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第36回日本認知症学会学術集会【金沢】 [認知症の早期発見を希望に繋げるために]

第36回日本認知症学会学術集会
 http://jsdr36.jp/general/
第36回日本認知症学会.JPG

 演題の応募を済ませました。


演題名
 認知症の告知と終末期意向調査・第三報
 『認知症の早期発見を希望に繋げるために』【笠間 睦】

抄録本文
【目的】
 認知症の告知に積極的に取り組む医療機関は少ない。しかし、比較的早期の段階で告知し、終末期医療に対する意向を確認できれば、自己決定に基づく医療の実現に繋がる。第35回日本認知症学会において第二報(http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15)を報告した。今回、新患での集計結果を報告するとともに、告知に際して私が配布している冊子(https://drive.google.com/file/d/0B_luVeDtj5gLMDh3dElDTk5wekE/view?usp=sharing)を紹介する。
【方法】
 2016年4月以降、認知症新患全例を対象として告知および終末期医療に関する意向調査を実施している。
【結果】
 予後告知まで希望した8名が経口摂取困難となった際に望む医療は、自然な最期0例、末梢点滴1例、経腸栄養0例、高カロリー輸液0例、医師に任せる1例、その他6例という結果であった。
【考察】
 私は2016年10月、『認知症サミット in Mie』の演台に立った丹野智文氏に、「認知症の告知の際に医師に望むことは?」と質問した。丹野氏は、「病気の説明だけでなく、希望を与えてほしい。患者会などの居場所や窓口にもつないでほしい。」と語った(http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20161129143827510)。私は2016年10月以降、告知に際して冊子『認知症の早期発見を希望に繋げるために』を手渡している。多くの当事者が「空白の期間」(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/770032826499732)に直面する「早期診断・早期絶望」という課題解決に、この取り組みが少しでも寄与することを願ってる。
【倫理的配慮】
 発表にあたり、個人情報保護に配慮した。


P.S.
 私が、このパンフレット『認知症の早期発見を希望に繋げるために』作成に取り組んだ元々のきっかけは、2016.10.15に丹野さんに質問して感銘したからではなく、2016.10.5に樋口直美さんが発した「診断直後に手渡すペーパーもあるといいなと思っています。全国の病院で。」というひと言(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/647561702080179)に触発されてのことでしたね。
 樋口直美さんの願い.jpg
 「診断直後に手渡すペーパーもあるといいなと思っています。全国の病院で。
 希望を持てる医療情報やメッセージ、精神的・社会的支援を得られる場所の連絡先、読むべき本やサイトなどを書いておきます。その1枚の紙があるだけでも、『早期発見, 早期絶望』は、防げると思います。」

 で、その日のうちにVer.1を作成してしまい公開(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/647688322067517)したのは良いのですが、キタジーに「アカン、アカン。こんなんとちゃう!ちゃう! 患者本人やご家族が読んでわかるものが必要です」とさんざんな評価を受けてしまったことが懐かしいです。
 キタジーのコメント.JPG


 これからもバージョンアップを重ねてより良いものに仕上げていきますね。

認知症患者への告知および「人生の最終段階における医療」に関する意識調査・第二報 [認知症の告知]

認知症患者への告知および「人生の最終段階における医療」に関する意識調査・第二報
 
 榊原白鳳病院 もの忘れ外来  笠間 睦
 第35回プログラム.JPG
 第35回日本認知症学会学術集会.jpg

抄録
【目的】
 認知症の告知に積極的に取り組む医療機関は少ない。しかし、比較的早期の段階で告知し、終末期医療に対する意向を確認できれば、自己決定に基づく医療の実現に繋がる。第33回日本認知症学会において第一報(http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06-1)を報告した(対象は29名)。今回、再調査を実施し、終末期医療に対する意向に変化があるかどうかを調べた。

【方法】2016年4月、アルツハイマー病の再診患者を対象として、終末期医療に対する意向調査を実施した。

【結果】
 経口摂取が困難となった場合に望む医療は、自然な最期:1例、末梢点滴:1例、経鼻経管栄養:0例、胃瘻:1例、高カロリー輸液:0例、医師に任せる:1例、その他:4例という結果であった。全例とも2年前にどのような意向を表明したのか覚えていないものの、望んだ終末期医療の意向は、2年前と大きく変化することはなかった(2016年5月23日付朝日新聞)。
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/587799344723082

【考察】
 前回調査と同様、本人が経腸栄養を希望したケースは皆無であった。再調査の意向に大きな変化がなかったことより、認知機能の低下が進んでも、人間としてのコア(核)となる部分には変化が乏しいのではないかと推察された。なお2016年4月下旬以降は、新患患者を対象として、予後告知まで望むかどうかも含め調査中である。

