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認知症と精神科医療 [認知症]

認知症と精神科医療

 私は精神科医ではありません。ですから、認知症における精神科入院医療の実態はあまり詳しく知りません。
 認知症の人におきましてBPSDが顕著となって介護が行き詰まったときに、精神神経科に入院を依頼することがあります。ただ、その後どうなったかを知ることは極めて稀です。
 しかしながら噂としては、寝かしつけられ薬漬けにされ、寝たきりになって・・という話は時折耳に入ってきます。ただそれが、一部なのか、大多数なのか例外的なのかその辺りがよく分からないんです。
 石川県立高松病院副院長の北村立(きたむら たつる)医師(精神科医)の活動をTVで拝見しておりますと、精神科入院医療の重要性を感じ取ることができます。
 一方、私の担当する榊原白鳳病院3F療養病床(ベット数:59)にも、精神科での治療を終えた認知症患者さんが何名か入院されております。たくさんの向精神薬が管から注入されています。それでも奇声を上げられております。在宅や施設での受け入れが困難な方がおられるのもまた一つの事実なんだと思います。やめたくてもやめられない向精神薬があるのも現実の姿です。
 精神科医療(認知症の入院医療)の暗部の部分は私には分かりかねますが、明るい部分は時折報道されます。
 以前、アピタルで記載した北村立医師などの活動を以下に振り返ってみたいと思います。
 

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第159回『認知症のケア 向精神薬の使用は慎重に』(2013年6月2日公開)
 抗精神病薬も含めて向精神薬(メモ4参照)は、認知症治療の中では基本的には必然性のない薬です。近年では、抗精神病薬については安易な使用は控えるよう警鐘が鳴らされております。
 しかしながら、かかりつけ医や認知症専門医に対する調査では、通院中の認知症患者さんの実に95%以上に何らかの向精神薬が用いられている(繁田雅弘編 角 徳文著:実践・認知症診療─認知症の人と家族・介護者を支える説明 医薬ジャーナル, 大阪, 2013, pp85-89)ことが指摘されております。
 BPSDが目立つ患者さんを、安易に精神科病院に医療保護入院させずに地域で支えていくことは、もの忘れ外来に課せられた大きな責務であると私は考えております。したがって、認知症診療の第一線に立つ医師には、抗精神病薬をうまく使いこなす知識と経験が求められることになります。介護者のケアにも配慮しつつ、患者さんのQOL(生活の質)を損なわないよう、抗精神病薬の使用を最小限に留めようという姿勢が基本原則となります。
 2013年3月20日放送のハートネットTV『シリーズ認知症 “わたし”から始まる(1)―日本・脱病院の模索―』(http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2013-03/20.html)においては、石川県立高松病院副院長の北村立(きたむら たつる)医師(精神科医)らが調査した再入院の現状についても報道されました。
 再入院した人の半数(50%)は、一人暮らしか二人世帯であり、さらにその4割が誰も頼る人がなく地域から孤立している状況であることが分かったそうです。北村立医師はこの状況について、「1対1というのは、夫婦でも子どもであっても煮詰まりやすい関係にあって、つながりが強いから、看たい気持ちも強いけど、排他的になって孤立していく」と解説しておりました。
 さらに再入院した人のうち、本来は治療の必要ない人が1割含まれたいたそうです。その主因は、「介護保険と本人の希望のずれ」であったそうです。例えば、「本人にとっては(施設で)することがないから『帰る』と言っているのに、それが施設側からすると、『帰宅願望が強い』となってBPSD扱いされてしまっている」と北村立医師は指摘しておりました。

