑うつ症状の鑑別診断補助」のための光トポグラフィー検査として保険適用になっております。
 「精神疾患の補助診断のための光トポグラフィー検査」では、測定のためのプローブを頭に装着し、指定した頭文字で始まる単語を1分間でなるべく多く言うことを求める課題(言語流暢性課題)を用いて前側頭部を測定することで、うつ病、双極性障害、統合失調症それぞれの前頭葉機能の特徴を捉えることができます。検査に要する時間や手間は脳波検査より少なく、説明や準備の時間を含めて20分程度で実施することができる(福田正人:光トポグラフィー検査を用いた精神疾患診断. 日本医師会雑誌 第143巻 1020-1021 2014)。


 そして、2013年10月20日に放送されましたNHKスペシャル「病の起源・第3集 うつ病~防衛本能がもたらす宿命~」(http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20131020)においては、うつ病のメカニズムについて詳しく解説されました。そして手術以外にも、生活を改善する治療法(生活改善療法)がうつ病治療に有用であることも分かってきたことが報道されました。
 5億2000万年前に誕生した私たち人類の遠い祖先「魚類」は天敵から身を守るために扁桃体を持つようになりました。天敵が近づくとストレスホルモンが分泌され全身の筋肉が活性化して素早く逃げられるような仕組みが体に備わったのです。
 その後、哺乳類が発達していくなかで、「孤独」「記憶」「言葉」が扁桃体を激しく活動させるようになります。実際の恐怖の記憶、そしてその恐怖の体験を他の人から言葉として聞いただけでも扁桃体の活動が活発になり、ストレスホルモンの過剰な分泌が続き脳の神経細胞がダメージを受け、うつ病が引き起こされてしまうのです。文明の発達がうつ病を引き起こしやすい状況を作ってしまったわけです。
 タンザニアの狩猟民族であるハッザ族にはうつ病がほとんど無いことが分かっております。ハッザ族は集めた食料を平等に分け合う生活をしております。こうした分け隔てのない平等な生活をうつ病治療に応用したのが生活改善療法(Therapeutic Lifestyle Change;TLC)なのです。TLCでは、地域活動に参加するなど社会的な結びつきを強めることを重視しており、他に「運動」「規則正しい生活」なども採り入れ、約7割の方において治療効果が認められているそうです。

タンザニアの狩猟民族であるハッザ族にはうつ病がほとんど無い! [うつ病]

 2010年9月28日より2015年3月29日まで4年半にわたって執筆担当しました朝日新聞社の医療ブログ「ひょっとして認知症?」においては、「うつ病」に関する話題もご紹介しました。

 以下に、2015.3.19(第797回)~3.22(第800回)にかけて公開されました「うつ病」関連の話題を再掲してご紹介します。
 「TMS」、「DLPFC」、「DBS」、「TLC」、「光トポグラフィによるうつ病診断」などに関する基礎知識を理解する手助けとなってくれれば幸いです。

 タンザニアの狩猟民族であるハッザ族にはうつ病がほとんど無いことが分かっております。ハッザ族は集めた食料を平等に分け合う生活をしております。こうした分け隔てのない平等な生活をうつ病治療に応用したのが生活改善療法(Therapeutic Lifestyle Change;TLC)なのです。
 TLCでは、地域活動に参加するなど社会的な結びつきを強めることを重視しており、他に「運動」「規則正しい生活」なども採り入れ、約7割の方において治療効果が認められているそうです。


2015.3.19公開
 http://apital.asahi.com/article/kasama/2015031200044.html
第797回 感情に配慮したケアを─暴走する感情のブレーキ役
 またまた話題が脇道にそれますが、2012年2月12日放送のNHKスペシャル「ここまで来た! うつ病治療」(http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0212/)も衝撃的な報道でしたね。
 当初は「うつ病」特集なので視聴しないつもりでおりましたが、冒頭でいきなり、「うつ病は心の病気ではない。れっきとした脳の病気だ!」というナレーションに続いて、「最新の脳科学によって、うつ病のメカニズムが分かりはじめ、それによりアメリカでは画期的な治療が行われ始めている」なんて続けられたら、「脳科学オタク」の私はもう吸い寄せられてしまいます。
 50分間しっかり視聴してしまいました。
 最初に報道された画期的な治療法は、経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation;TMS)というもので、米国においては400か所の医療機関(放送当時のデータ)で導入されているそうです。
 簡単に説明すると、うつ病のために低下している脳の活動を、磁気刺激により正常な状態に戻していく治療ということになります。
 では、「うつ病のために低下している脳の活動部位」っていったいどこなのでしょうか。その部位は、TMS研究の第一人者であるハーバード大学のアルバロ・パスカルレオーネ教授らの研究により、左側の前頭葉の背外側前頭前野(Dorsolateral Prefrontal Cortex;DLPFC)という「判断や意欲に関わる部位」であることが突き止められてきました(メモ4参照)。