【倫理的配慮】
 発表にあたり、個人情報保護に配慮した。

早期診断・告知後のパンフレット Ver.15 [「早期発見 → 告知」が早期絶望とならないように]

運転.JPG
早期診断・告知後のパンフレット Ver.15を公開しました。

 https://drive.google.com/file/d/0B_luVeDtj5gLYnhxTjE2T0hvZDg/view?usp=sharing


改訂部分
 以下を追加致しました。
 ②-2 進行停止型?―自験例

P.S.
 事例の詳細は↓
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/734499383386410

認知症を巡るほとんどは『人災』 レビー小体型認知症 樋口直美さん ルポ 希望の人びと ここまできた認知症の当事者発信 えにしの会 [レビー小体型認知症]

「医師は、精神科に体験入院して」 当事者が提案
 「認知症を巡るほとんどは『人災』」/本人著作が受賞

キャプチャ.JPG
 認知症の当事者の発言はいろいろな場面で注目されてきた。15年の日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞を2人の認知症の本人が受賞した。6、7章で書いた佐藤雅彦さんと、もう1人が樋口直美さんだ(62年生まれ)。
 30代から幻視を見た樋口さんは、13年、50歳でレビー小体型認知症と診断されるまで、41歳でうつ病と誤診されて重い薬物治療の副作用に約6年間苦しんだ、という。その体験と復活を『私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活』に綴った。
 樋口さんは医師から「レビー小体型認知症」と告げられ、「進行を遅らせるためにできることは?」と尋ねると「ないんですよ」と言われた。本には「急激に進行し余命8年」。一時は真剣に自殺も考えた。その後、信頼できる医師や同世代の仲間と出会い、適切な治療と努力、数々の出会いのたまもので、進行を食い止められている。だが嗅覚や時間の感覚をほぼ失い、自律神経障害などのつらさも抱えている(発言は樋口さんの公式サイトやディペックス・ジャパンのサイトなどでも見られる)。
 「認知症を巡る問題のほとんどは、人災」だと語る。病気そのものの症状ではなく「人災」。
 …(中略)…
樋口直美さん-えにしの会.jpg
 東京のプレスセンターで開かれた受賞記念のシンポジウムでは、自分でつくったスライドを映し出した。思わず見入った。

最大の問題は医療
・認知症権威による「認知症」の説明が偏見をつくってきた
医師が書く医療情報で、診断された本人と家族が絶望
誤診の多さ 知識のなさ 診断を変えない 減薬しない
診断後の精神的・社会的サポートのなさ
・薬の副作用による悪化(薬剤性せん妄)
・精神科病院への入院は、誰のために必要なのか?

 どれも厳しい。樋口さんの身も心もえぐられるような体験から生まれた言葉だ。医療への願いであり、私たちへの問いかけでもある。なかでも、「入院は、誰のために必要なのか?」の問いは、まったく同感だ。そして、「医療情報で、診断された本人と家族が絶望」は、情報を伝える身として胸に突き刺さる。
 【生井久美子:ルポ・希望の人びと. 朝日新聞出版, 東京, 2017, pp223-226】

私の感想
 このスライドに書かれた文章を読んで、「そうじゃない」と反論したいと考える医師も多いかも知れませんね。
 私なりにこの部分について思いを述べてみたいと思います。

認知症権威による「認知症」の説明が偏見をつくってきた

 病気に関して調べる際には、何度も言ってきましたようにメルクマニュアルがとっても有益です。
 http://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム
 ではそのメルクマニュアルには「アルツハイマー病の進行」についてどう記述されているのでしょうか。
 http://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/09-脳、脊髄、神経の病気/せん妄と認知症/認知症
 アルツハイマー病の予後.JPG
 =「アルツハイマー病の症状は、他の認知症の症状と同様です( 認知症 : 症状を参照)。具体的には、記憶の喪失、人格の変化、言語の使用や日常的な作業の障害、見当識障害、破壊的な行動などが挙げられます。症状は徐々に進行するため、多くの患者は、しばらくの間、発症前に楽しんでいたことの大半を変わらず楽しめます。
 …(中略)…
 最終的には、歩行や身の周りのことも一人ではできなくなります。失禁するようになったり、飲み込む、食べる、しゃべるなどの行為ができなくなったりします。こうした変化により、低栄養、肺炎および床ずれのリスクが高くなります。記憶は完全に失われます。最後には、(多くの場合、感染症により)昏睡と死に至ります。
 進行の予測は不可能です。診断後の平均的な生存期間は7年間ですが、アルツハイマー病があり、歩けなくなくなると、ほとんどの場合は6カ月以内に死に至ります。しかし、生存期間には大きな個人差があります。」

