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繰り返す質問(Repetitive questioning;Godot症候群) [アルツハイマー病]

認知症、ケンカの理由~異なる事実~
 https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160916-OYTET50014/?catname=column_kinoshita%3Ffrom%3Dfb

 「おそらく、二通りの解決方法があります。ただし、効率的な選択肢ではありません。

 その1.まず、なぜその事実争いが起きたのか。なぜ、泰子さんが何度も曜日を夫に尋ねるのか、に着目します。

 おそらく、いつも曜日を気にするということは、なにか曜日にちなんだ用事が泰子さんの生活のリズムを作っている可能性があります。遅刻できないし、うっかり休むこともできない。聞いてみると、やはり趣味のサークルが週2回月、木曜日にある、といいます。緊張と楽しみが折り重なった気持ちなのでしょう。泰子さんには大切なイベント。今日の曜日がわからないと、不安になるのも当たり前です。別の手段で、大きな日付と曜日付き電子時計が部屋の真ん中にあれば、夫に繰り返し曜日を繰り返し尋ねることはなくなります。洞察が正しければ。」


繰り返す質問(Repetitive questioning;Godot症候群)

 繰り返す質問(Repetitive questioning;Godot症候群)への対応に関してはアピタルにおいても二度ほどご紹介したことがあります。
 不安への対応が基本となりますね。
 それと、認知症の人は「今」この時を刹那に生きているので、「先の話をすることは絶対に控えること!」という留意点でしょうか。
 

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第191回『認知症と長寿社会(笑顔のままで)─介護者の介護負担をどうみるか』(2013年7月9日公開)
 2011年1月30日付朝日新聞朝刊の「読書」欄において、信濃毎日新聞取材班が77回にわたって連載したルポルタージュをまとめた一冊『認知症と長寿社会─笑顔のままで』(講談社現代新書)が紹介されました。
 「介護者の介護負担」を評価するには、数字化しないと客観的に比較できないため、学術的にはZaritなどの指標(メモ1参照)が用いられます。しかし、現場で起きている介護者の苦悩を正確に捉えることはなかなか困難です。信濃毎日新聞取材班のルポ記事は、その捉えにくい部分を見事に表現しています。

メモ1:介護者の介護負担を評価する尺度
 認知症患者さんの介護者の介護負担を評価する尺度としては、ZaritらによるZarit Caregiver Burden Interview(ZBI)が代表的な指標です。
 原法は29項目の質問から構成されています。神戸学院大学大学院人文学部人間心理学科の博野信次教授(神経内科医)らは22項目からなる日本語短縮版を作成し、日本語版ZBIが介護者のburden(負担)の評価に有用であったことを報告しています。
 22項目の質問に関して、介護者の反応が5段階(0~4点)で評価され、点数が高いほど負担感が強いということになります。
 今までの研究では、妄想・幻覚、不安・うつ、攻撃的行動がburdenに深く関連し、見当識障害、記憶障害は関連しないことなどが報告されています(博野信次:痴呆症患者の介護者の負担─日本語版ZBIによる検討─ 脳神経 Vol.50 561-567 1998)。

 なお、不安を基盤として強迫症状が出現することもあります。そのことを非常に興味深く紹介している記述がありますので以下にご紹介しましょう(一部改変)。
 「アルツハイマー病(AD)における精神症状・行動異常の中で頻度が高いのは、抑うつとアパシーだが、その次に多いのが不安である。
 認知症に伴う不安症状の現れ方はさまざまであり、パニック障害、身体表現性障害(心気症など)は、臨床場面においてしばしば遭遇する。その他に、予定が入っていることを何度も繰り返して聞く『Godot症候群』や、独りで残されたときに何度も電話をかけて家人を困らせるような状態もよくみられる。これらの状態は家人の介護困難感を増大させる大きな要因となりうる。軽度認知障害レベルの症例でGodot症候群を伴うと、ADへの移行率が高いとの報告がある。一方で、このような不安症状は、認知機能が中等度以上に低下するにつれて次第に軽減ないし、消退していくようである。」(編集/朝田 隆 著者/服部英幸:誤診症例から学ぶ 認知症とその他の疾患の鑑別. 医学書院, 東京, 2013, p93)