メモ4:背外側前頭前野
 前頭葉前野は機能的に背外側部、内側部、眼窩面に大別されます。それぞれの領域は相互に機能連絡しています。
 背外側部は、ワーキングメモリ(ワーキングメモリー)にとって重要な領域であり、このため遂行機能の中心的役割を担う領域と考えられています。
 実行機能障害(遂行機能障害)が起きてくると、作業を順序立てて効率よく行うことができなくなります。要するに、「段取り」が悪くなります。実行機能障害は、シリーズ第7回(http://apital.asahi.com/article/kasama/2012121700006.html)・第8回(http://apital.asahi.com/article/kasama/2012121800008.html)でご紹介しましたように認知症の代表的な中核症状の一つでしたね。
 そして、血管性認知症においては、実行機能障害はしばしば初発症状となります。

 背外側前頭前野(DLPFC)に続いて登場したうつ病に関わる脳の重要部分が「扁桃体(扁桃核)」でした。実は私はNHKスペシャル「ここまで来た! うつ病治療」を視聴するまで、うつ病の発症に扁桃体が深く関わっていることを知りませんでした。ちょっと自分の専門分野を離れると、メディアの担当記者あるいは患者さんの方が詳しい医療情報を持っていることはしばしば経験されることです。
 うつ病においては、扁桃体が過剰に活動し暴走している状態になっているそうです。扁桃体は、「不安・恐怖・悲しみなどの感情が生まれる場所」です。扁桃体の暴走によって、不安・恐怖・悲しみなどの感情が止まらない状態になります。その扁桃体の暴走にブレーキをかける役割を果たしているのがDLPFCと考えられているのです。
 軽度のうつ病患者さんにおいては、カウンセリング(特に、認知行動療法)によってDLPFCを活性化させ、それによって扁桃体にブレーキをかけることで症状を治すことも可能です。また近年では、脳の活動をリアルタイムに観察することも可能な時代となってきており、どんなことを思い浮かべると扁桃体が良い状態になるのかを自分自身がモニターを見ながら確認していくこともできるようになってきたため、うつ病発症を未然に予防することも可能になるかも知れないと期待されております。


2015.3.20公開
 http://apital.asahi.com/article/kasama/2015031200046.html
第798回 感情に配慮したケアを─磁気刺激で治療する試み
 「アルツハイマー病の人は健康な人よりも、脳の中の感情をつかさどる扁桃体(Amygdala)の反応性が高く、感情が敏感になっている」という論文を過日ご紹介しましたね。
 大脳辺縁系は大脳新皮質の内側にあり、海馬、扁桃体、帯状回などの部位が大脳辺縁系に属します。この大脳辺縁系をコントロールしているのが前頭葉です。認知症になって前頭葉の機能が低下してくると、情動を司る扁桃体の機能が活発になり感情が敏感になってくるのでしょうね。
 なお、「アリソン・フロガットが指摘したように、『記憶障害によって影響を受けるかもしれない認知する主体としての自分と、経験し、感情を味わう自分との間には、区別があります。後者は、前者に比べてずっと損傷が少ないものの、(表現を)言語化できないために妨げられているのかもしれません(Froggatt A:Self-awareness in Early Dementia. Mental Health Problems in Old Age: A Reader. Milton Keynes: The Open University. 1988 p133)。』」(マルコム・ゴールドスミス:私の声が聞こえますか─認知症がある人とのコミュニケーションの可能性を探る 高橋誠一/監訳 寺田真理子/訳 雲母書房, 東京, 2008, p134)という指摘もあります。
 さて、もしもうつ病に対する経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation;TMS)治療と同じメカニズムがアルツハイマー病においても期待できるのならば、アルツハイマー病患者さんに対してTMS治療を施行することにより過敏になった扁桃体を制御でき、不安や易刺激性などの感情などがコントロールできるようになるかも知れませんね。