 「歩けなくなくなると、ほとんどの場合は6カ月以内に死に至ります」と記載してありますが、経腸栄養を実施すれば私が紹介しているアルツハイマー病の事例(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/587799344723082)のようにもうすぐ7年を迎えるという事例もありますからね。

医師が書く医療情報で、診断された本人と家族が絶望

 これは、主としてレビー小体型認知症の進行に関する指摘なんでしょうね。
 先程のメルクマニュアルには、レビー小体型認知症の予後についてどう記載されているのか見てみましょう。
 http://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/09-脳、脊髄、神経の病気/せん妄と認知症/認知症#v737838_ja
 レビー小体型認知症の予後.JPG
 =「症状が現れてからの平均的な生存期間は約6~12年間です。
 …(中略)…
 治療では、すべての認知症の場合と同様に、安全と支援を提供するための一般的な対策が講じられます(認知症 : 治療を参照)。レビー小体型認知症に対する具体的な治療法はありませんが、アルツハイマー病の治療薬(特にリバスチグミン)が有用な場合があります。パーキンソン病の治療薬は、パーキンソン病の症状を軽減しますが、錯乱、幻覚、妄想などを悪化させることがあります。抗精神病薬はできるだけ使用しません。」

 進行しない事例があることには触れられておりませんね。
 アリセプトのDLBに対する保険適用は日本以外ではほとんどない状況ですので、「アルツハイマー病の治療薬(特にリバスチグミン)が有用な場合があります。」という記載になっておりますね。

 樋口直美さんが伝えて欲しいと指摘する数字は、私が「『早期発見 → 告知が早期絶望とならないように!』 Ver.2(2017.2.10)」(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/718869288282753)で紹介している以下の数字でしょうね。

 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24212390
 278例のaMCIのうち認知症(AD&DLB)に進展したのは、63.0%(57.2%+5.8%)となり、37%は認知症には至らないということになる。
 49例のnon-aMCIのうち認知症(AD&DLB)に進展したのは、73.4%(6.1%+67.3%)となり、26.6%は認知症には至らないということになる。

誤診の多さ 知識のなさ 診断を変えない 減薬しない

 私自身も、レビー小体型認知症(DLB)なのにアルツハイマー病(AD)と誤診していた事例(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/719022474934101)をごく最近ご紹介しましたね。
 医師のプライドが、診断名を変えないことの主因なんでしょうね。
 樋口直美さんのレビー小体型認知症に関する知識、認知症専門医とほぼ同じレベルだと思っています。患者さんって、徹底して自分自身の病気のことを調べますのでそのレベルまで到達される方は居るんですよね。
 そのためには、確かな医学情報を流しているサイトなどからの知識の吸収が手っ取り早いと思います。私も少しでもそうしたことで寄与できればと考えております。

 減薬の問題は、アリセプトによるパーキンソニズムなどで何度かご紹介してきましたね。
 「DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア」
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/665994963570186
 =Hoehn &Yahr 重症度0~Ⅱ度におけるドネペジル3mgでのパーキンソン症状発現率:3/23=13.0%(プラセボ群では、0/43=0%)

診断後の精神的・社会的サポートのなさ

 徐々にサポートを拡げていくことが大切ですね。
 以下のサイト、素晴らしい内容が記載してありますのでご一読くださいね。
 「当事者・家族と医療・ケアを提供する側の双方がDLB当事者を支援するネットワークが大分で発足」
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/654368751399474

 私も「『早期発見 → 告知が早期絶望とならないように!』 Ver.3(2017.2.12)」を更にバージョンアップしていきたいと考えております。
 https://drive.google.com/file/d/0B-gBQ1xrZ5fhSXhrVERqSjBWUnM/view
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/719886698181012 

薬の副作用による悪化(薬剤性せん妄)

 レビー小体型認知症(DLB)の診断基準の示唆的特徴の一つとして抗精神病薬に対する薬剤過敏性があげられておりますね。何と、53.3%
 抗精神病薬以外にも、「抗コリン薬および抗コリン作用を有する薬剤に対してもたいへん過敏であり、それらの投与は避けるべき」(森 悦郎:レビー小体型認知症の臨床―レビー小体型認知症の薬物療法. 精神科 Vol.29 32-37 2016)と指摘されております。
 具体例を挙げれば、DLBの53.3%においてAP(Antipsychotics:抗精神病薬)に対する薬剤過敏(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/666955796807436)があるのでしたね。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15889951
RESULTS:
 Severe NSR(Severe neuroleptic sensitivity reaction) only occurred in patients with Lewy body disease: DLB (8 [53%]), PDD (14 [39%]), and PD (7 [27%]), but did not occur in Alzheimer's disease (p=0.006).
 =8/15:があるとは!!