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第743回『「つきまとい(シャドーイング)」への対応─作業療法もケアの一つ』(2015年1月24日公開)
 さて、話題を再び「つきまとい」に戻しましょう。
 独立行政法人国立長寿医療研究センターの服部英幸・行動心理療法部長は、「まとわりつき(つきまとい)の出現頻度は、軽度から中等度の認知症患者のうち67%に認められたという報告がある。不安を和らげる接し方の工夫をしたり、他の興味ある事柄(作業療法・レクリエーションなど)に参加してもらう」(服部英幸編集:BPSD初期対応ガイドライン ライフ・サイエンス, 東京, 2012, pp71-72,133)ことなどが直ちにできるケアであると報告しています。作業療法は、「つきまとい」だけではなく、繰り返す質問(Repetitive questioning;Godot症候群)にも効果があることが報告されております。
 服部英幸先生は、2012年10月4日に三重県津市に講演(第9回中勢認知症集談会)に来て下さいました。
 服部英幸先生が編集された著書『BPSD初期対応ガイドライン』においては、認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)に関して対応方法などが具体的に紹介されております。
 服部英幸先生は、著書のなかで、「行動異常」に対しては薬剤の効果が乏しいと述べております。以下にその部分をご紹介します。
 「BPSDはその名の通り精神症状と行動異常の2つの状態が混在している。この2つは単独で出現することも、複数が同時に出現することもある。精神症状にはみえないものがみえる、聞こえないはずのものが聞こえる、検査で異常がみつからない身体の痛みや異常な感覚などの幻覚や、真実でないことを真実であると思い込み、説得に応じない妄想などが含まれている。そのほかにうつ気分、易怒性など気分の変調も精神症状である。一方の行動異常には徘徊、常同行為のほかに、物をあてもなく集める濫集(らんしゅう)、便をつかむ弄便などが含まれている。この2つの違いは対応にも関連している。一般に、精神症状に属するものは薬物の効果が期待できるが、行動異常では効果が乏しく、非薬物療法が中心になる。」(服部英幸:BPSD初期対応ガイドライン ライフ・サイエンス, 東京, 2012, p28)


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第139回『認知症のケア 家族でもフルネームで呼んでみよう』(2013年5月13日公開)
 認知症ケアアドバイザーの五島シズさん(全国高齢者ケア協会監事、認知症介護研究・研修東京センター客員上級研究員)が2013年1月10日に来津され、第10回中勢認知症集談会において、「身近な人に認知症が始まったら」というタイトルでご講演されました。
 講演の中で紹介された、「好ましい接し方」というスライドは印象的な内容でした。
 五島シズさんは、「好ましい接し方」として10のポイントを挙げられておりました。
1 自尊心を傷つけない
2 近づいて話す
3 情報は簡潔に伝える
4 納得のいくように話す
5 わかる言葉を話す(方言などを利用する)
6 相手の話に合わせる
7 感情に働きかける
8 フルネームで呼ぶ
9 現実を知らせる
10 昔話をする
 2の「近づいて話す」に関しては、アイコンタクトは大切だが、排泄のケアをするときには、羞恥心に配慮し、目を見ないほうがよいと説明されておりました。そして、女性の排泄介助の際には、エプロンをするなどして覆ってあげると恥ずかしがらず排尿しやすくなると説明されておりました。
 8の「フルネームで呼ぶ」に関連して、子どもの前で呼び合っていた「お父さん」「お母さん」という呼び方で話し掛けると、話しかけた相手が配偶者であっても、そうだと気づかないケースがあります。ところが、きちんとフルネームで呼びかけると、相手が妻だと(夫だと)分かってくれることはしばしばありますよとお話されておりました。
 そして、認知症の人は「今」この時を刹那に生きているので、「先の話をすることは絶対に控えること!」とお話されました。例えば、次の日曜日に本人が会うのを楽しみに待っている娘さんが来る予定になっていた場合に、喜ばせようと思って「今度の日曜日に娘さんが来ますからね」と伝えてしまうと、急に玄関の方を気にするようになり、部屋と玄関を行き来しソワソワして落ち着かなくなってしまい認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)が誘発されてしまうといったケースは実に多いですから注意して下さいねと強調されておりました。
 さて皆さん、10の昔話を聞く際に、決して言ってはいけない2つの禁句があるのですがそれが何か分かりますか?
 それは、「今ならこうよね」「私ならこうするわ」という反応なのです。この2つの言葉は、認知症の人が昔話に浸っている状況を現実へと連れ戻し、認知症の人が主役であるという一番重要なポイントへの配慮を欠いた発言であると五島シズさんは述べておられました。
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