 経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation;TMS)治療においては、約40分程度の磁気刺激が背外側前頭前野(DLPFC)に対して行われます。
 現在の標準的な刺激条件は、1日40分、週5日、4~8週間となっている(鬼頭伸輔:磁気刺激の応用─うつ病の治療. 医学のあゆみ Vol.244 617-620 2013)ようです。
 2012年2月12日に放送されましたNHKスペシャル「ここまで来た! うつ病治療」の後半においては、アラン・マネヴィッツ医師のクリニックでの事例が紹介されました。
 患者さんは、10年以上「うつ病」に苦しんできたミッチェル・カッツさん(59歳男性)です。マネヴィッツ医師は、「パキシル、プロザック、ゾロフト(ジェイゾロフト)、プリスティークの効果はどうでしたか?」と順次確認していきます。
 ミッチェルさんは、これまでに10種類以上の抗うつ薬を試してきたそうです。しかし、どの薬剤も期待した効果が得られなかったそうです。
 そのミッチェルさんがTMS治療を開始したところ、すぐに効果が現れ、2週間後にはミッチェルさんを長年苦しめてきた「体のだるさ」さえも消失していったそうです。
 マネヴィッツ医師のクリニックでは、TMS治療によって約7割の患者さんに効果が確認されているそうです。回復してもその状態を維持していくために、月に1回程度はTMS治療を続けていく必要がある方もいるようであり、TMS治療が本当に有効かどうかは現在も調査継続中だそうです。
 残念ながら日本国内においてTMS治療を受けられる医療機関はなく、認可にはまだ数年はかかる見通しだそうです。ただし、日本においても、安全性と有効性を確かめる研究の一環として、抗うつ薬が効かないなどいくつかの条件を満たす患者さんに限って磁気刺激を実施している病院もあることが番組の最後で紹介されました。紹介されましたのは、神奈川県立精神医療センター芹香(きんこう)病院です。番組放送当時に私が芹香病院のホームページ(http://seishin.kanagawa-pho.jp/kinkou/index.html)にアクセスした際には、「TMSの専用ダイアル」を開設したことが記述されておりました(現在はその記述はありません)。
 なお番組では紹介されませんでしたが、杏林大学精神神経科学教室(http://www.kyorin-u.ac.jp/univ/faculty/medicine/education/labo/psychiatry/)においても1999年から鬼頭伸輔講師らを中心として、臨床研究が実施されてきております。これまでのTMSの研究結果によると、左前頭前野への高頻度刺激(10~20Hz)により背外側前頭前野の低活動を亢進させ(Kito S, Fujita K, Koga Y:Changes in regional cerebral blood flow after repetitive transcranial magnetic stimulation of the left dorsolateral prefrontal cortex in treatment-resistant depression. J Neuropsychiatry Clin Neurosci Vol.20 74-80 2008)、右前頭前野への低頻度刺激(1Hz)により腹内側前頭前野の過活動を抑制する働きがあることが確認されています(Kito S, Hasegawa T, Koga Y:Neuroanatomical correlates of therapeutic efficacy of low-frequency right prefrontal transcranial magnetic stimulation in treatment-resistant depression. Psychiatry Clin Neurosci Vol.65 175-182 2011)。
 2013年8月号の日経メディカル(通巻549号)は、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation;rTMS)によるうつ病治療ガイドラインの概要が明らかになったことを報告しております。一部改変して以下にご紹介します。
 「杏林大精神神経科講師の鬼頭伸輔氏が、7月19~20日に開催された日本うつ病学会総会において、『薬事承認までに更なる吟味が必要な段階』としながらも、ガイドラインの進捗状況を報告した。
 現段階では、rTMSの対象患者は抗うつ薬治療抵抗性うつ病となる予定だ。『3~4種類の抗うつ薬に抵抗性を示す患者にはrTMSも効きにくいので、2種類程度の抗うつ薬に抵抗性の患者が適応になるのではないか(鬼頭氏)』。双極性障害に対する治療効果のエビデンスはないことから、双極性障害は適応外となる。
 またrTMSは、0.1%未満ではあるものの痙攣を生じるリスクが存在する。
 鬼頭氏は、あくまで私見と断った上で、うつ病治療に占めるrTMSの位置付けとして、『選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が効かない患者に対して、三環系抗うつ薬を処方する前段階でrTMSを試みるのがいいのではないか』と話している。」(2013年8月10日発行日経メディカル p31)
 福岡青洲会病院のウェブサイト(http://www.f-seisyukai.jp/about/keizugai.html)においては、「うつ病に対する経頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)の留意点」を閲覧することができます。
 日本国内におけるrTMSの審査状況は、2014年10月27日発行の週刊医学界新聞・第3098号p4(http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03098_02)において鬼頭伸輔医師が言及しておりますのでご参照ください。