 ただ皆さん、信じられないかも知れませんが、たかが風邪薬でもせん妄が起きることはあるんですよ。私もPL配合顆粒Ⓡ(総合感冒薬)でせん妄に至ったDLBの事例を複数経験しております。
 その理由は、PL配合顆粒には抗ヒスタミン薬が配合されているため、緑内障、前立腺肥大などに禁忌となっているのですが、成分の一つであるプロメタジンメチレンジサリチル酸塩は抗コリン作用も有しているからなんです。

精神科病院への入院は、誰のために必要なのか?

 2013年1月29日に東京都内で開催された「認知症国家戦略に関する国際政策シンポジウム」(主催:東京都医学総合研究所)においては、精神科病院への入院に関する報告もなされましたね。
 以下にその記事をご紹介します。
 「先日東京で開かれた認知症政策に関する国際会議でも、『向精神薬(メモ2参照)を減らす』(イギリス)、『精神科への転科・転院は1%と少ない』(フランス)、『認知症の人の入院はない』(オランダ)、『行動心理症状を持つ人の精神科による治療はほとんど外来での治療』(デンマーク)、『精神科病院への入院を防ぐ』(オーストラリア)という報告が相次いだ。」(2013年3月15日付朝日新聞・オピニオン─中村秀一の現場から考える社会保障)

 『精神科病院への入院を防ぐ』という取り組みは、福井県では実践されておりましたね。
 石川県立高松病院副院長の北村立医師が書かれた論文(一部改変)を以下にご紹介します。
 「在宅や介護老人施設などで対応困難なBPSDが発生した場合、可及的速やかに対応でき、かつ人権擁護の観点から法律的な裏づけがあるのは精神科病院しかないと思われる。したがってBPSDの救急対応も精神科病院の大きな役割として強調されるべきである。
 石川県立高松病院ではBPSDに対する救急・急性期治療の重要性を認識し、早くからそれを実践してきている。具体的には認知症医療においても365日24時間の入院体制を合言葉に、『必要なときに即入院できる』体制を作り上げてきた。
 さて、今後爆発的な増加が予想される認知症の人をできるかぎり地域でみていくためには、BPSDの24時間の対応体制の整備が必要なのは明らかであるが、わが国にはそのような報告は筆者らの知る限りない。
 当院のような365日24時間受け入れ可能な精神科専門医療機関が地域にあれば、多少重症のケースであっても、介護老人施設でぎりぎりまで対応できる可能性が示されている。施設が困ったときにただちに対応すれば信頼が得られ、状態が安定すれば短期間で元の施設に受け入れてもらうことが可能となり、専門病院と介護老人施設の連携がスムーズとなる。
 成人の精神科医療と同様、高齢者に認められる急性一過性の激しい精神症状は、適切に対応すれば容易に消退するものであり、これこそが精神科における認知症急性期医療の重要性を示すものである。また、筆者らの臨床経験からいえば、家族の心配や介護負担感を増やさないようにするには、初診時から365日24時間いつでも受け入れることをあらかじめ保証することが重要である。家族が困ったときにすぐ対応すれば、介護者は余裕をもって介護に当たることが可能であり、近年問題となっている介護者のメンタルヘルスを保つうえでもきわめて有益と考える。」(北村 立 他:石川県立高松病院における認知症高齢者の時間外入院について. 老年精神医学雑誌 Vol.23 1246-1251 2012)

 2013年6月15日に放送されましたNHK・Eテレ/チョイスでは、「もし認知症とわかったら」(http://www.nhk.or.jp/kenko/choice/archives/2013/06/0615.html)に関連するチョイスがいくつか示されました。
 私が一番印象に残ったのが、若狭町福祉課地域包括支援センターの髙島久美子さんらが取り組んでいる試みです。
 髙島さんは、若狭町に住む65歳以上の人を年1回訪ねており、戸別訪問により認知症の早期発見に努めております。さらに、家族だけではなくご近所の方に対しても認知症ケアについてアドバイスし、認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)を未然に防止することに精力的に取り組まれておりました。
 若狭町では、これらの取り組みによって、認知症患者の入院数(平成24年人口比)が福井県の周辺自治体の約5分の1であったという成果をあげているそうです(嶺南認知症疾患医療センター調べ)。
 町ぐるみで認知症対策に取り組むことにより、BPSDを未然に防止し精神科病院への入院を減らした具体的な事例と言えます。

P.S.
 上野秀樹医師の記事もご参考に。
 「精神科病院を考える・下─根強い 入院中心の文化」
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/718834371619578

賢い医者のかかり方①─診療明細書 [医療情報公開]

賢い医者のかかり方① ─ 「一物一価」でない理由知ろう

 医療機関で払う医療費に「あれっ?」と思ったことはありませんか。支払いの根拠などは、患者にはわかりにくいものです。立ち止まって、整理して考えてみることが、賢い患者への一歩になるかもしれません。
 
金太郎(かねたろう)
 隣のおじさんが高血圧で倒れて病院に運ばれたんだけど、いい薬のおかげで退院できたって。いまの通院も、入院していた病院じゃなくて、近所の診療所でよくなったんだ。
得子(とくこ)
 よかったわね。

 それがいいことばかりじゃないらしいんだ。

 どうして?