メモ4:向精神薬
 向精神薬とは、中枢神経系に作用し、生物の精神活動に何らかの影響を与える薬物の総称であり、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬などが含まれます。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第178回『深刻化する認知症患者の長期入院 退院に向けてケア会議』(2013年6月21日公開)
 では、精神科病院における長期入院の解消に成果をあげている取り組みについてご紹介しましょう。
 2012年11月22日放送のクローズアップ現代(http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3278.html)では、「“帰れない”認知症高齢者 急増する精神科入院」と題して、増え続ける認知症高齢者の精神科病院への入院をどう解消するのかが大きな課題として取り上げられました。
 放送された内容で私が強く印象に残ったのは、石川県立高松病院副院長の北村立(きたむら たつる)医師(精神科医)らの取り組みです。
 北村立医師らは、4年前から退院を促すための様々な取り組みを始めているそうです。まず取り組んだことは、家族や介護施設が抱えている退院後の不安を解消するための退院に向けてのケア会議でした。ケア会議では、家族や介護施設の担当者が集まり、退院後の過ごし方について話し合われます。その中で北村立医師は、「(退院してみて)うまくいかなかったら、また入院すればいいんだし…。やってみないことには分からんから」と話しておりました。
 その他に北村立医師が取り組んでいることが、「早期治療」と「BPSDの予防」です。早期治療とは、医師自ら介護施設に出向き、認知症の行動・心理症状(BPSD)がひどくなる前に治療に取り組むものです。BPSDの予防とは、認知症と診断後に病院のスタッフが患者さんの自宅を訪問し、関係者に集まってもらいBPSDの原因を探りアドバイスする取り組みです。
 当日の番組コメンテーターを務めた敦賀温泉病院・玉井顯院長(精神科医)は、北村立医師らの取り組みを見て、認知症はチーム医療が一番大切であるがそれを実践していることが素晴らしく、生活の場を実際に見ているのでBPSDの原因が分かり対処方法を家族に伝えられるし、精神科病院は「最後の砦」なのでいつでも再入院できますよと保証する(バックアップ体制をしっかりする)ことで家族が安心し長く在宅で過ごすことができるのではないかと高く評価しておりました。
 北村立医師らの取り組みは、2013年3月1日付朝日新聞「認知症とわたしたち」においても取り上げられました。記事においては、「入院期間をなるべく短くしようと、病院は4年前から、家やグループホームヘ訪問看護を始めた。症状がひどくなったときには再入院させ、落ち着けばまた家へ帰す。抗精神病薬や睡眠薬などは最小限に抑える。患者の活動量が落ちれば看護は楽だが、寝たきりになって家へ帰れなくなる恐れもある。最近は、患者の半分近くは2カ月以内で退院できるようになった。」とその成果も報道されました。

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 2013年6月15日に放送されましたNHK・Eテレ/チョイスでは、「もし認知症とわかったら」(http://www.nhk.or.jp/kenko/choice/archives/2013/06/0615.html)に関連するチョイスがいくつか示されました。
 私が一番印象に残ったのが、若狭町福祉課地域包括支援センターの髙島久美子さんらが取り組んでいる試みです。
 髙島さんは、若狭町に住む65歳以上の人を年1回訪ねており、戸別訪問により認知症の早期発見に努めております。さらに、家族だけではなくご近所の方に対しても認知症ケアについてアドバイスし、認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)を未然に防止することに精力的に取り組まれておりました。
 若狭町では、これらの取り組みによって、認知症患者の入院数(平成24年人口比)が福井県の周辺自治体の約5分の1であったという成果をあげているそうです(嶺南認知症疾患医療センター調べ)。
 町ぐるみで認知症対策に取り組むことにより、BPSDを未然に防止し精神科病院への入院を減らした具体的な事例と言えますね。