2015.3.21公開
 http://apital.asahi.com/article/kasama/2015031200047.html
第799回 感情に配慮したケアを─生活改善でうつ病に効果も
 米国では、TMS治療よりもさらに驚きの治療も始まっているようです。それは、エモリー大学のヘレン・メイバーグ教授らが行っている脳深部刺激(Deep Brain Stimulation;DBS)という治療法です。
 日本においても、パーキンソン病治療などでは実施されている治療法ですね。名古屋市立大学病院脳神経外科のウェブサイト(http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/noge.dir/DBS.html)などにおいて詳しく説明されておりますのでご参照下さい。
 うつ病のDBSにおいて刺激する部位は「25野」という部位であり、ここは扁桃体の暴走を強力に抑える機能があるそうです。さらに25野は、背外側前頭前野(DLPFC)の活動も調整する役割も果たしているそうです。25野の部位については、ブロードマンの脳地図(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%84%B3%E5%9C%B0%E5%9B%B3)においてご確認下さいね。
 2012年2月12日に放送されましたNHKスペシャル「ここまで来た! うつ病治療」においてはエモリー大学の治療成績も紹介され、約40例の手術を施行し(放送当時のデータ)、その75%においてうつ病の症状が改善したそうです。有望な治療方法と期待されておりますが、DBSによる有害事象にも留意しておく必要があります。「①手術手技に伴った合併症(出血・痙攣など:5%以下)②DBS機器の不具合(電極の断線やコード埋没部の皮膚潰瘍・感染など:4~10%)③刺激に伴った副作用」(髙宮彰紘、三村 將:新しいうつ病治療─脳深部刺激(DBS)─. 最新医学 Vol.69 1872-1876 2014)などの有害事象が報告されております。
 そして、近年においてはアルツハイマー型認知症に対するDBSも海外で臨床試験として実施されてきております。その概要について、都立松沢病院脳神経外科の渡辺克成医長が論文にて報告しておりますので以下にご紹介しましょう。
 「現在臨床試験が行われているアルツハイマー型認知症に対するDBSは、海馬や脳弓などの記憶に関連した神経回路モデルを基盤とした治療法であり、その刺激電極の留置部位は脳弓である。
 脳弓-DBSにより糖代謝が亢進した部位は後部帯状回皮質や楔前部皮質であり、これらの領域はdefault mode network(default mode networkの機能不全という概念を用いて、アルツハイマー型認知症でみられる多彩な認知機能や行動異常を説明しようという仮説がある)の主要な構成要素であるとともに、アルツハイマー型認知症の早期からアミロイド沈着が生じる部位である。
 また、『New England Journal of Medicine』に小規模であるが、DBSが人間の記憶の強化に効果がある可能性があることが報告された(Suthana N, Haneef Z, Stern J et al:Memory enhancement and deep-brain stimulation of the entorhinal area. New Engl J Med Vol.366 502-510 2012)。」(渡辺克成:アルツハイマー型認知症などの認知症への非薬物療法の現状─DBSなど. 治療 Vol.95 2012-2017 2013)