 入院した病院に通院していた頃は、1回の診察で払うのは500円でおつりが来た。なのに、近所の診療所だと、2480円も請求されるんだって。診療内容は同じなのに。

 いいところに気づいたわね。医療費って「一物一価」と思われているけど、医療機関の規模などで異なる場合が多いの。
 高血圧のような生活習慣病は、食事や運動といった生活全般を見直す必要があるでしょ。指導にかかる費用を、月1回の診療で「生活習慣病管理料」として検査や其の処方とまとめて定額請求する方式があるの。お隣さんはこれね。診療所だけが使えて、大病院にはこうした上乗せはないの。

 そうなんだ。

 多くの診療所は「高額だと患者が離れる」と、慢性疾患に適用される「特定疾患療養管理料」の上乗せにとどめていると聞くわ。この上乗せはベッド数200床未満の中小病院も使える。検査などは別料金だけれど、こっちの「管理料」なら安いからよ。

 結局、大病院を受診した方が得ってこと?

 そう言うつもりはないわ。「医療の機能分化」ってわかる? 大病院は救急や重症者に専念し、比較的安定した患者は、診療所などが受け持つという考え方。同じ診療行為でも値段に差がつけられているのは、それを促すためよ。
 紹介状なしで大学病院などの特定機能病院や500床以上の地域医療支援病院を受診すると、初診料のほかに最低5千円払うようになったのも同じ理由から。

 聞いた覚えがある。

 私はこう割り切ることにしているの。近所に普段から相談できる、ちゃんとしたかかりつけ医を持てば、いざというとき、必要に応じた大病院につないでもらえる。割高に見える医療費は、そのための「保険」のようなものだと。

 なるほどね。

 取材協力・山口育子さん(ささえあい医療人権センターCOML理事長)
 (構成・鈴木淑子)=全5回
 【2017年2月4日付朝日新聞・知っ得なっ得】

私の感想
 (大半の病院で)診療明細書の無料発行が義務付けられたのは2010年4月です。
 私はこの制度にも猛反発しましたね。
 なぜだか分かりますか?
 明細書には「病名」が書いてあるんですよ。
 しかし、認知症の告知は進んでなかった! なので、「告知されていない本人が読んだらビックリするからもっとじっくり議論して!」って反対してたんです。
 2010年3月10日に中日新聞(http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20100310142018071)が取りあげてくれました際に私は以下のような私見を述べています。
 診療明細書20100310.jpg
 「笠間さんは『明細書発行の義務化を、開かれた医療に結び付けたい』と話している。」
 「診療明細書は受診した際、領収書よりも細かく医療費の内訳が記される。患者が請求ミスを知る端緒にもなりうるが、専門的で一般の患者が判読するのは難しい」から、それを読み解くための解説書を作成して外来窓口に置いたんですね。
 診療明細書解説パンフレットp1.jpg
 診療明細書解説パンフレットp2.jpg  

P.S.
 私が榊原白鳳病院に就職したのは2010.1.16日です(7年が過ぎましたね)。赴任して最初に取り組んだ課題は認知症ではなく、私のもう一つの生涯テーマである「医療情報公開」絡みだったんですよー。

VR認知症―『おはよう日本(NHK総合)』(2017.2.1放送), NHK WORLD NewsRoomTOKYO(February 14, 2017) [認知症]

『おはよう日本(NHK総合)』(2017.2.1)にて、VR認知症が報道!!

 AM7時からの『おはよう日本(NHK総合)』の放送です。
 https://youtu.be/DmlmTPPOK2o 

 VR体験会nagoya.JPG 
 今回の報道がレビー小体型認知症(レビー小体病)への理解が深まる啓発のきっかけになれば良いなと強く願っております!!