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 事例を紹介しよう。90歳の母親を60代後半の娘さんが一人で介護していたケースである。娘さんが急性の心筋梗塞で入院することなり、その日から誰が母親の介護をするかが問題となった。関与していた初期集中支援チームは、残された母親にはほとんど清神症状がないのに、なんと認知症疾患医療センターの民間精神科病院に入院させて、支援終了としてしまったのである。地域の介護施設でショートステイをつなげたり、工夫次第でいくらでも地域生活を継続できていたかも知れないケースである。
 精神科病院は「地域にとって困った存在」を強力に引き寄せ、入院させてしまうことでその存在を目の前から消し去ってくれる。地域で対人的支援を行っている人にとっては大変に便利な施設である。とりあえず「困った人」を引き受けてくれて、問題が解決してしまうので、一回利用すると癖になってしまう。 しかし利用したことによる副作用は極めて大きく、こうした「便利な施設」が地域にあるために、「工夫すれば地域で支えることができる人」がみな精神科病棟に吸い込まれてしまうことにもなりかねない。こうした「便利な施設」があると地域で対人支援を行っている人々が支援方法を工夫することがなくなるので、多様な人を地域で支える仕組みが育たないのである。
 結局、現在の日本では精神科病床が過剰に存在しているために地域力が育たず、いつまでたっても精神障害者を地域で支えられない状態がつくられてしまっているのである。
 さらに、この精神科病院の吸引力のために、私たちは普通に生活していると精神障害がある人と接する機会が奪われてしまい、国民全体の精神障害に関する理解も深まらないのだ。いわば、過剰な精神科病床の存在のために大きな社会的損失が生じているのである。真の共生社会の実現のためには、精神科病床は適正数まで強制的に減少させる必要があると考えられる。
 病床削減の方法としては、厚生労働省の審議会「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」で検討されていた「病床転換型居住系施設」は極めて問題の大きい、危険な施策である(厚生労働省:長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000almx.html#shingi141270)。単なる看板の書き換えに終わってしまう可能性が高いことと、日本と同じような精神科医療状況にあるベルギーで、似たような施策を行い、20年以上の社会実験の末に完全に失敗に終わったからである。
【上野秀樹:認知症の人の支援─初期集中支援チームと精神科医療供給体制. 公衆衛生 Vol.78 683-688 2014】


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第179回『深刻化する認知症患者の長期入院 専門病院と介護老人施設の連携をスムーズに』(2013年6月22日公開)
 最後に、石川県立高松病院副院長の北村立医師が論文で報告している理念をご紹介して本稿を閉じたいと思います(一部改変)。
 「在宅や介護老人施設などで対応困難なBPSDが発生した場合、可及的速やかに対応でき、かつ人権擁護の観点から法律的な裏づけがあるのは精神科病院しかないと思われる。したがってBPSDの救急対応も精神科病院の大きな役割として強調されるべきである。
 石川県立高松病院ではBPSDに対する救急・急性期治療の重要性を認識し、早くからそれを実践してきている。具体的には認知症医療においても365日24時間の入院体制を合言葉に、『必要なときに即入院できる』体制を作り上げてきた。
 さて、今後爆発的な増加が予想される認知症の人をできるかぎり地域でみていくためには、BPSDの24時間の対応体制の整備が必要なのは明らかであるが、わが国にはそのような報告は筆者らの知る限りない。
 当院のような365日24時間受け入れ可能な精神科専門医療機関が地域にあれば、多少重症のケースであっても、介護老人施設でぎりぎりまで対応できる可能性が示されている。施設が困ったときにただちに対応すれば信頼が得られ、状態が安定すれば短期間で元の施設に受け入れてもらうことが可能となり、専門病院と介護老人施設の連携がスムーズとなる。
 成人の精神科医療と同様、高齢者に認められる急性一過性の激しい精神症状は、適切に対応すれば容易に消退するものであり、これこそが精神科における認知症急性期医療の重要性を示すものである。また、筆者らの臨床経験からいえば、家族の心配や介護負担感を増やさないようにするには、初診時から365日24時間いつでも受け入れることをあらかじめ保証することが重要である。家族が困ったときにすぐ対応すれば、介護者は余裕をもって介護に当たることが可能であり、近年問題となっている介護者のメンタルヘルスを保つうえでもきわめて有益と考える。」(北村 立 他:石川県立高松病院における認知症高齢者の時間外入院について. 老年精神医学雑誌 Vol.23 1246-1251 2012)
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