 2013年10月20日に放送されましたNHKスペシャル「病の起源・第3集 うつ病~防衛本能がもたらす宿命~」(http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/1020/)においては、うつ病のメカニズムについて詳しく解説されました。そして手術以外にも、生活を改善する治療法(生活改善療法)がうつ病治療に有用であることも分かってきたことが報道されました。
 5億2000万年前に誕生した私たち人類の遠い祖先「魚類」は天敵から身を守るために扁桃体を持つようになりました。天敵が近づくとストレスホルモンが分泌され全身の筋肉が活性化して素早く逃げられるような仕組みが体に備わったのです。
 その後、哺乳類が発達していくなかで、「孤独」「記憶」「言葉」が扁桃体を激しく活動させるようになります。実際の恐怖の記憶、そしてその恐怖の体験を他の人から言葉として聞いただけでも扁桃体の活動が活発になり、ストレスホルモンの過剰な分泌が続き脳の神経細胞がダメージを受け、うつ病が引き起こされてしまうのです。文明の発達がうつ病を引き起こしやすい状況を作ってしまったわけです。
 タンザニアの狩猟民族であるハッザ族にはうつ病がほとんど無いことが分かっております。ハッザ族は集めた食料を平等に分け合う生活をしております。こうした分け隔てのない平等な生活をうつ病治療に応用したのが生活改善療法(Therapeutic Lifestyle Change;TLC)なのです。TLCでは、地域活動に参加するなど社会的な結びつきを強めることを重視しており、他に「運動」「規則正しい生活」なども採り入れ、約7割の方において治療効果が認められているそうです。


2015.3.22公開
 http://apital.asahi.com/article/kasama/2015031200049.html
第800回 感情に配慮したケアを─光で脳血流を測定
 日本のうつ病診療においては、診断面で大きな進歩が出始めております。
 それはNHKスペシャル「ここまで来た! うつ病治療」(http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0212/)のウェブサイトにも記載されております光トポグラフィー(near-infrared spectroscopy;NIRS)という検査方法です。
 頭皮上から近赤外光を当てて、背外側前頭前野(dorsolateral prefrontal cortex;DLPFC)やその周辺の血液量の変化を測定し、うつ病かどうかを調べるのです。
 NIRSを用いることにより、「うつ病」と症状が似ている「双極性障害(そううつ病)」や「統合失調症」とを客観的に見分けられるようになってきており、誤診を防ぎ適切な治療につなげられると期待されています。うつ病と診断された患者の中に双極性障害の患者が41.4%も含まれていたという報告も紹介されました(Zimmermann P, Brückl T, Nocon A et al:Heterogeneity of DSM-IV major depressive disorder as a consequence of subthreshold bipolarity. Arch Gen Psychiatry Vol.66 1341-1352 2009)。この論文の抄録はウェブサイトにおいても閲覧可能です(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19996039)。番組においては、双極性障害の患者さんが抗うつ薬を服薬すると、気分の波が押し上げられ、危険な衝動に駆られることがあるという危険性も指摘されました。
 NIRSは、近赤外線の散乱光を用いて脳表面の血管の酸化・還元ヘモグロビン濃度を非侵襲的に計測することができ、空間分解能は2~3cmと低いものの、時間分解能は100msと他の脳血流評価法に比べて高く、神経活動による局所的な脳血流の変化を反映しているとされています(森田喜一郎、井上雅之、藤木 僚 他:認知症の早期発見と治療─精神生理学的検討. 臨牀と研究 Vol.89 1579-1583 2012)。
 NIRS検査は、精神科において2009年4月に「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」として先進医療に承認され、2012年12月時点で全国19施設において実施されています(野田隆政:光トポグラフィによるうつ病診断. 医学のあゆみ Vol.244 425-431 2013)。
 NHKスペシャルにおいては、以下のような事例紹介もされました。
 吉岡明子さん(仮名)はある医療機関を受診した際に、「軽い認知症の疑いがある」と告げられ、さらに「治療法はないよ。認知症だから。」と説明を受け絶望的な気持ちになりました。しかしその後、NIRS検査を受けて「うつ病」という診断が下されます。正確な診断名がついたことで、吉岡さんはようやく自分自身の病気と正面から向き合えるようになっていきます。
 国立長寿医療研究センター内科総合診療部長の遠藤英俊先生は、近赤外光脳計測装置(http://www.an.shimadzu.co.jp/bio/nirs/nirs2.htm)を用いると頭皮から20mm程度の深さの大脳皮質の活動状態がリアルタイムにカラーマッピング表示されることを利用して、認知症患者が昔話をしたときの脳の活動状態を調べました。その結果、昔話をしているときは大脳皮質の活動状態が顕著に亢進したそうです。このような研究を通して遠藤英俊先生らは、オーダーメイドの認知症ケアの確立を目指しているそうです。