 おはよう日本で放送した特集「バーチャルリアリティーで認知症の症状を体験」は、News UpというWeb特集にも掲載されております。
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170202/k10010861871000.html

 今回の全国放送は、2017.1.18に放送されました『NHK-東海 NEWS・ほっとイブニング』(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/videos/vb.100004790640447/706552282847787/?type=2&theater)に後日取材した映像を加えて再構成されたものです。
 『NHK-東海 NEWS・ほっとイブニング』のYuutube公開も2月1日より開始しました。
 https://youtu.be/DxU9-uAcQ8Q

 東海初の『VR認知症講演会』(in 名古屋「グループホーム正木のいえ」, 2017.1.9)の際に私が撮影した映像もどうぞご覧下さい。
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/videos/vb.100004790640447/706559129513769/?type=2&theater
 FB「友達限定公開」としておりましたが、2017.2.1に全国放送として報道されましたので、「公開」設定に変更しました。
 Yuutubeにても公開致しました。
 https://youtu.be/GCHz5nuHu9E

 「VR認知症」レビー小体病 幻視版 のための配布資料
 https://note.mu/hiiguchinaomi/n/n4461c1a1d047
 【藤本健一:DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア. CLINICIAN No.648 513-518 2016】.JPG
出典:
 【藤本健一:DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア. CLINICIAN No.648 513-518 2016】
 DLBとDLBD.jpg
 樋口直美さんが「VR認知症・レビー小体病 幻視版 のための配布資料」について解説され、ご自身の「幻視」についても語りました。
 直美さんが解説.JPG 

 来月公開の映画「話す犬を、放す」の熊谷まどか監督もスピーチされています。
 熊谷まどかさん.JPG
 映画の予告編はこちら↓
 http://hanasuinu.com/

 熊谷まどか監督と樋口直美さんの対談記事はこちら↓
 https://info.ninchisho.net/archives/15695

ウェブ版・VR認知症(NHK-東海 NEWS WEB・2017.1.18放送)─認知症をVRで体験
 認知症について理解を深めてもらおうと、いま、VR=バーチャルリアリティの技術を使って、認知症の人の世界を疑似体験する取り組みが始まっています。
 名古屋放送局の松岡康子記者が取材しました。
 ウェブサイトは↓
 http://www.nhk.or.jp/nagoya/websp/20170118_virtualreality/

 私は、『NHK-東海 NEWS・ほっとイブニング(2017.1.18)』(https://youtu.be/DxU9-uAcQ8Q)におきまして、「認知症のタイプによっては『幻視』の症状が出ることを知らない人が多いことから、バーチャルリアリティによる体験は、症状への理解や正しい診断につながると期待しています。」とコメントしておりますが、その詳細は以下をご参照下さい。
1)幻視関係のデータを整理しました。
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/710356272467388
2)レビー小体型認知症の最大の問題は、医師による誤診が多いということです。【医学博士・横浜市立大学医学部名誉教授 小阪憲司氏】
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/710432309126451

※NHK WORLD NewsRoomTOKYO
 「VR認知症」がNHK WORLD NewsRoomTOKYO(Mon.-Fri. 20:00-20:45 JST)の国際映像として報道されました(February 14, 2017)。
 http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/newsroomtokyo/aired/20170214.html
 http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/newsroomtokyo/
You Tube
 https://youtu.be/K4RdEa3NR9M

P.S.
 当日の懇親会の様子なども再度アップ致します。
 懇親会.JPG
 丸山社長、えっちゃん、いろいろご苦労様でした。
 丸山社長.JPG
 懇親会-丹野さんと恵津子さん.JPG  
 ケータリングのお料理美味しかったです。
 一升瓶サイズの赤ワイン、初めて見ました。私一人で半分以上飲んでしまいました。
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701730946663254
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/706844582818557
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701731386663210
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701715129998169
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701717183331297
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701700576666291
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701736876662661
 最後はオレンジで締めます!
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/705537732949242

P.S. 私がインタビューの中で伝えたかったこと
 バーチャルリアリティ(VR)のレビー小体型認知症版を通して、認知症に対する世間の誤解や偏見を解ければという思いがあって下河原さんはこの作品を樋口直美さんらとともに作成されたと聞いております。
 ついつい話題性が先行しがちではありますが、認知症専門医の立場からしますと、もう少し違った面で期待を寄せております。
 それが何かと言いますと、DLB(レビー小体型認知症)においては、レム睡眠行動異常症(RBD)、うつ状態、幻覚妄想状態は、記憶障害よりしばしば先行して出現します。初老期に幻覚妄想状態を初発したおよそ1/4~1/3(=40歳以上で幻覚妄想状態を初発した例の検討ではその26.1%が、65歳以上での初発例では36.4%がレビー小体病を有していた)が後にレビー小体病と診断されます(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/698895886946760)。
 「幻覚・妄想」という言葉を聞きますと、統合失調症を思い浮かべる方が多く、患者さんは偏見を受けることをおそれて幻視が見えることを隠す傾向にあります。
 実際に医療機関を受診しても、レビー小体型認知症に精通していない医師ですと、「統合失調症」とか「うつ病」となどと誤診されてしまい、向精神薬が投与されることになります。
 しかしですね、実はあまり知られていないのですが、DLBの約半数(53.3%:8/15)においてAP(Antipsychotics:抗精神病薬)に対する薬剤過敏があり、薬の副作用で病状が悪化してしまうケースが多々あるのです
 こうした弊害が起こり得ることを、バーチャルリアリティ(VR)のレビー小体型認知症版を通して啓発するきっかけになってくれればと願っております。

◎関連サイト
DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア
 http://www.eisai.jp/medical/clinician/vol63/no648/pdf/sp10_648.pdf
 DLBは幅が広い。ADに近いcommon formではパーキンソニズムを認めず、ドネペジルを10㎎ まで増量しても問題はない。その一方pure form やPDDに近い症例では、用量を増やすと振戦や動作緩慢が出現する例がある。ドネペジルの2件の二重盲検比較試験と2件の非盲検延長試験の解析で、錐体外路症状の悪化は認められなかった。この報告では解析対象281例中PD治療薬併用は57例(20.3%)で、common form が多かった。pure form やPDDでは別の結果となる可能性がある。表③に2件の二重盲検比較試験のまとめを示す。PD治療薬併用群では非併用群と比べてパーキンソン症状の有害事象発現が多く、開始時のHoehn &Yahr 重症度がⅢ度の症例は0~Ⅱ度の症例と比べて、5㎎ と10㎎ でパーキンソン症状の有害事象発現が多かった。DLBは幅が広いこと、薬の効果も副作用も出やすいことを考慮して、症例毎に適切な用量を選択する必要がある。
 (自治医大ステーション・ブレインクリニック)
 【藤本健一:DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア. CLINICIAN No.648 513-518 2016】


 下河原さん、後片付けを終えてから懇親会に合流されました。
 準備、講演、取材、後片付けとお疲れ様でした。
 懇親会-下河原さん.JPG

臨床医にとって認知症治療で大切なことは何か(3)―抗認知症薬を処方する際の3つの悩み [認知症]

第85回 臨床医にとって認知症治療で大切なことは何か(3)―抗認知症薬を処方する際の3つの悩み【八千代病院神経内科・川畑信也部長】
 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kawabata/201701/549654.html

 認知症の治療を行う際、ガイドラインは必ずしも実臨床では役に立たないこと、臨床試験と現場の治療では異なることが多いことを述べてきました。今回は、実臨床では抗認知症薬の薬効評価が難しいこと、個々の事例によって抗認知症薬の効果は異なること、薬剤の効能・効果に記載された用量に必ずしもこだわる必要はないかもしれないことの3点について考えてみたいと思います。

【1】抗認知症薬の薬効を実臨床で評価できるのか
 いずれの抗認知症薬も認知症症状の進行抑制効果を期待して使用されているのだと思いますが、先生方が実際に処方されて「この患者さんは認知症が改善したな」と感じる事例はどれほどあるでしょうか。
 多くの場合、抗認知症薬を処方しても臨床像が良い方向に変化した事例を経験することは少ないのではありませんか。逆に多くの事例では抗認知症薬を服薬していても認知症症状は進行・悪化していく場合が多いと思います。だからこそ、「抗認知症薬は副作用ばかりで役に立たない」「害ばかりで処方する価値はない」と極論を述べる医師が出てくるのだろうと思います。
 抗認知症薬を評価する方法は、服薬前後での臨床像を観察するか、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)に代表される神経心理検査を施行し得点の推移をみるかの2つです。アルツハイマー型認知症は、診断が正しければ必ず進行・悪化していく性質を持つ疾患であるという視点で見ると、抗認知症薬を服薬していてもある程度の期間を経ると認知症症状は進行・悪化していきます。ですから抗認知症薬の薬効を評価することは、実際には困難な場合が多いのです。
 一方、神経心理検査を使用した場合はどうでしょうか。図1は、ドネペジルを服薬しているアルツハイマー型認知症146人でのADAS-J cog.下位項目について1年後の変化を示したものです。ドネペジル服薬開始前に比して有意に改善していた下位項目は、呼称と構成、単語再認の3つです。しかし、最も改善している単語再認でも変化幅は0.5点にも届きません。実臨床で個々の患者さんにADAS-J cog.を施行した場合、評価は1、2点などであり、小数点以下の点数は出てきません。したがって実臨床では0.5点の改善効果を実感できないことになります。抗認知症薬の肩を持つ立場で述べると、現在の抗認知症薬はいずれも根治的な薬剤ではないことから、これくらいの効力しか発揮できないともいえます。さらに認知機能というある意味であやふやな領域を客観的に評価するためには、数字で結果を出せる神経心理検査あるいは生活機能や介護者負担を評価するしか方法がないのです。
 図1.JPG