メモ5:うつ病におけるNIRSの臨床応用(http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/kokoro2.jpg
 「うつ病では、①言語流暢性課題開始直後からoxy-Hb賦活反応が速やかであるが、②賦活反応量は小さく、③賦活反応の重心値は言語流暢性課題の前半にある。
 双極性障害では、①言語流暢性課題開始後oxy-Hb賦活反応は緩やかで、②oxy-Hb賦活反応量はうつ病より大きく、③賦活反応の重心値は言語流暢性課題の後半にある。
 統合失調症では、①言語流暢性課題中の賦活反応量は少なく、②言語流暢性課題終了後に非効率的な賦活反応(再上昇)を示す。
 これまで研究としてしか行えなかった精神疾患についてのNIRS検査が、先進医療という形で、診療として行えるようになった。厚生労働省によると、先進医療の実施施設は2013年3月1日時点では21施設、2010年7月から2011年6月の1年間に実施された件数は703件であった。」(朴 盛弘、石田寿人、兼子幸一:Depressionの光トポグラフィー. 神経内科 Vol.79 42-49 2013)
 なお、2009年度に「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」として先進医療に承認されました近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy;NIRS)は、2014年度から「抑うつ症状の鑑別診断補助」のための光トポグラフィー検査として保険適用になっております。「精神疾患の補助診断のための光トポグラフィー検査」では、測定のためのプローブを頭に装着し、指定した頭文字で始まる単語を1分間でなるべく多く言うことを求める課題(言語流暢性課題)を用いて前側頭部を測定することで、うつ病、双極性障害、統合失調症それぞれの前頭葉機能の特徴を捉えることができます。検査に要する時間や手間は脳波検査より少なく、説明や準備の時間を含めて20分程度で実施することができる(福田正人:光トポグラフィー検査を用いた精神疾患診断. 日本医師会雑誌 第143巻 1020-1021 2014)そうです。

 2012年2月12日に放送されましたNHKスペシャル「ここまで来た! うつ病治療」(http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0212/)の番組冒頭で流れた「うつ病は心の病気ではない。れっきとした脳の病気だ!」というナレーションと類似した意味のフレーズが認知症に関する論文でも記載されております。それは、熊本大学医学部附属病院神経精神科の橋本衛先生が述べている「これまでは『妄想』や『異常行動』として漠然と解釈されてきた症状が、認知神経科学の範疇で説明できる可能性が示された。」という言葉です。
 橋本衛講師は、レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)におけるカプグラ症候群(メモ6参照)について、脳科学的観点から以下のように言及しております(橋本 衛:認知症における精神症状と認知機能障害の関連. 老年精神医学雑誌 Vol.22 1269-1276 2011)。
 「EllisとYoungの提唱した『相貌失認の鏡像』仮説を裏づける症例として、HirsteinとRamachandran(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1688258/)が症例を報告しており、カプグラ症候群が生じる機序について、側頭葉下面から扁桃体への情動的な視覚入力の離断を指摘した。すなわち、側頭葉が保たれているため両親の顔の認知できるが、その視覚的な情報が情動の中枢である扁桃体および辺縁系に伝わらないため、目の前にいる両親に対するなじみの感情が湧いてこず、『別人だ』という判断に至ると説明した。…(中略)…DLBでは、扁桃体の機能不全だけではなく、視覚認知障害やそれに伴う錯覚もあわさって情動喚起の異常を引き起こし、その結果、熟知相貌に対するなじみの感情が失われ、カプグラ症候群が引き起こされると説明される。」(一部改変)

メモ6:相貌失認、カプグラ症候群
 相貌失認の責任病巣は、右ないしは両側の紡錘状回と考えられております。紡錘状回は、側頭葉の一部分(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%A1%E9%8C%98%E7%8A%B6%E5%9B%9E)です。
 紡錘状回は、顔に関する構造的で静的な特徴の処理に関与しています(加藤元一郎:視線と表情の認知について. 認知神経科学 Vol.13 43-49 2011)。
 カプグラ症候群(Capgras syndrome)は替え玉妄想とも言い、配偶者や父母など自分に強い影響力を持つ人物が偽者にすりかわっていると確信する妄想です。
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