 私は、常に述べていますがコリンエステラーゼ阻害薬は患者さんの行動や感情、言動を活発化させる働き、メマンチンはそれらを安定化させるあるいはやや抑制する働きをもつ薬剤と位置づけています。現象面では記憶や見当識に目立った改善を期待できないかもしれませんが、アルツハイマー型認知症に特徴的な自発性の低下や意欲の減退から日常生活で何もしなくなった患者さんがコリンエステラーゼ阻害薬の服薬で元気が出てきた、外出することが増えてきたなど、行動や感情などの変化がみられるだけでも抗認知症薬の役割はあると考えています。

【2】個々の患者さんで抗認知症薬の効果は異なる
 実臨床で目立った薬効を実感しにくい抗認知症薬ですが、患者さんによっては認知症症状が何年経てもあまり進行・悪化していないなと感じる場合があります。一方、規則正しく服薬していても1年前後で認知症症状がかなり進行・悪化してくる患者さんも見られます。認知症診療に長年携わっていますと、個々の患者さんで抗認知症薬の薬効は大きく異なるのではないかとの印象が浮かんできます。
 図2は、ドネペジル5mgあるいは10mgを服薬している患者さん191人について、1年後にMMSEがどのように変化していたかを調べた結果です。1年後に10点以上改善していた患者さんが1人います。逆に10点以上悪化していた患者さん1人います。2点悪化していた患者さんの数が最も多いのですが、20点の変化幅に幅広く患者さんの変化が分布していることがわかります。
 図2.JPG

 図3は、2年から5年後まで処方を継続できた患者さんの得点の変化を見たものです。年数を経るに従って青で示す改善を示す患者さんは減少し、代わって赤で示す悪化を示す患者さんの割合が増えていくことが観察されます。5年後を見ると、多くの患者さんは悪化の領域に分布していますが、29人中6人は開始時と比して不変あるいは1点、2点の改善を維持しています。患者さんによっては、神経心理検査を尺度にするとドネペジル服薬5年後でも改善を示す患者さんもいるのです。抗認知症薬の薬効は、患者さんによって大きく異なる可能性が高いように私は感じています(神経心理検査からの視点ですが)。
 図3.JPG

【3】必ずしも決められた維持量にこだわることはない
 抗認知症薬では、添付文書では維持量がそれぞれ設定されています。ドネペジルは、3mgから開始し5mgが維持量であり、高度に進展した場合には10mgに増量するという選択肢があります。リバスチグミンは18mg、ガランタミンは16mgあるいは24mgとなっています。私は、この維持量に必ずしもこだわる必要はないと考えています。
 図4は、リバスチグミン18mg維持群と13.5mg維持群での臨床効果を検討した結果を示したものです。貼付開始前に比してその後の時点でMMSEが1点以上増加していた場合を改善群、1点以上低下していたときには悪化群、変化が見られないときには不変群と分類し、3年後までの薬効を比較したものです。貼付開始1年後に限ると、18mg維持群と13.5 mg維持群で改善あるいは不変群の割合に大きな違いはないようです。2年後には13.5mg維持群でやや効果が減弱し、3年後には明らかに18mgに比して改善群は減少してきています。
 しかしながら、13.5mg維持群でも十分臨床効果は期待できるとも言えると思います。13.5mgよりも18mgに増量するほうが皮膚症状の発現する危険性が高いことを考えますと、13.5mgの維持でも十分臨床的な意義はあるように感じています。
 図4.JPG

 ドネペジルでも5mgに増量すると易怒性や不穏などの困った状態が出現あるいは増悪する事例を経験します。ドネペジルの副作用と考えるよりもコリンエステラーゼ阻害活性が過剰に発現しているリスポンダーと想定し、3mgへの減量を図ることで適度の活発化を期待できるのではないかと思います。
 実臨床では患者さんの病状に合わせて、決められた維持量にこだわることなく、適量をその患者さんの維持量としていくべきではないかと私は考えています。
 最後に誤解のないように述べておきますが、昨今の抗認知症薬は少量の方がよい、少量にすべきであると提唱している一部の医師とは全く意見が異なることを強調したいと思います。彼らの背景には抗認知症薬は害であるとの前提があるように思われます。したがって、なるべく抗認知症薬は使用しないほうがよいし、仮に処方する場合にはごく少量でよいとの意図があるようです。私は、抗認知症薬は可能ならばいわゆる維持量まで増加したほうがよいと考えていますが、患者さんの個々の状況で減量という選択肢もあるとの立場で診療を行っています。

 次回からしばらくは、今年の3月12日から施行される高齢者運転免許更新に関する改正道路交通法と臨床の現場あるいは臨床医の関わりについて再度考えていきたいと思います。
 川畑先生.JPG
 【日経メディカル・連載『プライマリケア医のための認知症診療講座』 2017/1/6】
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